東南アジアは「薄さ」、欧米は「アレルギーフリー」
――製品のお話もお伺いしていきたいと思います。消費者の動向はどのように変化してきているのでしょうか。
磯部 1900年代中頃はベビーブーム、1980年代はエイズの問題が起こったことも影響して、コンドームの認知が高まり、売上げも安定していたんですが、2000年以降、「少子高齢化」、「男性の草食化」そして「セックスレス」と性生活に関しての諸問題が影響して右肩下がりの状況が続き、2012年は今までにないくらい落ち込んでしまいました。しかし2013年度に薄型コンドーム「サガミオリジナル001」(以下001)が発売したこともあり、売れ行きは、2013年度から少しずつ上向きに回復してきています。
――その「001」ですが、2015年6月に販売を休止しています。
磯部 日本の消費者様以外にも訪日外国人の方々がお土産として大量に購入される「インバウンド消費」という状況もありまして、生産が追いつかなくなってしまい、販売休止をしていました。ようやく今年6月に再販売になったのですが、現在数量制限を設けて販売している状況です。
――特に中国の方に大人気だそうですが、日本も中国も「コンドームは薄い方がいい」「薄い方が売れる」という傾向なんでしょうか。
磯部 中国もそうなんですが、やはり東南アジアは我々日本人と感覚が似ていて、「サガミオリジナル」でも人気の理由は「薄さ」だと聞いています。
――中国でもコンドームは生産されていると思うんですが、わざわざ日本で爆買いするのはなぜでしょう。
磯部 食べ物やIT機器でもそうですが、中国の方は自分の国で作られた商品に対して、信用度は低いようで「made in japan」を求めていますね。弊社の「サガミオリジナル」も中国パッケージにして販売しているんですが、日本の表記を敢えてそのまま残してくれと依頼されます。
――中国製と比べて、価格の違いはあるのでしょうか。
磯部 日本製品は高いんです。中国のゴム製コンドームよりも、日本のゴム製コンドームは倍近く高い。更に、どちらも日本製だとしてもゴム製と「サガミオリジナル」で使用しているポリウレタン製は倍近く高い。そうすると、中国製のコンドームと「サガミオリジナル」では、4倍近くの価格差となります。
――それでも爆買いしてしまうほど、サガミオリジナルの技術は信頼性が高いのかもしれません。
磯部 そう感じますね。価格は高いんですが、品質だったり技術力、あそこまで薄くできているのに、コンドームとしての機能が損なわれることなく備わっているっていうところが、評価していただいていると思います。ただ、インバウンド消費などで売上回復とはいっても、高齢化の波というのは今後も当分続くものと思っておりますので、国内市場だけを見ていたらいつか行き詰ってしまいます。いかに海外に向けて日本のコンドームの安全性や利便性が高いのかを知ってもらうべく動き出しているという状況です。
――東南アジア以外の国々でも、「世界最薄」というのは注目されているのでしょうか。
磯部 ヨーロッパやアメリカの方たちは、コンドームを使う文化が日本と少々異なるようです。親しい夫婦間や恋人同士のセックスではコンドームは使わず、あくまで風俗やビジネスの性病予防のために使われることが多いんです。あと、日本の比じゃないくらいゴムアレルギーをお持ちの方が多いそうで、「薄さ」よりも、「アレルギーフリー」と言う点が重視されています。