いささか芝居がかっているようにも思えるが、工藤は自身に批判的な記事によく目を通していたようだ。ジャニーズ事務所を出れば「干される」という通説にも「騒動で誰か干されてる人がいますか?」とNOを唱えている。しかし一方で、工藤の考えとして表明されたものは、これまで彼女に批判的な記事で書かれていたものと同じだった。独立すれば(移籍ではなく個人事務所の設立を意味しているのだろう)一時的に収入は増加するとした上で、「でも、仕事ってそういうものじゃないでしょう? 人と人のつながりで人間は生きている。私はそう思います」。
決定的だったのは、「(他のメンバー)4人の方々がどうお考えなのか。それぞれの価値観の問題です。なのに、どうして私たちが”裏切り者“呼ばわりされなきゃならないの!」という言葉。人と人のつながりで生きているからこそ、深いつながりのあった飯島氏と共に事務所を出ようとしたメンバーたちと、人と人のつながりを重視して事務所残留を表明した木村(および工藤)、この「人」が誰を指しているかが違っただけなのかもしれない。
それにしても工藤静香が「木村静香」を名乗ったことには驚きだ。もちろん彼女は木村拓哉の妻であり、プライベートで木村静香であることは当然である。だがそれを公にせず、「妻として」発言することもなく、木村拓哉のスター然としたイメージを保つために影に隠れざるを得なかったのも事実。すべては木村のイメージを守るための飯島氏の策だったといわれるが、そのように抑圧されてきたことは、工藤にとって苦痛だったのではないだろうか。スターの妻なのだから仕方ない、と割り切ってきたかもしれない。しかし何しろ彼女だって一世を風靡した歌手なのだ。この騒動を機に、つまり飯島氏の退社を機に、工藤が「木村静香」であることを表に出し始めたことは、彼女の反乱であると見ることもできる。木村拓哉の「キムタク」というイメージを守るために尽くすだけが賢妻ではない。今後の工藤の活動にも注目していきたい。
(清水美早希)
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