
SEXandtheLIVE!!/左から神田つばきさん、二村ヒトシさん、染矢明日香さん、たかだまなみさん、ト沢彩子さん、きのコさん
11月19日午後、東京は渋谷にて、女性が性に対して主体的になることを目指すプロジェクト「SEX and the LIVE」のキックオフイベントが行われた。「A-live connect(アライブコネクト)」代表のト沢(うらさわ)彩子さんを主軸に、ゲストにAV監督・作家の二村ヒトシさん、神田つばきさんを迎え、4人の女性アクティビストが「性をもっと平温で真面目に語れるようにしていこう」と語り合った。大事なことだらけの2時間だったので、その一部始終をお伝えしたい。
女性が常に客体だった時代
ト沢 「SEX and the LIVE!!」の責任者になります、ト沢彩子と申します。私は性被害の当事者として7年間、「NPO法人しあわせなみだ」というところで活動していまして、今年の8月に「生きるをつなげる」をコンセプトにA-live connectを開業しました。「SEX and the LIVE!!」では、「生きる」の中でも「性」の側面に焦点を当てています。みんな生きづらさを抱えてるんですよね、既存の概念に当てはまらなければいけないとかで。でも本当は、色んな生き方をしている人がいるはずで、性でも恋愛でもパートナーシップでも、概念に当てはまらない多様な人たちが実際はいるので、その人たちを繋げていけたらいいなと思っています。
もう一点、性被害の当事者として活動してきましたが、性を普通に語れる場が必要だという問題意識を抱えていました。なぜかというと、「性暴力」というと、暗くて堅くて聞きたくない、って思うじゃないですか。一方で性の話も性暴力も、エロの文脈っていうのがあって、過激なエロのイメージで、話すのに抵抗があるっていう人も多い。堅くて難しい話と、エロという娯楽コンテンツの両極。その中間をとりたいなと思って、「SEX and the LIVE!!」をはじめました。
きのコ きのコです。私はポリアモリーという、複数の人を好きになって、複数の人と同時に交際するというライフスタイルだったりセクシュアリティというか性質を持っている人間だと自認しています。それは不倫とか浮気とか人を傷つける形ではなくて、複数の人とオープンに交際するっていう生き方です。当事者として、ポリアモリーという生き方に興味のある人の集まり「ポリーラウンジ」の主催をしています。
たかだ たかだまなみと申します。私はダメ男が大好きなんですね。理性では好きじゃないんですけども、どうしても子宮がうずいちゃうという。年収規模でお金を搾取されたり、貴金属の全てを取られたりしてきました。「SEX and the LIVE!!」は4人中3人が中絶経験者なんですね。私は中期中絶といって、もう大きくなっちゃってるので、分娩する形での中絶になりました。それで心身ともに傷ついて……それまではちゃんと働いて普通の生活をしていたんですが、男性に依存しちゃって転落人生になって、この2年間はリハビリしてました。最近は、自分を株式会社にたとえて、私という株式会社の正社員・お婿さんを募集しますという企画をしてwebページを作ったんですが、それがYahoo!ニュースさんに載せていただいて、転じて今はライターをさせていただいております。
みんな色々あるんですけど、ダメ恋愛をし過ぎて、自分と向き合わざるを得ないというか、「嫌だ」って言っても「こっち向け!」ってせざるを得ない状況なんですね、じゃないと、本当に生きられない、っていうのがこの4人でした。そういう共通点があって今ここにいます。
染矢 「NPO法人ピルコン」で理事長・代表をしております染矢明日香といいます。たかださんが中絶の話をしましたが、私は20歳の頃に妊娠をしまして、どうしようか悩んだ挙句に中絶という選択をしたんですけども、それは本当にツライ経験でした。日本における中絶件数を調べたところ、出生数の5分の1の数ですね、今、年間約18万件です。20代で普通に恋愛をしたら、普通にセックスするけれど、でも全然、私自身が避妊のことを知らなかったし、「女性だから」すごく受け身でした。同じような女の子は多いんじゃないかと、これはちょっと危ないんじゃないかと思い、「ピルコン」を立ち上げて避妊啓発活動をしています。普段は事業として中高生向けに性教育の講演をしたりですとか、性について考えようというイベントをやってるんですけども、やっていく中で「学校教育って、当事者意識がない」と思うようになりました。そして教育の枠組みの中で講義しないといけないので、なかなか自分の本音を伝えられないっていう……私は中絶経験はあるけれど、セックスは好きだし、恋愛にセックスってコミュニケーションとして重要だと思います。それを素直に表現できないもどかしさがあって、ト沢さんに声をかけて、この企画がはじまりました。
NPO活動をやりながら、今は6カ月の子供がいまして、今日は預けてきたんですけど……でも一方で旦那さんと結婚する1年前くらいからセックスレスでセカンドバージンなんですね。で、出来ないなら仕方ないかなと思って、もっぱら性欲は自己処理でマスターベーションマスターを自負するくらいオナニー最高と思ってるんですけども、ただ、産後になって全然性欲がなくなっちゃって、それすらしてないんですよね。だから性の変化も面白いなと思って。
支援者とか教育者ってするとどうしても上から~みたいな、自分はなにもかも完璧って見せなきゃいけないかな? って感じになっちゃうんですけど、でも私は1人の人間として悩むことも傷つくこともあるし、それをみんなで考えていけたらってことで、ここに参加しております。
ト沢 このように「SEX and the LIVE!!」4人はみんな何かしらの当事者です。ではここから、二村ヒトシさんと神田つばきさんに登壇していただきたいと思います。
二村 二村ヒトシといいます。こんにちは。アダルトビデオの監督をやりながら、恋愛やセックスや、その最中の自意識についての本を何冊か書いています。女の人がアクティブに動くセックスが個人的に好きなので、そういうAVを主に撮影しています。簡単にいうと、必ず女優さんが男優の乳首を舐めるみたいなことですね。最近では男性がアナルを女性から責められてアナルを解放するビデオや、男性が女装して男と交わるビデオも撮っています。女の人が大好きで自分がセックスをしたくてAV業をはじめたはずなのに、なぜか気がつくと男のアナルを撮っていた……、そういう者です。
神田 はじめまして、神田つばきと申します。普通の家庭のお母さんだったんですけれども、38歳で子宮頸がんになって、自分がこのまま女性として求められないまま終わっていいのかなっていう疑問から、家庭を卒業しました。1番最初にやったことはまず就職ですけど、それと同時に縛りの研究会に行って「私を縛ってください」とお願いしたんですね。「いや、うちはビデオを回してるんで、大丈夫ですか?」と確認されましたが、ここでイヤだって言うともう一生縛ってもらえないと思って「いいです、カメラ回していいから縛ってください」って。今、問題になってるAV強要問題ってあるんですけど、私は逆に縛ってくれ撮ってくれの、逆強要問題ですね。
それからは、自分がエロに関わることで救われた部分が非常にありました。それは女性としてというのもあるんですけど人間として、ありのままの自分。単純に裸になるということじゃなくて、思ってることや感じてることをそのまま出しても、受け入れてくれる人がいるんだなって知ったときに、ものすごく楽になりましたね。
今はドラマもののアダルトビデオの脚本を書いたり、AVのモザイクってみなさんご存知だと思うんですけど、大事なムスコさんがニュッと顔出しちゃったりしないようにモザイクをチェックする団体があるんですよ。そこに人員を派遣するお仕事などをしています。今日は若いみなさんたちも性について色んなことを思ってらっしゃると聞き、お話を聞きたくて参りました。よろしくお願いします。