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セックスはエロい人だけのものじゃない、普通にみんながすることだ。セックスポジティブな女性アクティビストとAV関係者の語らい/「SEX and the LIVE!!」レポート

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母親由来の女子力

ト沢 お二人はそもそも、どのように「セックス」を知りましたか?

神田 私は中学生まで、「唾液で妊娠する」って母親から言われたことを信じてたのね。私、水泳部だったから心配だった。性交するんだってわかったのは、結構遅いですね、高校になってからかなぁ。高架下で男の子とキスした時に、感極まっちゃった彼が抜刀しちゃったんですよ、赤い犬のようなチンチンを。だから唾液じゃなくてそっちなんだ~って知りました。実際に挿れたのはハタチの時ですね。こんなにつまらないものかとガッカリしました。

二村 つばきさんて、セックスはお好きですけど、もしかして、あんまりペニスそのものはお好きじゃない?

神田 それ、よく言われるんですよねぇ。セックスは好きなんですけど、ペニスの形状はちょっと苦手。

ト沢 二村さんはセックスという行為を知ったのはいつですか?

二村 『がきデカ』って1970年代に大ヒットしたギャグマンガ、知ってる? 少年チャンピオンに連載されてたんだけど、子供なのに警察官の主人公が包茎のチンコを勃てて、狂ったセクハラをしまくるっていう。その作者の山上たつひこさんが、青年誌でさらにお下品なマンガを描いていたんですが、そこに出てくる「空飛ぶ円盤」の形状がマンコの形なんですね。おおらかな時代でした。それに衝撃を受け、小学生なのにずーっと授業中、ノートに、空飛ぶマンコの絵を描いている、そんなガキでした。あとは少女マンガの『風と木の詩』を女子から借りて読んでましたよ。それでオナニーしまくってましたね。貸してくれた女子には非常に申し訳なかった。

神田 女の欲望の文脈を結構わかってたんだ。

二村 わかってたっていうか……。もうひとつ、僕はよく書いてますけど、永井豪の『キューティーハニー』っていう作品があるでしょう。あれに出てくる「キューティ―ハニーに憧れて味方する男のキャラ」じゃなくて、キューティーハニーそのものになってたの、妄想の中で、自分が。強くてエロい女になりたかったの。そういうファンキーな性的イメージを幼少期に先に得ちゃって、いわゆる正しい性教育は受けぬまま老人になってしまいましたね。

ト沢 AVでは「セックスはこういうものだ」っていうイメージのバリエーションが少なくないですか? 本当はもっとみんな色々もっと性やセックスでもいろいろあるんじゃないかなと思うんですけども。

二村 そうですね。僕は男が女性に責められるAVを撮っていて、それを見てくれた人が「男が乳首を舐められてもいいんだ」みたいに思ってくれた。でも今って、それが普通になってしまっているんですね。

いわゆる「SFの浸透と拡散」と同じっていう話なんですけど、『スターウォーズ』や『ターミネーター』が人気になるまでは、SFってオタクのためのものだったんだけど。今はもうSF映画って「SF映画」とは呼ばれないじゃないですか。そういうジャンルが拡散しすぎて、特殊性が消滅してしまった。宇宙人が攻めてきて戦争するとか、ヒーローに変身するみたいな映画って、昔は普通の人は観ないマニアックなジャンルだったけど、今はハリウッドではメジャーな定番でしょう。

AVもそうで、僕らが10年前20年前に一生懸命考えて、もっとエロい性の形があるんじゃないかって提案したマニアックなものが、多くの人に受け入れられて一般的なものになって。その結果、今やデビューしたばかりの女の子が、教えなくても男優さんの乳首を舐めたり、いきなり電マを当てられたりしてるっていう。

問題は、そのことによってみんなが性にアクティブになればいいんだけど、つまり、女は男のお乳首を舐めていいんだよっていうことが広まることが、女性を楽に、自由にするんならいいんだけど、悲しいかな、メンヘラは増え続けている。「an・an」のセックス特集もそうだけど「男性に捨てられないための技術」みたいな話になってしまっている。性についての、型に嵌った平凡な物語が氾濫してて、女性がセックスがうまくなることが、ぜんぜん女性を生きやすくしていない。

卜沢 女子力の話にも通じてきますね。この間、女子力のことで炎上がありましたけど(参考:I LADY. 「新・女子力テスト」とニセ医学 ジョイセフ×電通「粉かけ罰ゲーム動画」の背景)、女性はこうあるべきだ、とか「女子力」って言葉自体が、押し付けになりやすいんですよね。女子力の文脈って2つあると思っていまして。ひとつは「男を気にせず自分らしくキラキラ輝いて手を抜かない!」っていう女子力。もうひとつが「男の人を喜ばせるモテの文脈」での女子力。

二村 前者は、自分のために綺麗になるってこと?

卜沢 それはそれで息苦しいんじゃないかなって思うんです

二村 それは、誰に見張られているの?

きのコ なんとなくの女子力という概念に捉えられて、青い鳥を追い続けてるような。

二村 俺はそれは「お母さん」だと思うんだけどね。子供のころに母親から、もしくは女の子同士の社会から受けた「ちゃんとした女にならなければ」っていう圧迫を、いつのまにか内面化しちゃってる。

きのコ 私は自分のことをXジェンダーだと自認していて。大体女性に寄ってるんだけど、男性性もあるし、女性性もあるし振れ幅があるなって思うので、特にその女性らしさとかを求められたり、期待されたりするとものすごいツライんですね。今は会社員ですが、入社した当初はすごく体育会系な営業部に入って、パンツスーツで『踊る大捜査線』の室井さんみたいな髪形で出勤してたら、「髪を伸ばせ、眼鏡をやめてコンタクトにしろ、スカートを履いてこい。営業なんだからもっと女としてお客様に商品を売ってこい」って言われて、すごい嫌だったし、あの時の嫌な気持ちはいまだに引きずってますね。

神田 新卒で入った職場がお堅い機器メーカーだったんですけど、ある営業所の女の子は「女としてお客様に商品を売る」ことを実践して、枕もやってました。でもそれによって彼女の評価は下がらないの。売上が上がってるから。

きのコ 私は、別の女性の後輩が強要されたり、嫌な目に合ったら嫌だなって思うから絶対に枕の営業はやらなかったんですけども、でもやぱりやっちゃってる人、やることを強要されて、抗えない人っていっぱいいるんだなって感じ取ってはいて。根深いなって思いますね。

たかだ 私の場合、母から見張られてるっていうのをすごく感じていて、母と一緒にお洋服見にいっても、未だに、「ちゃんとしたいいとこのお嬢さんみたいな形でありなさい」みたいな圧力はある。私はそう受け取っているんですよね。さっき女子力2つあるってことで、きのコさんは「女子力」押し付けられたら嫌だって言ったんですが、私は受け入れて、お料理も洗濯もするし家事もする、男の人のために喜んでもらえるような人でありたいとずっと思ってきて……それがこの、ダメ男に尽くした結果、金を奪われるっていう結果に繋がるんですけど。元をただすと、母に作られた人格なのかなって、最近そう思ってますね。

ト沢 女性の女らしさの苦しさっていうのも、男の人(からどう評価されるか)の問題もひとつあるんですけども、やっぱり母親との関係ってすごく大きいんじゃないでしょうか。お母さんに昔言われたから女らしく、もそうだし、性に対しても……そこらへん、神田さん(どう思われますか?)

神田 切り離せないですよね。幼い少女であっても、自分自身もいずれは母になる可能性をもったカラダであることは拭うことができない。っていうところに、母親が私を我が物であるかのように態度で示してくるのは、私はすごくつらかったです。今、服装の話が出てましたけど、私がイヤだったていうか、親に対して何かあるなって思ったのは、洋服のボタンをはめられるのがすごくイヤだったんですね。親の好きな服を着せられなきゃいけない自分が嫌で、男みたいな服を小学校の時は、着てましたね。でもどっかでそれを乗り越えないといけないって気が付いたのが、多分、結婚する直前くらいですかねぇ。どこまで母親にアレコレ言われなきゃいけないのかなぁ~じゃ、結婚すれば自分の好きなように生きていいのかなと思ったんですよね。それがすごく安易だったなって今では思うけれど。

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