サークルクラッシャーを「既読スルー」したら?
ライトノベル『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』(著:秀章、イラスト:R_りんご、角川スニーカー文庫)が今月初めに発売され、話題になっている。当連載で、5回もサークルクラッシャーについて扱ってきた筆者としては、なんとしても一読せねばなるまいとの使命感から、さっそく手に入れてページを捲ってみた。
舞台は、「七氏族軍資」と呼ばれる伝説の秘宝を追い求める冒険者たちの時代。「軍資に一番近い」とされる旅団(サークル)のメンバーたちが、とあるダンジョンで巨大な結晶の封印を解いたところから、物語が始まる。結晶から現れたのは、金色の髪がなびく美少女・クリスティーナだった。クリスティーナは記憶喪失であり、その記憶を取り戻すため冒険をともにすることになる。しかし、彼女の存在によりメンバーの間に亀裂が入るようになり……。
最強の旅団と呼ばれ、屈強なモンスターでも容易く倒すメンバーたちも、サークルクラッシャー・クリスティーナの前では無力に等しかった。次第にメンバーたちの心はバラバラになっていってしまう。
こんな場面もある。自分への気持ちを確かめようとする白魔道士に対して、クリスティーナは優しさや読書家といった魅力をあげ、「それに……私のこと好きですよね? ですから、好きです」とあっけらかんと話すのだ。つまり、彼女からしてみれば、「旅団のメンバーが私のことを好きだから、私も好きになった」という理屈が成り立つ。これでは、どちらがサークルクラッシュの原因を作ったのかわからなくなってしまう。さんざん思わせぶりな態度を取っておいてそれはない、と思わないでもないが、彼女の言葉はサークルクラッシャーのある一面を浮かび上がらせている。
サークルクラッシャーを語る際は、「女=加害者」という側面だけに焦点を当てられがちである。しかし、ことが恋沙汰である以上、必ず「相手」の存在が必要不可欠だ。相手の存在なくしては、恋沙汰は発生しないため、サークルクラッシュは成り立たない。となれば、サークルクラッシュの原因を女側だけに求めるのはフェアでないし、検証としては不十分である。
サークルクラッシャー問題を扱うシリーズの一区切りとして、今回はこれまで注目してこなかった男側の問題を含め、サークルクラッシャーが発生してしまう構造について考えていく。