連載

萌えとポリティカルコレクトネス、或は、欲望の表象の問題

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 「後継者不足の志摩市の海女さんを応援すること」をキャラクター制作の意図としていたにも関わらず、海女さんたちに一度もヒアリングをしていなかったなど、志摩市側の明らかな落ち度もありました。その後、海女さんらの署名提出後は、署名の要望を取り入れた露出を抑えたイラストを制作したり、建設的な話し合いによって歩み寄ることが模索されました。

 他方、明日少女隊の署名は、志摩市での海女さんと行政の取り組みを広く周知する効果はありましたが、誇張した表現によって、オタクの表現を性犯罪の助長扱いし、萌えキャラそのものを児童ポルノであるかのように扱い、女性や子供への差別解消を訴え、行政に対してジェンダー専門者の介入を求める提案をしています。

 自分たちを差別しながら行政への介入を求めるような動きをする団体に対して、オタクたちが怒るのは無理がありませんし、これに対して明日少女隊が行ったアクションは、「オタクとフェミニズムは両立する」と殴り書きしたようなプラカードを持つ写真をSNSに投函することや、「オタクが『オタク文化は女性の権利を尊重する』というメッセージを発信できれば、多くの(オタクへの)偏見は改善されるのではないかという答えにたどり着きました。」というメッセージでした。

 オタクに対する差別や偏見を助長するメッセージを多数発信しておきながら、「自分たちに与するならば存在を認めてやる」ともとれる高圧的かつ上から目線な行動をしているのですから、これでは、オタクと、「明日少女隊」のような、フェミニズム的なものとの溝は深まるばかりです。こうした経緯があったことから、今日のインターネットのような、ポリティカルコレクトネスにまつわる「オタクVSフェミ」の構造は、碧志摩メグ騒動が発端と言っても過言ではないのです。

 「碧志摩メグ」「のうりんスタンプラリー」「おっぱい募金中止署名活動」そして、「オリンピック閉会式の渋谷女子高生映像」など、萌えやオタク、表象が孕む欲望とポリティカルコレクトネスの問題は、日々議論されていますが、“炎上”のように、加熱するだけ加熱して、建設的な議論や対案がでないことも多いです。

 絵画やイラスト、映像は、時に文字よりも情報圧縮率が高く、連想ゲームのように様々な解釈を促します。例えば、「バナナ=黄色/すべる/甘い」といったな連想例がありますが、「バナナ=黄色」「バナナ=すべる」「バナナ=甘い」は全て「バナナ」から連想できる事実ですが、「黄色」と「すべる」は特に関連がない別の情報で、「バナナは甘くて美味しい」という情報を、「バナナは滑るから危険」と読み取ることや、「バナナは滑るから危険」という情報を「バナナは黄色い」と読み取ることは誤りです。ある「バナナ」の表象に、「バナナは甘くて美味しい」「バナナは滑るから危険」「バナナは黄色い」という情報が複合的に入っているのであれば、その割合や意図を複合的に精査していく必要があります。

 ラジオ番組を通して、こうした行き違いや齟齬やお互いの偏見からはじまるインターネットにおけるオタク表象とポリティカルコレクトネスにまつわる溝について、少しでも建設的な議論が出来たらと思っています。

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柴田英里

現代美術作家、文筆家。彫刻史において蔑ろにされてきた装飾性と、彫刻身体の攪乱と拡張をメインテーマに活動しています。Book Newsサイトにて『ケンタッキー・フランケンシュタイン博士の戦闘美少女研究室』を不定期で連載中。好きな肉は牛と馬、好きなエナジードリンクはオロナミンCとレッドブルです。現在、様々なマイノリティーの為のアートイベント「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」の映像・記録誌をつくるためにCAMPFIREにてクラウドファンディングを実施中。

@erishibata

「マイノリティー・アートポリティクス・アカデミー(MAPA)」