
Photo by Marina Spektr from Flickr
K-POPアイドルを追いかけて韓国で暮らし始める日本人女性は多い。20代、30代、中には50代の主婦というのも珍しくない。彼女は「ピニのホヤ君が好きすぎて……」と、日本に旦那と大学生の子どもを残し、この夏から半年間、語学留学している。あ、「ピニ」とは、人気アイドルグループ「INFINITE(インフィニット)」の愛称、ホヤ君とはダンス上手な22歳のメンバーのことね。
10代の韓国人ファンに混ざって毎日毎日サイン会や番組観覧に出かける、最初のころはそんな追っかけライフが楽しすぎて、「韓国に来てよかった~」と満足していたはずのに、女ってやっぱり欲張りさん。3カ月もすると、「もっと近くで会いたい」「私のことを知ってもらいたい」「みんなとは違う特別ルートで会いたい」と欲が出て、「海外生活の恥はかきすて!」と言わんばかりに、あの手この手でお目当てのアイドルに近づこうと奮闘する。
大阪出身、29歳のマユさんは、韓国留学歴1年。森三中の村上知子を少~しほっそりさせたような彼女は、ひと言で言えばお笑い系。韓国人相手にも体を張ったボケを連発し、居酒屋では誰とでもすぐに友だちになれるが、韓国に来て男性と付き合ったことはない。と言うか、日本でも交際歴ゼロ。そんな彼女が夢中になっているのが、2年前にデビューした某6人組グループのメンバー。
「韓国で追っかけしてる日本人ファンは、やっぱり目立つんですよね。サイン会に行くとメンバーが覚えていてくれたり、私が教える前に私の名前を書いてくれたりもしました。でもそんなことされると欲も出るし、期待もしちゃう。もしかしてカレも私のこと気になってるのかな? って」
カレに近づくため、彼女が考えたのはマネージャーに取り入ること。「日本人だからきっとむげに扱いませんよね」――でもこのマユさんの計画、少々予想外の展開となっていく。
マユさんはメンバーに同行するマネージャーBに、自分の電話番号を書いたメモと日本のお菓子をプレゼント。Bは彼女をむげに扱うどころか、すぐにメールで「よかったらご飯でも食べに行きましょう」と誘ってきた。向こうがマネージャー仲間ふたりを連れてくると言うので、マユさんも留学仲間に声をかけ、最初は6人で食事。その日以来Bから頻繁にメールが来るようになり、1週間後にはふたりきりで飲みに出かけた。
「Bは同い年。マネージャーというよりは、どちらかといえばドライバーのような役割だったみたい。見た目は普通。みんなで飲んだときは口数が多かった気がしたけど、ふたりになると、ほとんどしゃべってくれなくて。私がメンバーのことを質問しても、答えはどれもこれもあっさり。会話が盛り上がらなくて……。そうこうしながら焼酎を2本飲んだらふたりともかなり酔っちゃって、気がついたら正面に座っていたBが隣にいたんです」。
太ももをスリスリされたり、髪を撫でられたり、Bのスキンシップ攻撃に、「嫌じゃなかった」とマユさん。「酔ってなかったら驚いたかもしれませんけど、なんだか気持ちよくて」。でもその日はそれで終了。居酒屋を出てふたりはそのまま別れた。「ホテルに行くのかなって期待したけど、あっさり別れたんでちょっとびっくり。家に帰ってから何度かBに電話しても出てくれないし、メールで『会いたい』と送っても返事はありませんでした」。マユさんはそれから1週間、Bにメールを送り続けるが、返事はいっさいなかった。
いつの間にかメンバーのことよりも、マネージャーBに夢中になったマユさん。彼からようやく返事が来たのは、居酒屋デートから2週間後。仕事で忙しかったという彼と、前回と同じ居酒屋で再会した。
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