インタビュー

更年期を心地よく過ごしたい。40~50代の生と性に向き合う

【この記事のキーワード】
更年期

向き合います。更年期世代の生と性

いまの40・50代は若くなった。筆者、49歳。いや、なにも自分のことを言っているわけでは決してない。周りを見渡し冷静な目で眺めてみても、同世代の友人知人たちはほんとうにみんな若々しいのだ。 もちろん“お姉さん”と呼ぶのにはさすがにもう無理が生じるが、かといって“おばさん”と呼ぶのも申し訳ない気がするような女性がわんさかといる。ファッションもどんどんエイジレス化が進み、20代と同じようなコーディネートで街を歩く40代も少なくはない(その装いが似合っているかどうかはここでは置いておくとして)。

高機能化粧品にフェイシャルエステなど美容業界の日進月歩は目覚ましいし、なにより私たち、なにごとにも貪欲でアグレッシブないわゆるバブル世代には、<老けられない><老けてたまるか>という呪縛がどこかにあるようにも思える。「40代、50代の若さで老けこんじゃうなんてなにごと!?」的な、やや強迫観念にも近い想いが体の奥から突き上げ「もう老けたっていいです……」と弱気になる自分を叱咤してくるような気がするのだ。だから私たちは、まだまだ女を降りられない。時に疲れて「おっさんでもおばさんでも、もうどう見えたっていいわ」と思うこともあるけれど、エイヤッと気持ちを切り替えて日々を過ごしているのである。恐るべし、バブル世代。美魔女ブームも起こるべくして起こったものといえるだろう。

だが残酷なものだ。たとえば私たちの母親世代、いわゆる<昭和のお母さん>たちと比較すると見た目は格段に若くなったというのに、閉経の平均年齢とそれに伴ういわゆる更年期と呼ばれる年齢設定は、昭和の時代となんら変わらないのである。いくら外見が、肌や体型やファッションが若く見えようとて、人はやはりみな老いていく。そこはどうあがいても変えられないということだろう。

更年期といっても20~30代の若いmessy読者の皆さんには、まだぴんとこないかもしれない。更年期とは、簡単にいうと卵巣機能が衰えはじめ、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少する「閉経を迎える前後の期間」のことである。女性の閉経の平均年齢は50~51歳で、その前後にあたる45歳から55歳の10年間が一般的に更年期と呼ばれている。エストロゲンは肌や骨、血管、脳への働きが大きく、自律神経系にも作用しているため、減少すると全身に様々な症状が出てくるというわけだ。

20~30代に分泌のピークを迎え、40代に入ると少しずつ減りはじめるエストロゲン。そして40代後半になると順調に分泌されていたものが突然ガクっと少なくなる。そらぁどう考えても体調不良が起こるだろうよ、ということぐらい誰だって少し考えればわかるだろうに、更年期世代の女性を襲う体と心の不調について、男性はおろか、当の女性たちも理解に乏しい。更年期世代の女性が体調不良を夫に訴えたところで「暇だからだろ」と一蹴される、というのはよく聞く話しだ。働いている女性の場合、職場でほんの少しでも怒りの感情をあらわにしようものなら、周囲の人から「更年期だからイライラしてる」と半ば揶揄するように言われてしまう。

この世代の女性の体内でどんなことが起こっているのか、そしてその体調の変化にどのように対応すればいいのか。インターネットの普及で昔よりもアクセスできる情報は多くなり、該当世代も自らの更年期についてオープンに話す女性が出てきたとはいえ、まだまだ<そっと黙って我慢して通り過ぎるもの>という意識が当人にも周囲にも内面化されていないだろうか。

かくいう筆者も、48歳になった頃からそれまできちんきちんと28日周期できていた生理が大きく乱れ始めた。生理の乱れだけではない。それまでもライターという職業柄、腰痛・首こり・肩こりには悩まされてきたが、こちらの症状も一層ひどくなった。身体が重くって、これまで普通にこなせていたこと(たとえば、食べたらすぐに食器を洗うとか、急いでいる時は行列のできているエスカレーターを避けて階段をのぼるとか。あと、映画鑑賞とウィンドーショッピングが何よりの趣味なのだが、出かける頻度も少なくなってしまった)が、なかなかスムーズにいかない。まさに自分の身体の中で女性ホルモンがあがき暴れ回っているような、そんな感覚に襲われたのである。この不調は更年期だからだろうということはわかっているが、自分の症状がほかの人と比較して軽いのか重いのもかもよくわからない。なにか手を打つべきなのだろうか……考える日々が始まった。

ひとりひとり違う、更年期の症状

たとえば更年期の様々な症状を和らげるための治療法として、HRT(ホルモン補充療法)があることは知っているが、そもそもどのタイミングでHRTに踏み切ればいいのだろう。「乳ガンのリスクが……」という昔どこかで聞いた噂も少し気になってしまう。だが最近HRT治療を受けている女性から話を聞く機会ができたことで、この治療法に対する考えは大きく変わった。HRTは医療行為にあたるので、血液検査や婦人科検診を継続して受けることになる。つまりHRTを受けることで、自分の体の状態がいまどうなっているのかを定期的にチェックできるのだ。なるほど!「婦人科検診に行かないとな」と思いながらもついついさぼりがちな私のような人間には、もしかしたら一石二鳥といえる治療法なのかもしれない、といまは考え始めている。

日本でかつて盛んに言われていた「HRTは乳ガンになるから危険」という説は行き過ぎた報道の結果であったことも知った。たしかにHRTを長期間続けると乳ガンリスクはわずかに上がる。しかし国際閉経学会などの専門機関が再解析を行った結果、5年以内のHRTでは乳ガンのリスクはない、7年でも明らかなリスクは見られない、との報告があった。何より、ホルモン補充をしようがしまいが、ガンになるときはなるだろう。であれば、定期的な通院と検査をおこなっているほうが、いざ病にかかったとしても早期発見が可能で良いのではないだろうか。

ただこれも、自ら意識的に調べなければわからない情報で、おそらく周囲の同世代の友人たちもその詳細を知らない人のほうが多い。「HRTは乳ガンリスクが……」というそのひと言だけが、いまだ一人歩きしているのではないだろうか。また、ガンのリスクは高くないにしても、良い面と悪い面の両方を知ったうえで治療を受けるのと、良い面ばかりを過剰に信じてしまうのとでは、何かあったときの心構えが全然違ってくる。

いろいろと調べるにつれ、俄然欲が出た。色んな同世代の女性たちから話を訊いてみたい。女性であれば、個人差はあれど、なんらかの症状を自覚しているに違いない。きっと女性が百人いれば百通りの更年期症状とその対処法があるはずだ。十把一絡げでは語れないだろう。いったい皆さん、このキツイ時期をどのようにして過ごしているのか。そもそも生理がなくなることをどうとらえているのか。閉経した場合、それを夫や恋人、または女友達にも話すのか? そして、この世代のセックスっていったいどうなっている? そこにも変化は現れるのだろうか?

更年期の体と心の状態について私自身も学んでいきたいし、自分に合う治療法とはなにかを探っていきたい。更年期不調を抱えながらも日々を懸命に生きる同世代女性とその周囲の人たちにも、リアルな声と実情を読んで欲しいし知ってほしい。誰にもいつかは訪れることなのだから、もちろん若い世代にも読んでもらって、心のどこかになにかが残ればいいなと思う。

娘の立場からするとお母さんの性生活についてなんて知りたくないかもしれないけれど。でもお母さんだってひとりの女性なんだから、やっぱり色々あるわけですよ。だからね、どうか読んでください。

そんな想いから、スタートしたこの連続インタビュー企画「向き合います。更年期世代の生と性」。次回からは更年期世代の女性を迎えて、インタビューをスタートさせたいと思っている。

日々晴雨

都内在住フリーライター、独身。いくつかのペンネームを使い分けながら、コラム、シナリオ、短編小説などを執筆。コピーライターとして企業のカタログやHPなどのライティングに携わることも。