
かのWELLEDAでも実践している農法
自然派もていねいな生活派もハイソな意識高い系も、皆大好き〈オーガニック〉とは、有機栽培によって生産された農作物、またはその加工品のこと。〈農法の特徴であり特別体にいいわけではない〉などの突っ込みどころは多々あるものの(ご興味ある方は過去の記事「オーガニック=安全、中国産=危険は真実か? 食の専門家がズバリ答えます」も是非ご覧くださいませ)、なんとなくいいことしている気分になれたり、ブランド的なおしゃれさといった魅力は理解できます。ところが同じ有機栽培の中には、〈バイオダイナミック農法〉という、どっぷりスピリチュアルで理解不能ものがありました。
Wikiをチラリとみるだけでも、かなりおなかいっぱい。作物を育てるための〈調合剤〉のひとつには、根を強化させるために〈雌牛の角に糞を詰めたもの〉を使うようです。その一部を引用してご紹介しましょう。
“牛の角は、その中に詰めた材料にフォースを受け取り、濃縮する特別な力があるとされる。たくさんの胃袋を持つ牛は強力な消化力を持つが、そのエネルギーは角に阻害され体外に抜けることができず、角にエネルギーが集中しており、また角には宇宙のエネルギーを漏斗のように集める効果があるのだという。冬の地中では精神の世界とつながりあう生命活動が活発に行われるため、角に糞を詰めて冬に地中に埋めておくと、冬の間の高次の生命が角を通して牛糞に注がれる”
胸やけがはじまるのでこのへんで中断しておき、雰囲気だけ味わっていただけましたでしょうか。不思議なのはこれらの調合剤だけでなく、農法のベースとなる〈思想〉です。
創始者は、教育者として有名なあの人
宇宙の力を土壌に呼び込み、さまざまな天体の作用を農業に生かすべしというのですから。太陰暦・占星術に基づいた「農業暦」で種まきや収穫を行い、前出のような牛の角や水晶などを土に巻くという手法は、なんとなくホメオパシー療法を思わせます。しかも満月など定められた時刻に土に入れるというので、ほとんど魔術!?
このバイオダイナミック農法の創始者は、日本では教育思想家として有名な、あのルドルフ・シュタイナー氏です(「シュタイナー教育」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう)。氏の提唱する教育、医学、農業はすべて神秘主義的な思想体系(アントロポゾフィーや人知学とも言う)に深く根付いているため、疑似科学や新興宗教、オカルトなどと批判されることもあるよう。特にシュタイナー教育の信者は、ワクチン接種を否定する傾向があるため、過去には麻疹(はしか)のアウトブレイクがシュタイナー学校から始まった事件があったことも大きいでしょう。
さて、農法のほうはファンタジーな魔女マンガあたりに出てきそうな不思議な世界ですが、今でも一部で実践されているというから驚きです。オーガニック系のコスメやビオワインの世界ではそこそこ認知度があり、かの有名なヴェレダもバイオダイナミック農法の自社農園を持っているのだとか(トップ画像参照)。ヴェレダ、そこそこ好きだったのにな~とちょっぴりショックな気持ちが湧きあがってくるのは、スピ的なものに苦手意識があるから?
しかしワインやコスメは加工される過程が山ほどあるため「これの原料はバイオダイナミック農法でございます」と言われても、よく分からないのが正直なところ。でも、農業そのものを見学するのはなかなかのハードルが高く……ということで、まずは手軽にバイオダイナミック農園直営のカフェなるものへ行ってみたのです。