インタビュー

オリエント工業の精巧ラブドールは、人間の女体とどう違うのか

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140cmのプチサイズでも大きく感じる理由

――プチサイズの「ジュエルリアルテイスト」というシリーズは、身長が136㎝と146㎝なんですね。数字だけ見るとすごく小さい、まるで子供のような印象を受けますが……。

製造 人間の140㎝ってすごく小さく感じますけど、ドールとなると物体としての存在感が強いので、実際よりも大きく感じるんです。だから、ホームページや、カタログをご覧になった段階のお客様に「もっと高い身長のものはないの?」と聞かれることもありますが「一度ショールームに足を運んでください」とお伝えしています。数字のイメージよりずっと大きいです。ショールームで実際に見て、感覚をとらえていただきたいと思います。

――では、人気商品の「Ange」シリーズは157㎝ありますが、迫力があるのですか?

製造 大きく感じるとは思います。これ以上身長が高くなってしまうと、存在感が強くなりすぎてしまうかもしれないですね。

――ちなみに「Ange」の体重は何kgなんですか?

営業 26㎏くらいです。生身の女性に比べたら全然軽いですよね? でも、実際に持ち上げようとすると、お客様は重いと感じるはずです。よく体重の問い合わせもいただくんですが、「26㎏です」とお伝えすると「持てる」と思うみたいなんですね。「重さと形状」ってすごく関係があって……例えば20㎏くらいだったら、普通の男性だったら持てると思うでしょうが、では同じ20㎏の事務机を1人で持ち運べと言われたらなかなか持てないじゃないですか。そういう理屈なんです。だからあえて、「ラブドール」は実在の人体よりコンパクトにまとめている部分はあります。50kgあったら、とても持てません。

――でも、「ラブドール」を求めている方は、リアル感を求めているわけですよね?

製造 僕たち人間は、目の前の人を見るときに数字で見てないじゃないですか。この人はこの部分が何センチだから好き、とか嫌い、とか。スケール感って、感覚に委ねてる部分が大きいと思うんです。今も、中の骨格から全て素材の改良を重ねて、かなり軽量化をして26㎏くらいなのでまだ重いのですが……15㎏くらいになったら多くのお客様に本当に喜んでもらえるんじゃないかなぁって思いますね。ただ、それを超えて5kgとか、軽すぎてもリアル感が失せて違和感を感じると思います。

営業 あと、ドールたちは日本人にしてはかなり胴が寸詰まりなんですよね。足が長くて、すごくスタイルよく作っている工夫をしているので、リアルといえども人間の女性とは全然違います。

――ドールの胸を見ても、バストの大きさとアンダーの細さが通常の人間じゃなかなかいないサイズですよね。

営業 そうです。だからみなさんドールに着せる下着選びは大変みたいです。「何カップ買ったらいいか」という問い合わせは時々いただきます。我々も合う下着を探すのが大変なくらいですから、その辺はお客様に率直に「私たちも苦労してますよ」とお伝えしています。でも、下着選びもこういうドールを使っていく上での楽しみとして思ってくだされば嬉しいです。

作業中の工場内では「ラブドール」のボディがずらり

シリコン注入とボディメイクが終了したドールたち

シリコン注入とボディメイクが終了したドールたち

 ――それでは、人気ナンバーワンの「Ange」のボディに触らせていただきますね……ものすごい滑らかでサラサラ・スベスベして柔らかく、指をじっと当てていると何だかぬくもりを感じます。ただ、もっちりした質感で、人間の肌とはやはり全然別物ですね。このオッパイ部分はヌーブラみたいな触り心地ですね。

製造 そうですね。胸の部分は、製法的にはヌーブラと近いです。

人間の女(アラサー)の肌と、ドールの肌の質感の違い

人間の女(アラサー)の肌と、ドールの肌の質感の違い

――指の関節部分が曲がるドールもありますが……指先にまで骨格が入っているんですか?

営業 これは、オプションで入れることが出来ます。本来これらのドールは、性的な使用が目的ではあるんですけども、写真の被写体、観賞用として使用される方も増えてきて、写真を撮る時に、指のポーズが出来ると表情が全然違いますよね。お客さまからの要望もあって指先にも骨格を入れるようになったんです。骨格を入れないままだと、軽く手を広げた状態です。曲げた状態でキープは出来ないですね。

指にも骨格を入れることで色々なポーズで楽しめます。(「オリエント工業」HPより)

指にも骨格を入れることで色々なポーズで楽しめます。(「オリエント工業」HPより)

――手のひらとか足の裏などのシワ・カーブも本当に繊細かつリアルに作られています。足の指は、親指と人差し指の間以外はくっついていますが、1本ずつ離さないんですか?

営業 離すことも出来るのですが、まとめておかないと耐久性に難が出てしまうので、このような造形にしています。昔の製品は、足の指は全部くっついていたんですけど、今販売しているもののように、親指と人差し指の間を離しておくと、サンダルや下駄を履かせたり、足元の楽しみも増えます。

――細かい部分までくまなく見たくなっちゃいます。脇の下も見ていいですか?

製造 実は、ここはシリコン製の弱点なんですけど……、シリコンってかなり収縮性がある素材ですが、脇をあまり広げすぎるとシリコンの限界値を超えてしまうんです。だから、バンザイは出来ないんですよ。

――なるほど。肩のちょっと下くらいまでですね。ひとつ気になったのは、ボディが汚れてしまった場合、綺麗にするにはタオルで拭き取るくらいで良いのですか?

営業 通常は柔らかい布で優しく水拭きする程度で良いのですが、汚れがひどい場合は、シャワーで洗い流すことも可能です。ボディと頭部の間に接続金具があるのですが、ここが水に浸からない程度でしたら浴槽につけても問題ないですよ。

陰毛は、一本一本手作業で植えて(縫いつけて)いく。毛量も色合いも選べます。

陰毛は、一本一本手作業で植えて(縫いつけて)いく。毛量も色合いも選べます。

 (撮影/細谷聡)

◆後編は……シリコン注入をして出来上がったボディにメイクを施す「ボディ仕上げ」と表情を完成させる「頭部メイク」の方々にお話を伺います。

後編:皮膚の赤み、陰影、シワも再現。繊細な職人技が光るラブドールの「仕上げ」とは?

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取材協力:「オリエント工業」HP
https://www.orient-doll.com/

 

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