
生まれる可能性は、どちらも2分の1。Photo by Nate Davis from Flickr
妊活という言葉がすっかり定着している中で、冷えとり健康法や骨盤矯正、水素水など根拠もデータもない物件が活性化中ですが、さらに一歩深いところを眺めてみると〈産み分け〉という有名物件に出くわします。
着床した受精卵が、男の子になるか女の子になるか。本来は神のみぞ知る世界でありますが、それをコントロールして親が希望する性別にしようという試みです。子どもの性別は2種ある男性の精子のどちらが卵子と受精するかによって決まるしくみになっていて、X精子とドッキングすれば女の子、Y精子なら男の子となります。その2種の精子はそれぞれ活動的になる条件や寿命が異なるため、そこを利用して希望する精子を卵子に送り届けようというわけです。
こちらの記事でも宋美玄医師が語っているように、もちろんそんなことは不可能です。記事内で指摘されていますが、産み分けが叶うのなら、男子継承者が必要なロイヤルファミリーや梨園、働き手として男の子が欲しいけど国の決まりで1人しか産めなかった中国がとっくにやっているっつーの! あ、もちろん〈極秘情報だから出回らない〉とか〈倫理上やらないだけで実はできる〉等のお説は、遠慮させていただきますね。産み分け指導で超有名な某クリニックも、HPに〈産み分け指導やってまっせ〉という旨を一切記載していませんし、〈実はできない〉というご自覚をお持ちなんじゃないかと、にらんでいます。
では絶対に絶対に不可能なのかと言われればそんなことはなく、上の記事にもありますが、体外受精後に受精卵の染色体を調べ希望する性別のものを子宮に戻すという方法があります。これは現在日本で禁止されていて、海外の一部の国で行われているもの。しかしこの医療行為は基本的に、重篤な遺伝性の病気を回避するために行われるものであることも、頭に入れておきましょう。
精子を遠心分離器にかける〈パーコール法〉は日本でも可能な産み分け法ですが、こちらは日本産科婦人科学会によって科学的根拠ナシと発表されているので、これをやっているクリニックって激しく信頼できなそう。
巷のアヤシイ産み分け法
ネット上では〈男性が水素サプリでアルカリ体質になると、男の子ができやすくなる(そもそもアルカリ体質ってなんでしょ)〉だの、〈女の子が欲しければ、男性が電磁波を浴びる(男の子になるY精子が破壊されるんですと)〉だの、妙なお説が出てきますが、まずは産み分け指導で有名な杉山力一医師の『女の子・男の子 生み分けBOOK―女の子が欲しい! 男の子が欲しい! の願いに応えます』(日本文芸社)から、基本となるお説をみてみましょう(産み分け指導はこれに統一されているわけではなく、それぞれの医師が自身の経験や知識から独自の方法を行っているようですが、これが最もポピュラー)。
■男の子が欲しい場合は?
排卵日ドンピシャに、女性が深くオーガズムを感じられるような〈濃厚かつ、挿入の深い体位でのセックス〉を行う。オーガズムを感じると膣からの分泌液によって膣内がアルカリ性に傾き、Y精子が活動しやすい環境になるからである。さらに女性が杉山医師おすすめの「リンカル」というカルシウム剤を服用していると、成功率アップ‼ 同書には「リンカルを飲んだ妊婦から生まれたのは全員男の子だった」とまで書いちゃってるけど、消費者庁から怒られたりしないの? これ。
1 2