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自分の病気、自分が主体となって治したい。あの子がついに、心を決めた日

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大和彩

病気なりに、健康に暮らす。

プロジェクトYSJ 出張報告書【17】

 先日発足した「プロジェクトYSJ(夢子に精神科を受診させる)」の続きですうつ。これまでの報告については、こちらをご覧いただきたいうつ。前回、前々回ではなぜ『精神病院に薬漬けにされるし精神病は治らない』という都市伝説が存在するのか? という点をうつりんと夢子なりに推理したうつ。今回は日本ではなぜ患者やその家族が精神病を隠したがるのか? という点について考えてみるうつ☆

うつりん「精神病院に対する差別や蔑視の根拠となっていた恐ろしい法律が、もうひとつあるうつ」

夢子「なになに?」

優生保護法というおぞましい歴史

うつりん1948年に制定された優生保護法という法律があるうつ。精神障害者や遺伝性疾患、ハンセン氏病などをもった人たちに優生手術(卵管を縛るなどして妊娠できないようにする手術)や人工妊娠中絶を強制できるようにした法律なんだうつ。これは、1996年に優生保護法が母体保護法に改正されるまで続いたうつ」

夢子「なんだそりゃ……? おぞましいの一言なんだけど……。日本にもそんな法律があったなんて」

うつりん「明治時代の呉秀三(くれ・しゅうぞう)先生の努力が実って、1960年代になるころには日本には精神病院は急増、入院患者数は倍増したんだうつ。けどそうなったらそうなったで、今度はなんでもかんでも入院・隔離! の風潮が高まってしまったうつ。そういった施設では、月経や妊娠があって手がかかるからといって、女性入院患者の子宮の摘出が半ば公然とおこなわれていたうつ。ちなみに子宮の摘出は優生保護法のもとでも違法なんだけど、それを許してしまう社会の風潮があったんだうつね。1989年に岡山・北海道・青森などで精神障害の女性の子宮が、摘出されていたということがわかったうつ」

夢子「1989年なら私もう生まれてたよ……。私宅監置されてた女性が経血のついた服をそのまま着せられてたもショックだったけど、これもひどい……

障害者は生まれてくるべきではない?

うつりん「優生保護法では生殖を不能にする手術は、本人の同意がなくても家族と優生保護審査会の決定があれば実施できたうつ」

夢子「ここでも患者本人より家族の意見が大事にされてる!」

うつりん「この法律は『障害者は生まれてくるべきでないし、子どもを産むべきでもない』という考え方が大問題だったうつ」

夢子「精神病だと知れたら優生手術されてしまうかもしれない法律があるんだったら、そりゃあ必死で自分の病気のことも精神病院への通院も隠すよね。もし精神病院に行って治ったとしても、受診したこと自体隠さなきゃいけないだろうし。それが1996年まで続いてたとは……。だから私のなかにも『もし自分が精神病だったら、それは隠さなければならない』っていう考えが無意識にあったのかもしれない!」

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』