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萌えとポリティカルコレクトネス、或は、欲望の表象の問題

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柴田英里

(C)柴田英里

 明日8月26日金曜日、21:00~、『ラジオアキバ通信』というインターネットラジオに、大田区議・荻野稔さんと共にゲスト出演します。テーマは、「萌えとポリティカルコレクトネス」です。「碧志摩メグ」問題に代表されるような、「萌え」表現へのバッシングなどについて、自由闊達に議論します。

 「萌え」という言葉の定義自体が非常に曖昧で多様な意味合いを包摂する言葉ですが、「萌え」に対しての批判には、萌えを「男性オタクが女性キャラクターに対して抱く感情」「ヘテロジェンダー的な欲望」と限定的に解釈している意見が多くあるように思います。しかし、「萌え」という感情や、「萌え」という言葉が使われるにあたって、それは必ずしも「男性オタクが女性キャラクターに対して抱く感情」「ヘテロジェンダー的な欲望」に起因するものではありません。女性キャラクターに「萌え」る女性ファン、非異性愛的な欲望としての「萌え」など実に多様であり、「ヘテロ男性から女性キャラクターへ向かう欲望」としてのみ解釈するのは、あまりにも齟齬が大きいです。

 「萌えとポリティカルコレクトネス」で一番話題になり、オタクとフェミニストの間に大きな断絶が生まれた発端は、なんといっても、昨年夏の、「碧志摩メグ公式撤回署名」に始まる、三重県志摩市のご当地キャラクター「碧志摩メグ」にまつわる一連の問題です。

 三重県志摩市の海女さんをモチーフにした萌え系女性キャラクター・碧志摩メグの公認撤回を求める署名は、志摩の海女さんらのグループが提出したものと、インターネット署名「change.org」において、第4世代のフェミニストで形成されているという匿名覆面アート集団・明日少女隊が行った「三重県志摩市公認萌えキャラクター「碧志摩メグ」の公認撤回を求める署名活動」という2つがあり、とりわけ波紋を呼んだのは、後者のインターネット署名です。

 この署名は、インターネット上で、計7000人以上の賛同を得て、志摩市に提出されました(志摩市に提出する段階では6936名分とのこと)が、この署名文や、署名文に寄せられたコメント、そして明日少女隊がホームページ上で掲げたステイトメントは、萌えキャラを性犯罪を助長するもの扱いしたり、萌えキャラそのものを児童ポルノとして扱ったり、オタク的な欲望そのものを蔑視する、オタクへのヘイト感情がにじみ出ていると取られても仕方がないものでした。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」