『an・an』で勃発した、ある騒動
その証拠に週刊誌や女性誌でも、「女が嫌いな女」というテーマは頻繁に扱われてきた。
『週刊文春』(文藝春秋)は、2016年11月3日号で「女が嫌いな女」のワースト50を発表。1位は和田アキ子、次いで、ベッキー、蓮舫、藤原紀香、工藤静香、泉ピン子、安藤美姫、久本雅美、上西小百合、高畑淳子がトップテンにランクインされた。ベッキーはいうまでもなく、このランキングの発表元である“センテンススプリング”のスクープによって、人気バンド「ゲスの極み乙女。」のボーカル・川谷絵音との不倫が明らかになり、同性からの反感を買ってしまった経緯がある。
しかし、2015年にも24位にランクインしていることからもわかる通り、潜在的な“アンチ・ベッキー”は以前からいたようだ。2013年には、お笑い芸人・有吉弘行がつけた「元気の押し売り」というアダ名を引き合いに、「作りものではない等身大のベッキーを見せることができれば女性からの好感度が上がるのかも?」と寸評されている。その後、同誌によって「等身大のベッキー」が嫌というほど世間に晒されることになろうとは、この時は誰も想像していなかった。
ちなみに、『週刊文春』の「女が嫌いな女」特集は、今年で11回目を迎えたそうだ。筆者が調べた限りでは、『an・an』(マガジンハウス)も1991年から女性読者が選んだ「好きな女、嫌いな女」に関する特集をたびたび掲載している。こうしたネタを求める読者が、それだけ多いのだろう。
ただし、『an・an』には好きな女には順位をつけているのにもかかわらず、嫌いな女は「順不同」で掲載するといった手ぬるい一面がある。女性芸能人に気を使ったのだろうか。漫画家のまついなつきは、『an・an』の座談会に参加した際、女性芸能人への否定的なコメントが改変されてしまったなどと訴え、その経緯を1994年9月号の『宝島30』(宝島社)に発表。その後、同年11月号の『マルコポーロ』(文藝春秋)で、「『アンアン』では絶対に読めない。『女が嫌いな女』決定版」と題した座談会をナンシー関、町山広美とともに改めて行うという騒動も起こった。
「女が嫌いな女」を巡って女たちが揉めるというなんとも名状しがたい形になったわけだが、このテーマが人々の耳目を集め続けてきた歴史の一幕として、象徴的な出来事だと言える。
こうした特集から言えることは、「その時代に注目された女性が、ランクインする傾向がある」ということだ。今年でいえば、不倫騒動のベッキー、二重国籍問題の蓮舫、SMAP解散の一因と噂された工藤静香、息子が逮捕(後に不起訴)された高畑淳子といったネガティブな面々だけではなく、売れっ子として注目された芸能人もワースト50にランクインしていた。つまり、「注目と嫌悪は紙一重」なのだ。さらに、『週刊文春』によると、第1回目の特集から共通している嫌われの王道は、やはり「ぶりっ子」だという(第1回のトップはさとう珠緒)。
その点、和田アキ子だけは、ぶりっ子なわけでも、その時代にことさら注目されたわけでもなく、安定して名前が挙げられている。まさに“アッコにおまかせ!”といったところだろうか。