
星野源『恋』
みんな大好き新垣結衣の主演ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)に出演し、知名度と好感度を爆発的に急上昇させた星野源(35)。今後、CM出演本数も増えていくだろうし、音楽の分野でも新たなファンを相当数獲得できたはずだ。
星野の活動歴は長く、役者としては2003年夏に放送されたドラマ『WATER BOYS』(フジテレビ系/山田孝之主演)に出演したのがドラマデビュー。その数年前に結成していたバンド「SAKEROCK」のCDデビューも同年で、以降、役者としては劇団大人計画に所属、ミュージシャンとしてはカクバリズムに所属してきたが、昨年、バンド解散を機に大手芸能事務所アミューズがマネジメントをするようになり、仕事の幅が一気にメジャーに広がった。それまでも勿論、人気のある役者でミュージシャンだったし、『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK)での「うそ太郎」などコント演技の評判も高かったわけだが、市場規模がぐっと巨大化したということである。
アミューズは佐藤健や三浦春馬、野村周平といった若手俳優、深津絵里や富田靖子、吉高由里子のような実力派女優、サザンオールスターズにPerfume、ONE OK ROCK、BABYMETALなど音楽アーティストまで数多くのスターを抱えマネジメントしている。星野の売り出しでは、ドラマ主演&主題歌も担当という福山雅治方式をうまく踏襲し、大ブレイクに導いた。さらに福山の敷いた道をいくというか、ラジオ「オールナイトニッポン」レギュラーも今年から始まっている。福山以外のイケメン俳優たちがいまだに「自慰なんてしません」的な澄ました顔で売らざるを得ないのに対して、「元グラドルのAVデビュー作品が素晴らしかった! めちゃくちゃ可愛かったし輝いていた! 男優の布陣や丁寧な撮り方から制作スタッフの意気込みが伝わってきた!」等々アツく語ることが出来るのもまた強み。ともかくアミューズ移籍からわずか一年足らずで、あっという間に見事な大ブレイクを果たしてしまったわけである(繰り返すが、もともとの人気も実力もあったうえで、ほんの少しの戦略が後押ししただけともいえるが)。
さて、では星野源本人はどのような虚像を築き、維持したいのだろうか。押しも押されぬトップスターの地位に着きそれを堅守したいのかというと、パーソナリティ的にも時世的にもそうした在り方はハマらなそうだ。実は音楽の面ではもう日本武道館公演も全国ツアーも紅白歌合戦出場も経験済み。主演映画もやっているしNHK大河ドラマにも朝ドラにも出演した。ほとんどのタレントが熱望することを大体こなしてからの大ブレイク、という不思議な順番だ。つまりこれは、イチからタレントを育てゴリ押しするよりも、ある程度成熟した人材を「ほんのちょっと押す」ほうが効率良く収益を上げられるのではないか……という、芸能界の身も蓋もない話でもある。しかしそうそう簡単に成熟した人材を入手することは出来ないため、基本的には大金を投資して長期間の若手育成とゴリ押しをせざるを得ないわけだが……。さておき、星野源の大ブレイクで、同じような動きを他事務所もすでに始めていることだろう。