――つばきさんご自身も38歳で離婚されて。2人のお嬢さんの親権を持たれているわけですが、お嬢さんたちに離婚の理由ってお話になりました?
神田 正確な理由はやっぱり、言えなかったですね。
――すごく端的に言うと「セックスしたいから」ですもんね……。言いづらいですね。
神田 セックスだし、仕事したかったし、っていうことも理由ですよ!(笑) 嫁だったときは働くことを禁止されていて、こっそりバイトしてはバレて辞めさせられてたんですから! 娘たちには、「もうパパとママは別々に暮らすことにしたんだよ。でも、いくらでもパパにもばあばにもじいじにも会いに行っていいんだよ」って言って、それだけだったんですけど……今にして思うと、あんまりいいことじゃなかったですね。嘘でもなんかハッキリ理由を作らないと、やっぱり子供って迷っちゃうみたいで、長女はちょっとグレました。
――グレちゃった、というと?
神田 長女が12歳のときに離婚して、離婚成立の2カ月後に引っ越しをして中学に入ったんですね。そこからね……家にあんまりいたくなかったみたい。それまでは元夫の実家のすぐそばで暮らしていて、初孫としてチヤホヤされて、いつ家に帰ってもママかおばあちゃんがいるような状態だったんですね。だから離婚後、ママと妹しか家にいないってことが単純に寂しかったみたい。もうずーっと部活やって、部活終えても誰か友達の家に行っちゃって、なかなか帰ってこなかった。毎晩、学校に探しに行ってました、子供のこと。
――何時くらいまで?
神田 19時……だんだん遅くなっていって20時、21時ですね。
――その時間まで連絡なしに帰ってこないのは心配になりますよね。連絡してきたとしても夜道を一人で歩かせるのは恐いですし。
神田 そうですよね。それがずーっと続きましたね、高校卒業して就職しても。私自身もそのことで気が狂ったように、キーッてなることがよくありました。田房永子さんの漫画『キレる私をやめたい』ってご存知ですか? あれに出てくるキレ方みたいな。目が吊りあがって、突然キェーって叫んでおたま持って走って、ヨーグルトを壁に投げつけたりとか。ヨーグルト、ネギ、携帯はよく投げましたね。
――ますます帰りたくなくなりますね……。長女につばきさんがキレてる時、2人目のお嬢さんは?
神田 やっぱり嫌だったんですって、すごく。当時の日記読んだら……。
――お嬢さんの日記があって?
神田 いえ、私の日記ですね。ずっとつけているんですが、日記に書いてあるのはほとんど男のことなんですね。家族の話といえば、私が長女に腹を立て、長女が家の外に出て行って、私が洗い桶に茶碗を投げつけて、次女がふすまの向こうで「もうやめてよ、いい加減にして!こんなのイヤだ!」ってわめいている……とか。もう、最悪ですね~。自分の度量が狭すぎたと思います。
――度量ですか?
神田 すぐに悪い方に連想しちゃって、「これがこうなったら、あーなって、こうなって、こうなっちゃうじゃないのー、そうなったらどうすんのよ! キエェー!」ってキレる。子供たち、なんで母親があんなにキレてるのか、まったく意味がわかんなかったと思う。ヒステリーですね。
――ご自身でそれを直すっていうか、緩和しようとは。
神田 考えて……もちろん考えようとはするんですけど、なかなか出来ませんでした。仕事も忙しくて、恋愛もずっとしていて、子供の生活とか進路とかもあるし、次々に頭の痛い問題が発生するので、まいっか、とりあえずヨーグルト投げとけ! みたいな。
――立ち止まれなかったんですね、そのときは。今現在はどうですか? 30歳と26歳になったお嬢さんに対して、どう接しているのか。
神田 本当に悪いことしたなと思っているんですけど……まぁ2人ともそれなりに歪んだんですよ。家に寄り付かなくて向き合うことが出来なかった長女とは、まだ距離があるように思います。家にいてそれなりに反抗期をやった次女とは、今も一緒に暮らしてるんですけど、反抗期をやり切って、尚且つ私がもう弱ったババアに見えてきて、「そろそろこの人を何とかしなくちゃいけないんじゃないか、みんなが困らない形で死んでもらわなきゃいけない」って次女は考えてるそうです。次女の頭の中に結婚や家族についての事業計画が出来ているらしいんですよ(笑)。この間の日曜日かな、友達の結婚式に行って帰ってきた次女に言われたのが、「私の結婚式の時、多分ママの顔で『エロの人だ』『SMの人だ』と何人かにバレるだろう。私はそれでも結婚はしたいし、結婚式もしたい。だからあなたもこれからは、『あぁ、あのSMの評論家の人ね』って言ってみんなが嫌な思いをしないような仕事をしてくださいね」って。何か恐かった~。
――みんなが嫌な思いをしない仕事ってなんですかね。
神田 それなりに納得のできる、筋の通ったことを言ったり書いたりしてくださいって。『ゲスママ』はその意味ではよかったけど、中途半端な仕事はしないでね、と言われました。