前回は、米国の婦人科での診察の様子をお話ししたわね。今回は話を戻して、夢子のMRI結果についてお届けするわ。
* * *
医師の指示で血液検査とMRIを行ってから約1週間後、再び地元の婦人科に夢子はいたわ。夢子はどきどきしていたの。これで自分の痛みや不正出血の原因がわかる! と期待して、診断を聞くのが待ち遠しかったのよ。
「チョコレート嚢胞は一体どんな状態でしょうか? 子宮内膜症でしたか?」
夢子は医師の言葉をメモするためにペンを握りしめたわ。
「それがねぇ、よくわからなかった」
医師は机の前にMRI画像を貼り出して、そういったの。夢子はがっかりしてしまったわ。
(そんなのってアリなの?)
医師曰く、「3相性のピルを処方します」
それまで、MRIさえ撮ればどんな体の不調でも原因がたちどころにわかるものと思い込んでいたからよ。失望した夢子だったけど、医師の次の言葉で希望をつないだわ。
「症状からは子宮内膜症疑いと思われますから、とりあえずピルで様子を見ましょう」
婦人科を受診する前に、夢子はこんな一文と出会っていたの。
「臨床診断の(子宮内膜症)の場合は、最初に処方する薬は低用量ピルであるべきです。(中略)ただし、低用量ピルで『治る』わけではありません。やっと、八十年ごろの欧米の子宮内膜症の女性たちの薬物治療状況に追いついただけです」ーーp.233『あなたを守る子宮内膜症の本』(日本子宮内膜症協会著・コモンズ)
夢子は以前米国の婦人科でピルの服用を勧められていたし、その後、鍼や漢方を使ってみても症状の決定的な改善にはならなかったでしょう? 実体験と照らし合わせて、この文章がストンと腑に落ちていたのよ。だから米国の婦人科に行ったときとは違って、今回は自分からピルの処方をお願いしようと思っていたくらいだったの。
一瞬安堵しかけた夢子だったけど、医師の次の言葉に衝撃を受けたわ。
「『A』という3相性のピルを処方しますね」
(ピルでも3相性はアカーーーーーーン!)
夢子はペンを取り落としそうになったわ。ピルには1相性と3相性があるのよ。
1相性は体内の女性ホルモンの量が一定になるようにしてくれるの。対して3相性のものは、ホルモンの量が一定ではなく、服用していてもあえて毎月生理が来るように作られたお薬なのね。
「私は出血があると痛みが出るんです。それに女性ホルモンの量を一定にしてPMSなどもなくしたいですし、1相性のピルを処方していただけませんか?」
夢子はあえぐようにいったわ。