
Photo by mdiepraam from Flickr
ヴィジュアル系、野球二軍選手、そしてお笑い芸人……全戦全敗の処女が、それまでの過酷な戦いから一転、秒殺で初勝利をもぎ取ったのは、バイト先である激安回転寿司屋の同僚のFラン大学生でした。
天下一武道会で、それまで動きがにぶかったのは実は重いリストバンドなどをつけて戦っていたからで、外したとたんに「うっひょーー」と言いながら何メートルも上空に飛び跳ね、軽やかに対戦相手を倒した孫悟空(子供時代)のごとく、処女という名の重りを外した私は、雑魚でもボスの腰巾着でも(ボスはまだ分不相応)、対戦を挑み全戦全勝。
ですが、やはり有名人との対戦を望んでいますから、雑魚と対戦しても手応えがなくつまらないもの。オラ、強えぇ奴と戦いたいんだよ!
そんなとき出会ったのが、プロデューサーGでした。
プロデューサーって、テレビの? いえいえ、どうやら違うらしいのです。とにかく肩書は“プロデューサー”。さらにまたの名を、“カルチャークリエイター”といい、事務所は原宿のど真ん中、いわば聖地にありました。
「◯◯の立ち上げに関わって、当時、◎◎たちに××を流行らせたのは俺。▼▼のヘアヌード写真集をプロデュースしたのも俺。今作っているのがコレ、△△。キミも関わらせてあげるよ」
ちょっと何言ってんのかよくわからないのですが、キャップのナナメかぶりが妙に似合うオシャレっぽさと、みなぎる自信で、「もう! 今すぐ抱いて!」と自動的に言ってしまいそうな雰囲気を持ったオッサンでした。
実際Gは、「この子もヤッた、この子もヤッたよ」と、原宿を我が物顔で歩いていそうなオシャレ顔の女の子の、一戦交えたあとっぽい写真を見せてくれました(それがまたオシャレな写真で、トイレットペーパーがむき出しになる、カバーなしホルダーがあるトイレで、上半身はスポブラ一丁、下半身はヘア丸出しで、便器にまたがりタバコをくわえて気だるげにこちらを見ている写真等)。
芸能人でもないのに、ただの小デブのオッサンなのに、このヤラなきゃ損な雰囲気は一体なんなのでしょうか。
そのときはわかりませんでしたが、のちに彼の名前を特定の界隈では頻繁に目にするようになったことで、「彼もまた一種の有名人なんだ」と理解するにいたったのです。
へええ、コレ、食えるんだ! 高級グルメではないけど、コレが「美味しい」と言えたらなぜか「分かってるじゃん」ってツウたちから一目置かれるような、B級グルメなんだ! そうか、そうだったのか! ――そんな感覚です。
そうとわかれば、彼らのようなB級グルメたちの出没スポットに行くのみです。が、これが難しいんですよ。ヴィジュアル系や芸人はライブ会場に行けば会えるし、野球二軍選手は二軍球場に行けば会える。ですが、彼らのような男たちは行動が読めない。今だったらSNSで自らどこで何食ったとか誰とよく遊ぶとか情報公開しているでしょうが、その当時はクチクミか地道に人脈を広げていくしかありません。カルチャークリエイター系ならばクラブに行けばいそう、と今ならわかりますが、当時はそんな事情もわかりませんでした。漠然と会おうとしても、会えない、まるで霧の中で実態のない影に手を伸ばしているような気分です(まあそもそも、彼らに実態がないからなんだけど)。
では、どうすればよいのか?