
(C)shiqchan
クソリプから始まった危険なカンケイ……
ドキドキのヒトシ・ミーツ・しQ対談、中篇です!
<前編はこちら:二村ヒトシさん、巨根好きな女は馬鹿だと思いますか?>
この世はおかしい、って思いながら痴漢をしてる

産み直してやるキュウ~!
――二村さんは男性たちへ向けた恋愛本『すべてはモテるためである』(イースト・プレス)もロングセラーで。男性が恋愛で病んでるのを目の当たりにしたことって、しQちゃんはある?
しQちゃん 実はないキュウ。
――しQちゃんの元旦那さんは別れ際、病んでませんでした?
二村 あ、離婚経験がおありなんですね。強烈な女性と別れると、つきあってる間は男性が支配してたのに、別れた途端に病む男って、よくいますよね。
しQちゃん 病んでたけど、でも、ポイントが恋愛じゃなかったキュウ。
二村 しQちゃん自身は過去、どういう男に苦しめられてきたんですか?
しQちゃん いろいろ。最近は、一対一の関係の男に苦しめられるより、道ですれ違う男とか。そういう、電車で会う男とか。そういう男に傷つけられるキュウ。会社帰りにナンパされて、断ると、死ねブス、って罵詈雑言を浴びせられる。殴られかねないし本当に危険。危険がいっぱい。
二村 それは、つらかったね。そういうときに、しQちゃんの「男が憎いキュウ」ツイートが発動するの?
しQちゃん そうですねキュウ。それで、ちょっと前にあたしも男に痴漢をしてやろうと思って。
二村 えっ!? 詳しく教えてほしいですね。
――それはまたコラムで書いてもらうことになっているので、ここでは……。
しQちゃん お楽しみにキュウ。ヒトシはあたしと対面して、あたしが男からすれ違いざまにナンパされた挙げ句「死ね」と罵られるのも納得キュウ?
二村 うーん……。僕はそれが、しQちゃんの中の人が容姿がいいから起こってしまうことだとは思わなくて、何らかの暴力性を誘発するものが、それはあなたも悪いんだから改めろという意味ではなくて、でも何かの無意識の反応が起きているんだろうと思うんですよ。それをやる愚かな男と、あなたの間に。
しQちゃん ただ歩いてるだけで……?
二村 そう……なんだよね……。
しQちゃん もう、あたしの存在が罪としか。
二村 いや、そういうことではない。まぁ、簡単に言うと一種のキチガイでしょ、ナンパを袖にされて暴言で返す男ってのはさ。しQちゃんはキチガイに対してのリトマス試験紙になってるってことか……。
しQちゃん うーん、キチガイかもしれないけど、共通項は「ジジイ」ってところキュウ。本当、なんて言うんだろう、クソジジイ。「許されてきた男」ですよね、キュウ。何をやっても、女からは咎められない。ママとか妻に許されてきた男がヤバイ。あと、痴漢やってみて思ったのは、「男は女に痴漢されても許すんだ」、っていうこと(笑)。
二村 男性に対してしたの? 女性に対してしたの?
しQちゃん 男性に対して。
二村 女から男に対しての痴漢はどんどんすりゃいい、と俺は一瞬、思ったんですけど。
――ダメですよ。
二村 ダメですよね。
しQちゃん あたしも一瞬そう思ったんですけど、ダメですねキュウ。
二村 捕まった?
しQちゃん 捕まらなかった。
二村 でも、後悔したんだ。
しQちゃん 酔っ払ったときに、しちゃった。相手も「痴漢です」って言って私を逮捕してくれればいいいのに。しないから。なんか、この世はおかしい、って思いながら痴漢をしてるキュウ。
――この世のおかしさを確かめるために痴漢をしたの?
しQちゃん そうかもしれない。
二村 痴漢すると、向こうはノリノリなんですか?
しQちゃん ノリノリが多い。
二村 勃起してる?
しQちゃん 勃起する。ずるいキュウ。
二村 まったくだね。だから、それがまさに男女の非対称性でしょ。社会における「男女の性」のイメージがそういう形式だし、じっさい女性についてるのがチンコじゃなくてマンコとおっぱいだから、つまり受動的な構造だってことになってるから、ある種の男は女から痴漢されると「失礼な事されてる!(怒)」じゃなくて「すけべな女から、求められてる!(喜)」「俺、モテてる!(勃)」って思えちゃう。だから俺は、マゾじゃなくてもゲイじゃなくても男はみんな女からケツを掘られて、快感の前に恐怖を一度みんな知るべきだと思うんだ。
男の「引き裂かれ」
しQちゃん それで言えば、あたしは自分が女として生まれてきたことへの憎しみもあるキュウ。女の体に生まれてきてしまった、でも男はちょっとうらやましい。やっぱり、自分が女に生まれたことに対して100%納得いってないキュウ。
二村 何が面倒臭いんですか? 女であることの。
しQちゃん 肉体もだけど、一番は女としての役割。女っぽさとか、女だからこうあるべきとか、女はどうせこう思ってるんだろう、みたいな。決め付けられてるキュウ。たとえば、「お前も女だから、本当は結婚して子供産みたいって思ってるんだろう」とか。そういうふうに、他人が「女はこうだろう」と決め付けていることが苦しい。もっと人として扱って欲しいっていうのが、ちっちゃい頃からあって。
二村 今まで「女に生まれて得した」こと、ない?
しQちゃん うーん。別に得したいわけじゃないキュウ。
二村 「女であろう」として生きていくと損をしたり被害に遭うことも多いけど、得をすることもたまにはあって、でも、それを受け入れたくないというのがしQちゃんの生きかたなのかな、と思ったんだけど。そうでもない?
しQちゃん そうでもないキュウ。でも、自分が女であることに対しての嫌悪感は、年々薄まってきてるキュウ。ちっちゃい頃の方がいっぱいあった。でも今、幼児相手のアルバイトをたまにしているキュウけど、子供たちに対して自分が時々「女の子でしょ」とか「男の子なんだから」とか、うっかり言っちゃいそうになるときがあって。その言葉はラクだから。
二村 女の子にはピンク色を自動的に与えてるほうが、与える側はラクだよね。判断そこで停止するもんね。
しQちゃん 2種類しかないからラクですね。個体差見なくていいから。でもそれじゃダメで。
二村 今の日本の世の中で、普通に女性として生きていて、まったく男性に対して憎しみを抱かない、被害者意識がゼロなのは、むしろ珍しい。珍しいからこそ、僕はそういう「男を憎んでない女性」が好きなんですが。そして僕自身も、ホモソーシャルに馴染めなくて男社会への憎しみを持っています。僕は、男のことは、ぜんぜん好きじゃない。
――どういう意味での「男」ですか? チンコがついてるのは、っていう意味?
二村 ていうか、イバッている男。エラソーな男。
しQちゃん それはなにゆえキュウ?
二村 かっこわるいですよ。個々で付き合うと、いい男、好きな男はいっぱいいますけど。トータルで見た時に、男同士で、なんだろう、男同士だぜ、っつって仲良くつるんでる、腐女子の人が好きな「ホモソーシャルの絆」みたいなのが嫌い。男だけで女の悪口とか言ってるのも、気持ち悪い。
――AVの現場って、そういう男同士の連帯はどうですか?
二村 ありますね。ただ、僕達の仕事は、ご存知かと思うんですけど、女優さんあっての商売なので。撮影中だけは、ものすごく女優さんを大事にする。そうしてると、男から女への憎しみも、女から男への憎しみも、わりと見ないで済む。女性への憎しみを動機にして撮影してる監督も中にはいるんだろうと思いますけど。女優さんにではなく、脱がない女性スタッフに対してセクハラ、パワハラをする奴もいる。あと、あんまり女性そのものに関心のない、AVを本当に仕事としてしか考えていない監督もいますよ。
しQちゃん 性の対象としても男性はあまり好きじゃないんですか?
二村 女装してて、欲望が僕のほうに向いている可愛い男子は好きです。前立腺への刺激でメス化して、女のようにイキまくってるのを見るのと興奮するし楽しい。あと、性の対象としてじゃないけど森林原人くんのことは好きですよ。これ、しQちゃんが原人ファンだから言うんじゃなくて、こちらの撮影の意図、作りたい映像を理解してくれて、僕の分身をやってくれる賢いAV男優さんたちや男性スタッフさんたちには、すごく感謝しています。ただ、AV男優ホモソーシャルにも俺、入れないんだよね。
――なんで?
二村 仲間になれない意識がある。心の底で、ひがんでいる。
しQちゃん 男とつるむのがあんまり出来ない、と。ヒトシは男子校出身キュウ?
二村 そうですね。僕、男性が怖いんですよ。
しQちゃん なんで? 傷つけられるから?
二村 なんでですかね?
しQちゃん なんか、女性っぽいですよね、ヒトシ。オタサーの姫っぽいキュウ。
二村 そうなのかな? よくわからない。
――それは、女ばっかりのオタサーで、男であるヒトシが姫だよ、っていうことですか?
しQちゃん そう。ヒトシのまわりには、ヒトシを支持して優しくしてくれる女性がいっぱいいるイメージ。
二村 そうですね。女性の集団の中に男は僕一人っていう状況が大好きです。僕ね、女性に囲まれて育ったんですよ。家族が女性ばかりだったんです。男が俺以外いなかった。
――そのことは著書でもたびたび書かれていますね。一人っ子で、父親はいなくて、お母様が六本木の開業医やりながら二村さんを育てたと。
二村 母親は病院の仕事で忙しいから、家に看護婦さんや女中さんがたくさんいて。
しQちゃん はー、納得キュウ。
――それが二村さんの「心の穴」ですか?
二村 以前は単純に「俺は幸せな王子様だった」って思ってたんですよ。そしたら『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』(幻冬舎)で湯山玲子さんと話しているうちに、母親はサバサバした女だと思い込んでいたけれど実は違ったんじゃないか、って思い至ったんです。母親の医院では、彼女は男性性を大いに発揮して、それはシンプルなリーダーシップじゃなくて、もうちょっとドロッとしていて、看護師さんも女中さんもコミュニティの最大権力者である僕の母に愛されようとして、しのぎを削っていた。女同士の愛憎がそこにあった。一人の男を囲む女たちの愛憎よりも、一人の男性的な女を囲む女たちの愛憎の方が、セックスがないぶん、すごかったんじゃないか……。
しQちゃん すごそう。なんで母親が実はそうやってまわりの女たちを支配していたことに気付いたのキュウ?
二村 母親、今ボケてきていて、家を売って高級養老院にいるんですけど。ボケてきた母を見て「あ、この人、感情がダダ漏れになると、俺が思ってた母親と違うんだな」とわかってきて。非常に理性的で、強い、怪物みたいな女性で、俺を抑圧してくる人だと思いこんでいたんですけど、一人のボケ老人になった今「あ、この人、そのへん意外と、だらしなかったんだな。その“だらしなさ”を使って、女から愛されるのが上手かった人なんだな、心のヤリチンだったんだな」っていう。なんだ、俺と同じではないか、俺はそこに似たんだな、って。
しQちゃん ヒトシ、愛されるの巧そうキュウ。英才教育受けたキュウね。
二村 しかもその英才教育を、父親からじゃなく、女なのにヤリチン(notヤリマン)だった母親から受けてしまったという。
自分の母親以外に愛人がいっぱいいる父親の影響下で育つと、僕みたいにはならないですよね。そういう男の子は、お母さんの悲しみが罪悪感として残って、女性に対して真摯な男になるか、あるいはお父さんに女の数で負けないように男らしいヤリチンを目指すか。つまり世の中にはマザコンのヤリチンと、ファザコンのヤリチンがいて、動機が違うような気がするんですよ。わかんないけど、父親がエラそうだったせいで、それに負けまいとしてヤリチンになっちゃった男って、じつはセックスそのものは、それほど好きじゃないんじゃないか。だって男らしいセックスって疲れるじゃないですか。そういう人が覚せい剤にハマったりするんじゃないかと僕は睨んでるんですけど。
しQちゃん 政治家Mの息子とか? 覚せい剤といえば清原、高知も今年逮捕されたキュウね。
二村 まあ、よく知りませんけど。清原さんは、男らしさを自分に求めすぎてしまった男なんですかね。
しQちゃん 残念キュウ~。
二村 スポーツマンって、たいへんだよね。老け込む前に、かならず選手としてのピークは終わっちゃうわけだから。その淋しさからは、きっと逃れるのが難しいですよね。女性も「私は女だ、女でしかない」って思想で固まって生きていると、やっぱり老化は淋しいでしょうけど、それにしても男の苦しみって語られなさすぎだよね。
男として生きる、あるいは女として生きるのって、かわいそうな話ですよ。そこは、なるべく柔らかく生きていきたいよね。長渕剛もマリファナで捕まったりはしたけど、音楽の人って、マッチョに見えても柔らかいんじゃないかな。いや、音楽のこと全然わかんないんですけど、そういう男性ミュージシャンで、パッと見ると男らしそうな人、外見がチンコっぽい人でも、心が両性具有で男性性と女性性いったり来たりしてないと、歌を歌うのって難しいんじゃないのかな? 清原さんみたいに、スポーツマンとしてスターになっちゃった男らしすぎる人って、自分の男らしさから逃げる方法がないからキツそう。プライベートでマゾになればいいのか。
しQちゃん マゾか女装。見たいキュウ、清原の女装。
二村 見たいね。清原も、だから女装を趣味にすればよかったんだよね。女装じゃなくとも、せめてアナルでドライ・オーガズムを経験して、夜な夜な悶え狂う習慣があれば……。ていうか清原の女装は、みんなが萌えるよね?
しQちゃん 萌えるキュウ〜。