コミックエッセイ、『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(永田カビ著/イースト・プレス刊)。この作品に登場する女性向け風俗店は、現在大阪・ミナミで営業を続けて10年目となる「レズっ娘クラブ」だ。今回は、創立者である御坊さんにインタビューを行った。開業から現在までの苦労に満ちた10年間を伺った前編に続き、後編では、お店の楽しみ方ガイドをお伝えしたい。(インタビュアー・構成/牧村朝子) ※最後に読者プレゼントのアナウンスがあります。
――「レズっ娘クラブ」という店名を見て「レズビアンじゃないと利用しちゃいけないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。キャスト(従業員)の皆さんは、「私はレズビアンです」ということで入店されるのでしょうか?
御坊:難しいですね。「レズビアンです」って言って入って来て、「男性と結婚するので辞めます」っていう人もいるし。逆に、「わからないです」って言って入って来て、「彼女できたんで辞めます」っていう人もいるし。
――じゃあ、全員が「私はレズビアンです」って言って入って来るわけではないんですね。
御坊:そうですね。そういう子もいますけど。一応、お店からは聞きます。でもあまりそこを重視していないかなという感じですね、今は。
――キャストさんからお客さんには、「女の子同士でこういうことしたことある?」って聞いたりもするようですが、なぜでしょうか?
御坊:トークの一環、ヒアリングですよね。お客さんのニーズを知るためだったり、コミュニケーションをとって緊張をほぐしたり。その中で、やっぱり、「セクシャルは?」って話になるんですけど……。
――セクシャルっていうのは、性のあり方、ネコ(受動的)なのかタチ(能動的)なのかリバ(攻めも受けもする)なのか、みたいな話でしょうか。関東だと、セクとかセクシャリティとかいいますけど……。
御坊:そうなんですか? 「シャリティ」! かっこええですね!!
――関西ではセクシャルなんですね。
御坊:まあ、「セク」ですかね。うちのホームページには「セク」って書いてますね。
――いわゆるタチ・ネコどっちですか? とかは聞いたりするけれども、お客様にもキャストさんにもレズビアン自認があるとは限らないと。まあ、お店を利用したことで初めて自分のセクシャリティがわかる人もいますよね。
御坊:そうですね。利用後に「やっぱりそうだった」ってお客さんもいますし。「バイキュリアス」とかね。
(※注……バイキュリアスとは、「自分をバイセクシュアル(両性愛者)だとは言い切らないが、異性との性行為にも同性との性行為にも興味がある」というあり方を示す用語)
――「レズ」という言葉は、蔑称として使われてきましたから、自称以外は使用を避けるべき、公的ではない表現ではという指摘もあると思います。「レズ」という言葉はあえて使われているのでしょうか?
御坊:それは、開業当時にすごく言われましたよね。レズビアン当事者じゃなくて、ゲイの人に。でも最近、ブログにもちょろっと書きましたけど、アダルトカテゴリとしての「レズ」ってあるんで、そっちなんかなって思ってますよね。
――そうですね。細かく言えば、「レズビアン」と「レズ」と「ビアン」って、それぞれ微妙にニュアンスが違いますよね。「レズビアン」が正式で、「ビアン」は「レズ」という蔑称を避けるためにちょっと昔に使われだした。で、「レズ」は蔑称、もしくは「私レズなんで~」みたいな気軽な自称だったり、あえて「レズです」って名乗ることでイメージを塗り替える使い方だったり、アダルト作品のいちカテゴリだったり。
御坊:「レズ」と言えば、当事者性が問われないと言うか。レズビアン当事者ではないというお客さんもいますしね。
――コミックのタイトルも、ネット連載(Pixiv)では「ビアン風俗」と言っていたものが書籍版で「レズ風俗」に変わりましたけど、どう思われましたか?
御坊:「うちの店名入れてくれてもよかったのに」と(笑)。あと、(コミックの著者)永田先生は来店時、キャストにご自身の要望が伝わらなかったみたいなので、そこをキャストのほうがちゃんと拾えたらよかったのにな、とか。もうちょっと汲み取れたんじゃないかな。僕の理想が高いのかもしれないですけど。
要望は、伝えてもらわないと分からないんで、逆にお客さんたちに言いたいのは……予約する勇気ってめちゃくちゃ必要だったと思うので、その勇気のまま要望を伝えて欲しい。一歩目踏み込んだ勢いで二歩目もイケると思うんで。そのほうがもっと楽しくお店を使っていただけると思います。
――キャストさんにはどんな指示をしているんですか?
御坊:やっぱ、ヒアリングとホスピタリティですよね。お客さんは時間とって予約して、わくわくしてるわけですから。
――心のコミュニケーション面だけでなく、体のテクニック面も大事ですよね。女性同士のセックステクニックはどうやって教えているんですか。
御坊:もう、場数。僕は教えられないんで。
――先輩が後輩に教えることはあるんでしょうか? 指名を増やすためにはむしろ同僚にテクニックを教えないほうが本人にとっては得ですよね。
御坊:教えるのはテクニックより、コミュニケーション面ですよね。プレイに関しては、レズ鑑賞のコースもやっている姉妹店の「レズ鑑賞クラブティアラ」で、ある程度先輩の人に身体合わせて教えてもらうっていうのが一番効率的ですかね。そこからは独自の、各々のプレイスタイルを作っていく感じです。
――実戦でどんどんうまくなるわけでしょう。上級者のお客さんは……キャストが少しずつ育っていくのを見る、っていう楽しみ方もあるんでしょうね。まったく女性経験がないまま入店するキャストさんもいるんですか?
御坊:いますね。「男性経験も女性経験もないです」とか。「ネコです!!(※注……性行為の時に受動的な側。レズビアンセックス経験があっても、攻めた経験がない、という場合もある)」とか。ただ、「女性が好きです」と言って面接にくる子もいます。
初期メンバーで、男性経験も女性経験もまったくない若い子がいたんですね。で、「大丈夫かなー、最初のお仕事」みたいな感じでやってたんですけど……帰ってきたら、こう、オトナになってて(笑)。いわゆる、“知ってる側”の顔をして帰ってきた。「よかったー!」言うて(笑)。
――今の御坊さんの“オトナな顔”、面白かったです(笑)。でもお客さまの中には、いわゆるセックスをしない方もいらっしゃるわけですよね?
御坊:そうですね。お話だけ、添い寝だけ。抱きしめて欲しい、っていうのもあるし。
――人と向き合う時間を買う場だ……。
御坊:当初思ってたのと全く違うことになってるんですけど、僕も。でも、「いいことしてるんかな」って実感しましたね。永田さんの漫画を読んだり、お客さんのレポとか見て。
――お店をやっていて心に残っていることはなんですか?
御坊:告白される率ナンバーワンの子(※過去在籍の人気キャスト。詳しくはインタビュー前編へ)がいつも「幸せになってほしい」って言ってたんです。どういうあれかもわからないですけど、来てくれた以上は幸せにしたい、幸せになって帰ってほしい、と。そのことをずっと言ってたんは印象にありますね。なんで辞めちゃったんやろ……って思いますけど。このインタビューを見てたら戻ってきて! 今チャンス!(笑)
ひとつ自慢できるのはね、うちは、お客さんがキャストに会った後のチェンジとかキャンセルが一回もないんですよ。僕がちゃんと会って見極めてるんで。写メと別人じゃないかどうか、とかね(笑)。もともとお客さん方は、みんな指名なんですよ。フリーっていうのがない。男性客と違って、「とりあえず抜ければいい」みたいのがないんで。
――もちろん、性欲解消も大事だし、抱きしめてもらう的なことも大事だと思うんです。でも、必要としている人に届かないという現状がありますよね。女性向け風俗があることを知らない人も多いでしょうし、ましてやキャストが男性じゃなくて女性のお店があるなんて考えてもみなかった人もいると思います。また存在は知っているけど、利用するのは怖い……と躊躇している人もいるはずです。利用をためらっている方に伝えたいことは?
御坊:永田先生みたいに、行くための言い訳を作ってください(笑)。行かない言い訳より、行く言い訳を作ってみてはどうでしょうか。うちはきちんと法令遵守していますし、怪しいお店では決してありません。来ていただければ満足できるように精一杯頑張ります。
――「この記事読んで来てみました」って、言い訳に使って頂ければいいなと思います。
御坊:僕たちのほうは、全然敷居を高くしてるつもりはないので。もう、このインタビューを読んで、いますぐ予約を入れてください!
※以上、前後編のインタビューをお送りしました。なお、「レズっ娘クラブ」で言う女性とは、18歳以上の、戸籍上の女性のことを指しています。身体障害を持つ人の利用についても、「最大限対応します。お問い合わせください」とのこと。その他のQ&Aは公式サイトにまとめられています。
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