カンバーバッチ・おもろ・ポイント
なおかつ、カンバーバッチさんは、カッコいいのに面白いところが、大きな特徴ではないでしょうか。
シャーロックが毛布をパトカーに投げ込むシーンがあるのですが、なんだか、動きがかわいくて面白いのです。ただ毛布を投げ入れる、というなんでもない動きにまでキレがあって、擬音をつけるとしたら、「くるくる……ぺっ!」という感じで毛布を投げ捨てるのですが、その時のピンと伸びた指先がきれいで、そして、なんだか面白い。
カンバーバッチ・狂気・ポイント
さらに、カンバーバッチさんの演技には、時に狂気を滲ませたダークな迫力までもあるのです。シャーロックのキャラ設定には、言動がドSっぽく、退廃的で不健康な部分もあります。このキャラクターをカンバーバッチさんが演じると、ぐっときたり、はらはらしたり、目が離せません。
原作のシャーロックはヘビースモーカー、および、ヘロイン中毒という設定ですが、ドラマのシャーロックは煙草もクスリもやらず、代わりにニコチンパッチ中毒です。シャーロックが長椅子に寝そべり、陶然としているシーンがあったので、「まさか……」とドキリとしましたが、腕に何枚もニコチンパッチを貼っているだけでした。薬物中毒じゃない、というだけでほっとしましたが、ニコチンパッチ中毒とは。考えてみれば十分不健康です。そのシーンでのカンバーバッチさんは、目がきらきらと輝き、まるで瞳孔が開いているようで、原作の設定を知らない人でも、見れば不穏な空気を感じ取るのではないでしょうか。
第1話の初登場シーンで、シャーロックは死体(悪人ではなくていい人という設定)を乗馬ムチで滅多打ちにします。別のシーンでは、ある人物が倒れ、出血している箇所を、自分勝手な怒りから、踏みつけたりもします。あんた、女王様か。
カンバーバッチ演じるシャーロック・ホームズは、まるで、歩く凶器です。しかも、神々しいまでに美しく、面白い、凶器なのです。
犯罪の動機など、種明かしする為に犯人がなんやかんやと饒舌に喋りまくっているシーンでは、集中力が切れてしまい、「早くカンバーバッチさんを出せ!」という気持ちになるくらい、カンバーバッチさんは『シャーロック』には欠かせない存在でした。
カッコよくて、かつ面白く、時には狂気の片鱗をのぞかせる。シャーロックの役柄がそうだというのもあるし、カンバーバッチさんから滲み出るものもあるのだと思われます。
カモン・シーズン3!!
『シャーロック』は、原作の魂はそのままに、『シャーロック・ホームズ』の世界観を21世紀ロンドンに移した作品です。原作に非常に忠実なところに製作者の真摯な思いを感じますし、「もしシャーロック・ホームズが現代に生きていたらどんな感じの人なんだろう?」という問いに対して、知的でエンターテイメント溢れる解答を示してくれる、とても良いドラマです。
『ピンク色の研究』冒頭は、戦争から帰還し、PTSDに苦しむジョン・ワトソンが悪夢にうなされ、カウンセリングを受け、自分の日常をブログに書くように薦められるところから始まります。ジョンが戦争から帰還し、生活に困っている点などは原作に忠実でありながら、PTSD、カウンセリング、ブログ、といった現代のキーワードが散りばめてあります。
レストレード警部(ルパート・グレイヴス)やモリアーティ(第1話では名前のみ言及される)など、原作でおなじみのキャラが出てくるのにも嬉しくなるし、ドラマにすっと入れます。
原作のファンなら確実に楽しめるドラマではないでしょうか。私が冒頭で挙げた萌えポイント以外にも、ファンなら「あっここも! あそこも!」という風に、原作オマージュがぎっしりつまっています。
そしてカンバーバッチさん演じるホームズには、確かに理性を狂わす魅力が、ありました。『シャーロック』のカンバーバッチさんを見ると、「主役を張る」、というのは、こういうことなんだな、と思い知らされます。
今年放映される予定のシーズン3が、今から待ち遠しくてしかたないワタクシです。
■歯グキ露出狂/ テレビを持っていた頃も、観るのは朝の天気予報くらい、ということから推察されるように、あまりテレビとは良好な関係を築けていなかったが、地デジ化以降、それすらも放棄。テレビを所有しないまま、2年が過ぎた。2013年8月、仕事の為ようやくテレビを導入した。
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