
(C)shiqchan
クソリプから始まった危険なカンケイ……
ドキドキのヒトシ・ミーツ・しQ対談、中篇です!
<前編はこちら:二村ヒトシさん、巨根好きな女は馬鹿だと思いますか?>
この世はおかしい、って思いながら痴漢をしてる

産み直してやるキュウ~!
――二村さんは男性たちへ向けた恋愛本『すべてはモテるためである』(イースト・プレス)もロングセラーで。男性が恋愛で病んでるのを目の当たりにしたことって、しQちゃんはある?
しQちゃん 実はないキュウ。
――しQちゃんの元旦那さんは別れ際、病んでませんでした?
二村 あ、離婚経験がおありなんですね。強烈な女性と別れると、つきあってる間は男性が支配してたのに、別れた途端に病む男って、よくいますよね。
しQちゃん 病んでたけど、でも、ポイントが恋愛じゃなかったキュウ。
二村 しQちゃん自身は過去、どういう男に苦しめられてきたんですか?
しQちゃん いろいろ。最近は、一対一の関係の男に苦しめられるより、道ですれ違う男とか。そういう、電車で会う男とか。そういう男に傷つけられるキュウ。会社帰りにナンパされて、断ると、死ねブス、って罵詈雑言を浴びせられる。殴られかねないし本当に危険。危険がいっぱい。
二村 それは、つらかったね。そういうときに、しQちゃんの「男が憎いキュウ」ツイートが発動するの?
しQちゃん そうですねキュウ。それで、ちょっと前にあたしも男に痴漢をしてやろうと思って。
二村 えっ!? 詳しく教えてほしいですね。
――それはまたコラムで書いてもらうことになっているので、ここでは……。
しQちゃん お楽しみにキュウ。ヒトシはあたしと対面して、あたしが男からすれ違いざまにナンパされた挙げ句「死ね」と罵られるのも納得キュウ?
二村 うーん……。僕はそれが、しQちゃんの中の人が容姿がいいから起こってしまうことだとは思わなくて、何らかの暴力性を誘発するものが、それはあなたも悪いんだから改めろという意味ではなくて、でも何かの無意識の反応が起きているんだろうと思うんですよ。それをやる愚かな男と、あなたの間に。
しQちゃん ただ歩いてるだけで……?
二村 そう……なんだよね……。
しQちゃん もう、あたしの存在が罪としか。
二村 いや、そういうことではない。まぁ、簡単に言うと一種のキチガイでしょ、ナンパを袖にされて暴言で返す男ってのはさ。しQちゃんはキチガイに対してのリトマス試験紙になってるってことか……。
しQちゃん うーん、キチガイかもしれないけど、共通項は「ジジイ」ってところキュウ。本当、なんて言うんだろう、クソジジイ。「許されてきた男」ですよね、キュウ。何をやっても、女からは咎められない。ママとか妻に許されてきた男がヤバイ。あと、痴漢やってみて思ったのは、「男は女に痴漢されても許すんだ」、っていうこと(笑)。
二村 男性に対してしたの? 女性に対してしたの?
しQちゃん 男性に対して。
二村 女から男に対しての痴漢はどんどんすりゃいい、と俺は一瞬、思ったんですけど。
――ダメですよ。
二村 ダメですよね。
しQちゃん あたしも一瞬そう思ったんですけど、ダメですねキュウ。
二村 捕まった?
しQちゃん 捕まらなかった。
二村 でも、後悔したんだ。
しQちゃん 酔っ払ったときに、しちゃった。相手も「痴漢です」って言って私を逮捕してくれればいいいのに。しないから。なんか、この世はおかしい、って思いながら痴漢をしてるキュウ。
――この世のおかしさを確かめるために痴漢をしたの?
しQちゃん そうかもしれない。
二村 痴漢すると、向こうはノリノリなんですか?
しQちゃん ノリノリが多い。
二村 勃起してる?
しQちゃん 勃起する。ずるいキュウ。
二村 まったくだね。だから、それがまさに男女の非対称性でしょ。社会における「男女の性」のイメージがそういう形式だし、じっさい女性についてるのがチンコじゃなくてマンコとおっぱいだから、つまり受動的な構造だってことになってるから、ある種の男は女から痴漢されると「失礼な事されてる!(怒)」じゃなくて「すけべな女から、求められてる!(喜)」「俺、モテてる!(勃)」って思えちゃう。だから俺は、マゾじゃなくてもゲイじゃなくても男はみんな女からケツを掘られて、快感の前に恐怖を一度みんな知るべきだと思うんだ。
男の「引き裂かれ」
しQちゃん それで言えば、あたしは自分が女として生まれてきたことへの憎しみもあるキュウ。女の体に生まれてきてしまった、でも男はちょっとうらやましい。やっぱり、自分が女に生まれたことに対して100%納得いってないキュウ。
二村 何が面倒臭いんですか? 女であることの。
しQちゃん 肉体もだけど、一番は女としての役割。女っぽさとか、女だからこうあるべきとか、女はどうせこう思ってるんだろう、みたいな。決め付けられてるキュウ。たとえば、「お前も女だから、本当は結婚して子供産みたいって思ってるんだろう」とか。そういうふうに、他人が「女はこうだろう」と決め付けていることが苦しい。もっと人として扱って欲しいっていうのが、ちっちゃい頃からあって。
二村 今まで「女に生まれて得した」こと、ない?
しQちゃん うーん。別に得したいわけじゃないキュウ。
二村 「女であろう」として生きていくと損をしたり被害に遭うことも多いけど、得をすることもたまにはあって、でも、それを受け入れたくないというのがしQちゃんの生きかたなのかな、と思ったんだけど。そうでもない?
しQちゃん そうでもないキュウ。でも、自分が女であることに対しての嫌悪感は、年々薄まってきてるキュウ。ちっちゃい頃の方がいっぱいあった。でも今、幼児相手のアルバイトをたまにしているキュウけど、子供たちに対して自分が時々「女の子でしょ」とか「男の子なんだから」とか、うっかり言っちゃいそうになるときがあって。その言葉はラクだから。
二村 女の子にはピンク色を自動的に与えてるほうが、与える側はラクだよね。判断そこで停止するもんね。
しQちゃん 2種類しかないからラクですね。個体差見なくていいから。でもそれじゃダメで。
二村 今の日本の世の中で、普通に女性として生きていて、まったく男性に対して憎しみを抱かない、被害者意識がゼロなのは、むしろ珍しい。珍しいからこそ、僕はそういう「男を憎んでない女性」が好きなんですが。そして僕自身も、ホモソーシャルに馴染めなくて男社会への憎しみを持っています。僕は、男のことは、ぜんぜん好きじゃない。
――どういう意味での「男」ですか? チンコがついてるのは、っていう意味?
二村 ていうか、イバッている男。エラソーな男。
しQちゃん それはなにゆえキュウ?
二村 かっこわるいですよ。個々で付き合うと、いい男、好きな男はいっぱいいますけど。トータルで見た時に、男同士で、なんだろう、男同士だぜ、っつって仲良くつるんでる、腐女子の人が好きな「ホモソーシャルの絆」みたいなのが嫌い。男だけで女の悪口とか言ってるのも、気持ち悪い。
――AVの現場って、そういう男同士の連帯はどうですか?
二村 ありますね。ただ、僕達の仕事は、ご存知かと思うんですけど、女優さんあっての商売なので。撮影中だけは、ものすごく女優さんを大事にする。そうしてると、男から女への憎しみも、女から男への憎しみも、わりと見ないで済む。女性への憎しみを動機にして撮影してる監督も中にはいるんだろうと思いますけど。女優さんにではなく、脱がない女性スタッフに対してセクハラ、パワハラをする奴もいる。あと、あんまり女性そのものに関心のない、AVを本当に仕事としてしか考えていない監督もいますよ。
しQちゃん 性の対象としても男性はあまり好きじゃないんですか?
二村 女装してて、欲望が僕のほうに向いている可愛い男子は好きです。前立腺への刺激でメス化して、女のようにイキまくってるのを見るのと興奮するし楽しい。あと、性の対象としてじゃないけど森林原人くんのことは好きですよ。これ、しQちゃんが原人ファンだから言うんじゃなくて、こちらの撮影の意図、作りたい映像を理解してくれて、僕の分身をやってくれる賢いAV男優さんたちや男性スタッフさんたちには、すごく感謝しています。ただ、AV男優ホモソーシャルにも俺、入れないんだよね。
――なんで?
二村 仲間になれない意識がある。心の底で、ひがんでいる。
しQちゃん 男とつるむのがあんまり出来ない、と。ヒトシは男子校出身キュウ?
二村 そうですね。僕、男性が怖いんですよ。
しQちゃん なんで? 傷つけられるから?
二村 なんでですかね?
しQちゃん なんか、女性っぽいですよね、ヒトシ。オタサーの姫っぽいキュウ。
二村 そうなのかな? よくわからない。
――それは、女ばっかりのオタサーで、男であるヒトシが姫だよ、っていうことですか?
しQちゃん そう。ヒトシのまわりには、ヒトシを支持して優しくしてくれる女性がいっぱいいるイメージ。
二村 そうですね。女性の集団の中に男は僕一人っていう状況が大好きです。僕ね、女性に囲まれて育ったんですよ。家族が女性ばかりだったんです。男が俺以外いなかった。
――そのことは著書でもたびたび書かれていますね。一人っ子で、父親はいなくて、お母様が六本木の開業医やりながら二村さんを育てたと。
二村 母親は病院の仕事で忙しいから、家に看護婦さんや女中さんがたくさんいて。
しQちゃん はー、納得キュウ。
――それが二村さんの「心の穴」ですか?
二村 以前は単純に「俺は幸せな王子様だった」って思ってたんですよ。そしたら『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』(幻冬舎)で湯山玲子さんと話しているうちに、母親はサバサバした女だと思い込んでいたけれど実は違ったんじゃないか、って思い至ったんです。母親の医院では、彼女は男性性を大いに発揮して、それはシンプルなリーダーシップじゃなくて、もうちょっとドロッとしていて、看護師さんも女中さんもコミュニティの最大権力者である僕の母に愛されようとして、しのぎを削っていた。女同士の愛憎がそこにあった。一人の男を囲む女たちの愛憎よりも、一人の男性的な女を囲む女たちの愛憎の方が、セックスがないぶん、すごかったんじゃないか……。
しQちゃん すごそう。なんで母親が実はそうやってまわりの女たちを支配していたことに気付いたのキュウ?
二村 母親、今ボケてきていて、家を売って高級養老院にいるんですけど。ボケてきた母を見て「あ、この人、感情がダダ漏れになると、俺が思ってた母親と違うんだな」とわかってきて。非常に理性的で、強い、怪物みたいな女性で、俺を抑圧してくる人だと思いこんでいたんですけど、一人のボケ老人になった今「あ、この人、そのへん意外と、だらしなかったんだな。その“だらしなさ”を使って、女から愛されるのが上手かった人なんだな、心のヤリチンだったんだな」っていう。なんだ、俺と同じではないか、俺はそこに似たんだな、って。
しQちゃん ヒトシ、愛されるの巧そうキュウ。英才教育受けたキュウね。
二村 しかもその英才教育を、父親からじゃなく、女なのにヤリチン(notヤリマン)だった母親から受けてしまったという。
自分の母親以外に愛人がいっぱいいる父親の影響下で育つと、僕みたいにはならないですよね。そういう男の子は、お母さんの悲しみが罪悪感として残って、女性に対して真摯な男になるか、あるいはお父さんに女の数で負けないように男らしいヤリチンを目指すか。つまり世の中にはマザコンのヤリチンと、ファザコンのヤリチンがいて、動機が違うような気がするんですよ。わかんないけど、父親がエラそうだったせいで、それに負けまいとしてヤリチンになっちゃった男って、じつはセックスそのものは、それほど好きじゃないんじゃないか。だって男らしいセックスって疲れるじゃないですか。そういう人が覚せい剤にハマったりするんじゃないかと僕は睨んでるんですけど。
しQちゃん 政治家Mの息子とか? 覚せい剤といえば清原、高知も今年逮捕されたキュウね。
二村 まあ、よく知りませんけど。清原さんは、男らしさを自分に求めすぎてしまった男なんですかね。
しQちゃん 残念キュウ~。
二村 スポーツマンって、たいへんだよね。老け込む前に、かならず選手としてのピークは終わっちゃうわけだから。その淋しさからは、きっと逃れるのが難しいですよね。女性も「私は女だ、女でしかない」って思想で固まって生きていると、やっぱり老化は淋しいでしょうけど、それにしても男の苦しみって語られなさすぎだよね。
男として生きる、あるいは女として生きるのって、かわいそうな話ですよ。そこは、なるべく柔らかく生きていきたいよね。長渕剛もマリファナで捕まったりはしたけど、音楽の人って、マッチョに見えても柔らかいんじゃないかな。いや、音楽のこと全然わかんないんですけど、そういう男性ミュージシャンで、パッと見ると男らしそうな人、外見がチンコっぽい人でも、心が両性具有で男性性と女性性いったり来たりしてないと、歌を歌うのって難しいんじゃないのかな? 清原さんみたいに、スポーツマンとしてスターになっちゃった男らしすぎる人って、自分の男らしさから逃げる方法がないからキツそう。プライベートでマゾになればいいのか。
しQちゃん マゾか女装。見たいキュウ、清原の女装。
二村 見たいね。清原も、だから女装を趣味にすればよかったんだよね。女装じゃなくとも、せめてアナルでドライ・オーガズムを経験して、夜な夜な悶え狂う習慣があれば……。ていうか清原の女装は、みんなが萌えるよね?
しQちゃん 萌えるキュウ〜。
二村 なんの話でしたっけ?
しQちゃん ヒトシの生い立ち。
二村 よく覚えるなあ、しQちゃんの中の人は意外と論理的ですね、僕の話すごくあっちこっち飛ぶんだけど、覚えててくれてありがとうございます。
しQちゃん いいから進めろキュウ。
二村 母親の話ね。母親がそういう、負の男性性の持ち主だったってことに気がついたんですけど。「そうか、うちの母ちゃん、ヤリチンだったんだ」みたいな。
しQちゃん ヒトシは周りが女性ばっかりで育って、「男だからこうしなさい」という抑圧をされなかった?
二村 なかった。だから学校では泣き虫だったよね。で、自分の居場所を、それこそ『すべてはモテるためである』に書いたような、自信を持ってそこに立っていられる場所を発見するまでは、いじめられっ子でしたよ。
しQちゃん ヒトシの居場所はどこだったキュウ?
二村 オタク関係ですよ。あと、皆さんの小学校にも一クラスに必ず一人いたと思うんですけど、エロ博士でしたよ。
しQちゃん 原人と一緒だよ~。
二村 そうなんだよ。森林原人は、AV男優には珍しいんだけど、そのへんは割と僕と似たタイプの人です。ある意味、彼は女性的ですよね。女性的っていうか、筑駒という男性社会から脱落した男なわけでしょう(参照)。ところがチンコは同級生の誰よりも立派で頑丈。そしてスケベ。そこが素晴らしいところです。
しQちゃん かわいい~。
二村 かわいいよね、彼は、なんとも言えないキュートなところがありますよ。僕ね、男っぽい男優さんって苦手なんです。
――でも男優って大半が男っぽいのでは?
二村 全員じゃないけど、そういう人は多いです。
――どう折り合いつけてらっしゃいます?
二村 あんまり起用しない。僕、けっこう出てもらう男優さんが限られてるんですよ。原人とか田淵さんとか、佐川銀次さんが好きなんです。佐川さんも「ザ・おっさん」って外見だけど、じつは非常に繊細な人ですから。
しQちゃん キモい男子なら大丈夫ってことキュウ?
二村 性格がキモすぎる奴も苦手だけど、オタク男子だったら話は合う。
しQちゃん アニメとか?
二村 俺、ファーストガンダム世代。
しQちゃん 意外! 漫画とか興味ないと思ってた。
二村 あるある。漫画大好き。
しQちゃん 漫画で抜けるキュウ?
二村 それはない。
しQちゃん へー。
二村 いや、漫画にもよるかな。女が強い、女が男をめちゃめちゃにするみたいな、すごい筋肉質の強い女が痴女になるみたいなのは、実写AVだとなかなか難しいんです。やっぱ女優さんにもイメージ戦略があるから、痴女だと美しい秘書か女教師みたいのが多い。S女だとギャルになる。女子アスリート大好きなんですけど、AVだとだいたいその強いアスリートが男にやられちゃう。最近のハリウッドのヒーロー映画はカッコよくて強い女キャラが出てきて、あれって僕の考える痴女に近いですけど、直接エロ行為におよぶわけじゃない。
でもエロ漫画だと、女性が圧倒的に強いってジャンルがある。絵だと、いくらでも強くエロく描けるから、だから漫画でもそういう漫画だと嗜好的にシコれます。だけど最近の、いわゆる萌え絵っぽい漫画は僕はシコりにくい。
しQちゃん え、じゃあ、でかい女とか好きキュウ?
二村 背の高い女性、大好きですよ。
しQちゃん じゃあ、『Theかぼちゃワイン』でも勃起して?
二村 『Theかぼちゃワイン』は、設定は中学生ですけど、こう言っちゃあれですけど、エルちゃんって体型がズドンとしてるじゃないですか。どっちかっていうと永井豪が描くような、筋肉質の女が好き。
しQちゃん あ、じゃあ、『けっこう仮面』とかキュウね。
二村 『けっこう仮面』いいよね。僕の痴女好きの源流は永井豪ですね。
しQちゃん オタサーの姫とか、同性の群れから外れてしまう女については、どう思うキュウ?
二村 そうか、オタサーの姫ってことは、男に囲まれて、女性社会から出てしまった女ってことか。そう考えると親近感が湧くな。そういう「女性の輪の中に入れない女性」を、どう思うか、っていうのは?
しQちゃん 好きですか? っていう。
二村 好き好き、大好き。
しQちゃん 好き好き大好き……!
二村 自分の女性性をうまく操れない人、大好き。
――なんで好きなんでしょう?
二村 僕が、つけいる隙があるように思えるからじゃないですか?
しQちゃん あー、やっぱり。どうやってつけいってくるんですか?
二村 それはケースバイケースなので、じっくり、ここから先、観察して下さいね。
しQちゃん あたしを口説くのキュウ? ……楽しいですね。
二村 ぜんぜん楽しくないよぉ……。

いいや、楽しいはずだキュウ
しQちゃんのかわいいを返せ
――セックスで身体的な快感を得ることに受動的な人は男女ともに多いなと思っているんですが、二村さんは能動的で自覚的で、世の男性たちにも「前立腺気持ちいいよ! 乳首最高だよ!」と訴えかけていますよね。私、『オトコのカラダはキモチイイ』(KADOKAWA/ダ・ヴィンチBOOKS)がすごく好きなんですけど、これの142ページ、朗読していいですか?
「それはときには僕だって、おら、などと言いながら、女性に強制的に乳首を舐めさせたい気分になる日もあるんですよ。舐められるとすぐにあーんって身悶え始めちゃうんですけどね」「乳首によって、受けスイッチが入るんですね」「そしてそのギャップに、自分で、かわいいな、って思うんです」これに、岡田育さんが「二村さんは本当にご自分が大好きなんですねぇ」とツッコむ。ここ、聞いて欲しかっただけなんだけど(笑)。自分で自分のギャップにかわいいなって思う、ご自分が大好きな二村さんを、しQちゃんはどう思われますか?
二村 キモいキュウ。キモいキュウ。
しQちゃん 良くも言えたものだな、と思うけど、個人的にかわいいなと思ったし、でもズルいなと一番思ったキュウ。あたしも言いたいけれど言えないのに。
二村 すみません。
しQちゃん いや、そこを謝るところも含め、ずるいな、っていう。乳首攻めされて喘ぐ男、むかつく。ずるいキュウ。
二村 受け身でヨガる男が嫌いなんだ? どこにムカつくの?
しQちゃん うーん……あたしはつい童貞とばかり付き合っちゃうキュウけど、童貞は高確率で乳首で感じるじゃないですか?
――へー、そうなんだ!
しQちゃん そうなんですよ。
――乳首の開発、されていないのに……?
しQちゃん そう。
二村 それはつまりですね、本来、男は全員、乳首は感じるんです。だけど精神的な男性性を獲得すると、感じなくなっていくんです。
しQちゃん そうキュウ!
二村 社会の中で男になっていくと、感じないように思いこむようになる。「男は乳首で感じちゃいけない」って制度に縛られて、感じなくなる。
――じゃあ、童貞はまだ、男性性を獲得していない状態だから感じると?
二村 そういうことだと思いますよ。
しQちゃん でも、乳首で感じられると、萎えちゃうキュウ。
二村 えっ。
――なんで?
しQちゃん とられた、って思うんですよね。
――とられた? 私はもっとかわいくやりたかったのに、かわいいやつとられた、って?
しQちゃん そう!!!!!! あたしのかわいいを返せ! って思うキュウ。
二村 そうか、攻めているのに、しQちゃんは本当は受けの役をやりたいんだ?
しQちゃん そう。だから、男にアナルで感じられると……。
二村 前立腺攻めもやったことあるんですか?
しQちゃん あるキュウ。
二村 すぐれた人だ。
――つい、指入れちゃった?
しQちゃん 喜んで欲しくて。
――喜んで欲しくて。わかります。
しQちゃん 喜んで欲しくてやって、でも童貞がそれで喜んでかわいく喘いでるの見たら、悲しくなった。
二村 引き裂かれているなぁ……。やっちゃうことと、やりたいことが違うわけね。
しQちゃん その引き裂かれていること含め、傷ついているし。もう、童貞に近付くと何やっても傷つく。
二村 それこそ、しQちゃんの心の穴が、そうさせているんだと思いますけどね。
しQちゃん 出た、心の穴。心の穴問題は、どうなりましたか?
二村 どうなりましたかと言いますと?
しQちゃん 結局、投げっぱなしだったじゃないですか、心の問題。
二村 さっき、そう言われて一旦深く反省もして、でもそれってそっちの依存じゃね? って思ったんですけど。なんか、しQちゃんの話を聞いてるうちに、だんだん腹が立ってきたんですよ。俺、ちゃんとやってるのにな、って思いますけどね。
――通じてないの、と。
二村 ていうか、俺も俺だけど、女も女だよなぁ、っ言うと女性をまとめてディスることになるんで申し訳ないので、もちろん、まともな女性はたくさんいますけど、しQちゃん、やっぱちょっと病みすぎじゃね? と。
――病みすぎ。
二村 うん。病んでるっていうか、まぁ、病んでいるって表現もあんまりよくないね。病気っていうのは難しい問題だし。それがまた別の関係ない人に届いちゃう侮辱の言葉になったり。病んでいるのが悪いとか、逆に「病んでる人や障害のある人は可哀想だ」みたいなのも違うと思うんで、「病みすぎじゃね?」は取り消します。なんて言えばいいんですかね、僕の本に使った言葉で言うと、引き裂かれ過ぎ?
さっきも言ったけど女性というのは、現代社会というか男性社会において、引き裂かれちゃうのはデフォルトですけど。それは苦しいことでしょうし、本当にその点では皆さんに同情もするし、そんな社会を作っている男の一員として「申し訳ない」とも思うんだけど、でも、引き裂かれているのが仕方ないとして、その……、なんだろう……。『すべてはモテるためである』(イースト・プレス)でキモい男、自分の立ち位置から動けない、動こうとしない愚かな男のことを書きましたけど。本質的に同じなんじゃないですか、その、めんどくさい童貞気質、あなたがつい惹かれながら憎んでしまう童貞たちと、あなたのように被害者意識を持っちゃってる女性というのは。
しQちゃん そうですね。童貞も同じなんですよね、構造は。
二村 しQちゃんは僕が本に書いて言いたかったことを、よくわかってるんですよ。よくわかってるから「答えが書いてねぇじゃねぇか」って、お怒りなんだと思うけど。
しQちゃん 怒ってないです。どう考えてるのかな、っていう。
二村 どうもこうも、童貞とか非モテの男だけじゃなく、ヤリチンであっても、支配系の「愛妻家」であっても、男っていうのはインチキ自己肯定をしている以上、全員キモチワルい連中なんだっていうのが僕の立場なんですけど、しQちゃんみたいな女性も、インチキな自己肯定すらできないから自己否定をしてるだけで、やってることは同じ「自分を守ってる」んだから。つまり男性社会で男がインチキ自己肯定することと、女が自己否定することは同じ。って言うと酷ですけど。『すべてはモテるためである』の「あなたがモテないのは、あなたがキモチワルいからだ。女に、それがバレているからだ」っていうのを読んでショックを受けてくれた男性読者たちがいた。あれは踏み絵なんです。引き裂かれてることに自覚的な男性、自分が男であることに疑問を持っている人が、あの本を読んで何かを考えてくれる人。
ヤリチンってどう考えても気持ち悪いんだけどさ、「お前は気持ち悪いです」って言われても、きょとんとするじゃないですか、あいつら。ヤリチンだけじゃなく、おっさん、社会において既得権益を持ってる人、女性に興味を勝手に持っておいて勝手に暴言を吐いて傷つけてくる、本質的に気持ち悪いおっさんたちは、いつまでたっても滅びないわけですよね。まあ「ペニスケース!」って空気の読めないクソリプが暴言だったとしたら、俺も彼らの一員なわけですけど。彼らは、引き裂かれを自覚してないわけですよ。深く心は病んでいるにもかかわらず、世の中からそれを許されて、許されていると自分の引き裂かれに気づけない。「男=人間だ」って、この社会で、ふんぞりかえっていられる。
ところが女性は、女でありながら同時に、ある意味「人間である」ことが、なかなか困難なんです。まず「女であれ」って言われちゃうじゃないですか。お化粧しろとか子どもを産めとか、それも実の母親からも社会からも言われてしまう。しかも昔は「女であれば、それでいい」って言われてたのに、現代社会では「女として活躍せよ、しかし同時に、人間としても活躍せよ。自立せよ」って言われてるわけですよ。そんなの無理ですよね、言葉の額面どおり受け取ったら。だから、それがある程度できちゃう女性ほど、努力しすぎて、なんだかよくわかんないことになっていく。できない女性は、しQちゃんのように自己否定して病む。
湯山玲子さんは、それへの処方箋として「女である前に、まず人間であれ」って言います。
――女は、鎧というか、武装というか。
二村 そう。ジェーン・スーさんが言ってることも意味は同じだと思う。「女であるっていうことはフィクションだ」と。まず人間として生きてから、女のふりをしていれば、世の中のキモい男たちもそんなに目くじらをたてない。それでも図に乗ってセクハラ・パワハラしてくる男には「あんた、あたしのこと人間だと思ってないだろ。なめてるだろ。出るとこ出ようぜ」って言える。
男への処方箋として『すべてはモテるためである』には、男なのに引き裂かれていて男であることを生ききれない男、ようするに子供のころの僕みたいな男たちに向けて「自分の欲望を見つけろ」ということを書いたけど、病んでる女性にも同じことを言いたい。
しQちゃん 欲望なんですね。
二村 僕は自分の欲望に救われたんです。AV監督になれたことで。それが、まあ僕がアドバイスできる、楽しく生きるための方法ですよね。でも、漠然と「男が欲しい」「男から愛されたい」「自分の淋しさをなんとかして欲しい」なんていうのは、欲望じゃないですよ。
――あらかじめ世の中に用意された、男の欲望って、女の欲望ってこれですよ、っていう選択肢の中から手にとってたら、その人は引き裂かれる、ってことですか?
二村 そう。だって、それは「その人のために用意された欲望」じゃないからね。女として、男を立てるようにふるまうなんて、やれない人もいるし、無理してやれば出来るけど、やりたくない人もいるし。それを無理してやってると発狂しますよ。
自分の欲望を真摯に追求することは、やがてエゴではなくなる、なぜなら「あなたの欲しいもの」っていうのは「あなたが人に与えることができるもの」であるはずだ、っていうことを僕は言いたいんですけど。それを見つけて、人に与えて生きていければ、無理しなくとも自然と人間として自律できる。自立ではなくて自律。
だから女性も、自分の中の優先順位を見つけたほうがいい。10枚のカードにそれぞれ自分の願いを一つずつ書いて、勝ち抜き戦をやる。
しQちゃん そのやり方、スピリチュアルでもあるキュウ。
二村 いろいろ迷って混乱してる女性は、男に求める優先順位をそうやって決めろって、アルテイシアさんも書いてましたね。その10枚の中のランダムで2枚ずつ開いて、どっちが譲れないって決めていけば、一番譲れないことのベスト3くらいが決まる。なんでもかんでも男に求めていても始まらないので、自分が一番欲しい男はどんな男なのか、ちゃんと自分で理解しろっていう。でもね、僕は思うんだけど、童貞は憎いけど童貞は好き、童貞とばかりつきあっちゃって、つきあうたびにムカついてる、っておっしゃるしQちゃんの童貞への感情は、それは、やっぱり愛ではないですよ。でね、僕は思うんだけど、童貞は憎いけど童貞は好き、童貞とばかりつきあっちゃって、つきあうたびにムカついてる、っておっしゃるしQちゃんは、それは、やっぱり好きなんですよ童貞が。
しQちゃん 多分、心の穴に合致するっていうのと、あと、自分が憎いっていう童貞の性質が、自分と似てるから、それを征服すれば自分は救われる、っていう欲望ですよね、これも。
二村 恋というのは「支配されたい/したい」という感情で、本質は憎しみなんです。愛は憎しみじゃないけど。
――でも、考えると、しQちゃんの欲望って、見えない、ですね。
二村 しQちゃんが、どんな男とセックスしたいのかが、全然わかんない。本気で童貞が好きなら、童貞っぽいマゾ男性を虐待する風俗で働くという手もあるけど、それで童貞マゾが喜んじゃったら癪にさわるわけでしょう? イメージとしての森林原人氏のことは愛してますよね。彼のような、さわやかな優しさと童貞性と性豪ぶりを兼ね備えた男性像が、しQちゃんの欲望の象徴なのかもしれないけど。「原人かわいいキュウ~」って言ってるとき以外は、ずーっと男への呪詛を口にしてるもんね。
しQちゃん どうしたらいい? しQちゃんとしてのあたしは。
二村 いや、別に、しQちゃんはそういうキャラだから、それで原人の存在に救われてるわけだから。しQちゃんとしては、そのままでいいんじゃないですか。だって多くの女性が、messyを読んでる女性だけじゃなく、ツイッター見てたら偶然しQちゃんの男に対する罵声が目に入っちゃって、共感する女性、「つらいのは、あたしだけじゃなかった!」って救われる女性もいるでしょう?
――二村さんは、乳首やアナルを刺激されてかわいく喘ぐわけですが、そこから「女装」に発展する予感はないのですか?
二村 女装、ハマんないですね。性的に奔放な女性からアナルを掘ってもらうのは好きですけど、別に普段から「女」として暮らしたいとは別に思わない。昔、ロフトプラスワンで女装のイベントがあったときに、現場で「じゃあしてみるか」って、メークされて、スカート貸してもらって女装したことあるんです。そして変態のおっさんにおしりを撫でられた。その時は僕も非常に興奮しましたけど、まぁ、それ以来、女装はしてません。自分がハマるよりも、それにハマっていく男の子たちを観察してる方が面白いんだよね。
しQちゃん 女装子のAVたくさん撮ってますもんね。それはやっぱり、ヒトシ自身が自分の欲望を見つけられているからじゃないですか。
二村 良く言えばそうなんですけど。悪く言うと「自分を安全圏に置いておきたい」っていうのもある。
しQちゃん 安全圏願望強いキュウね!
二村 安全圏願望、強いですね。
しQちゃん ズルいキュウ!!!!!!!!!(怒)
<後編へつ・づ・く>