〈子宮の声〉は魂の欲求であり、そこに本当に幸せになれるヒントが隠されていると主張する子宮系女子たち。膣にパワーストーンを挿入する〈ジェムリンガ〉から始まり、〈お金大好き教〉に転じ、高額な〈セッション〉や〈資格商法〉で信者からのお布施を回収するシステムづくりはひと通り設置し終わったのでしょうか。
お次の展開は、続々と出版物が世に出回りはじめました。彼女たちが個人で講演会的な集いを開いたり、サロンや協会を作ったりするのはさておき、〈自分自身にYES!を出そう〉というキラキラワードで女性を応援する体裁で、その実は、女性のココロとカラダに全く優しくないものを、出版物として版元ってどうなのよ~的な疑問が湧きあがってきます(お約束の「ゴシップサイトのお前が言うな」ですけど)。
しかし出版物という形にしたことで、編集者が整理したりライターがリライトしているなど多少なりともプロの手が入っていると思われますので、子宮系女子たちが直接発信するブログなどよりは、はるかに読みやすくなっているのは確かです。それと同時に毒気が薄まり子宮系女子たち特有のアブナイ万能感が伝わりにくく、面白みに欠けるとも言えますが。でも、広く浅く教えを広めるにはもってこいの方法でしょう。
まずは、「一般社団法人 日本性愛セラピスト協会」なるものを立ち上げた子宮系女子・田中みっち氏が、10月頭に出版した新刊から見ていきましょう。
もしかして、自費出版?
田中みっち氏が世に送り出したのは、親の呪縛から解き放たれて自立し、パートナーと幸せになるためには〈性愛のパワー〉が必須であると説く『姫婚ノススメ~ママより幸せな結婚をする方法~』(ポエムピース)です。
Amazonの内容には〈今、全国で大人気の性愛セラピスト田中みっち待望の初書籍〉とありますが、この版元をネットで検索すると自費出版の原稿を募っているので、身銭を切って出版された可能性もありそうです。話題にはなっているものの、大手が企画に乗るほど子宮系女子の需要は高まっていなかったか~と少しホッとさせられます(真偽はどうかわからないけど)。
同書は〈親から精神的に自立をしないと、幸せな結婚につながる真のパートナーシップは得られない〉という主張が核になっています。精神的に成熟して自分軸で生きるためにはタブーを捨て(子宮教の常套句)、親の観念や社会の常識から抜け出すこと。そのためにセックスのパワーを使いこなしましょうとのことです。
ところで、〈自由で幸せな結婚をするには、親からの精神的自立が必須。それに必要な性を謳歌するには、タブー感を超えるべし〉というアドバイスが出てくるのですが、自由自由と謳いながら〈結婚〉にこだわるのはなぜでしょう。パートナーシップを手に入れて幸せに生きるには、結婚以外の形があってもよさそうなものですが、〈結婚したくないと思うのも、母親から受けた影響〉なんだとか。
これこそが〈女の幸せは愛し愛される結婚にある〉という、みっち氏のクラシカルな価値観だよな~。同書のプロローグは小説のような文体で、さまざまな女性のエピソードが紹介されていきますが、これが80年代トレンディドラマを思わせるテイストで、思わず「なんとなく懐かしい!?」と笑ってしまいました。ひと昔前の感覚が、しみついているのが、そんなところにも表れていると思います。