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2016年、文春砲とSNSによって作り出された生贄的「悪女」たち

【この記事のキーワード】

AKB、高級愛人クラブ、女子アナ、ユルリラポ……

ミュージシャンの川本真琴のツイートをきっかけに、複数の女性との交際が発覚した狩野英孝のスキャンダルにも文春は切り込んだ。川本に応答する形で“今カノ宣言”をして物議を醸した加藤紗里について、六本木のクラブで行われたキャバ嬢の誕生日会で20万円以上を窃盗した疑惑について報道(2月18日号)。本人は否定しているが、2016年を代表する“お騒がせクイーン”の一人に対してもチクリと刺した。

文春砲の矛先は、あの国民的アイドルグループにも向けられた。6月30日号で、AKB48の宮崎美穂がイケメンホストとの“お泊まり愛”をスクープされたのだ(事務所は否定)。しかし、同じ文春が2012年に伝えた指原莉乃(宮崎と同期)の交際報道と比べると大きな話題にはならず、ファンの間に衝撃が走ったのみで終わった。宮崎の知名度が指原よりも劣っていたとはいえ、“恋愛禁止”のルールを破ったアイドルごときを相手にしていられない。それだけ今年のゴシップは豊作なのだ。

インパクトがあったのは、7月21日号の「NHK現役アナは『高級愛人クラブ嬢』」と題したスクープである。記事によるとNHK某地方放送局の契約キャスターが全国に支店を持つ高級デートクラブに登録し、4人の男とデートしていたというのだ。会社役員などが利用するこのデートクラブは、「実質的に売春を斡旋する“高級愛人クラブ”」であると文春は指摘。当のキャスター本人は登録やデートの事実は認めたものの、婚活目的だったと釈明している。

文春砲の勢いは、まだまだ止まらない。8月11日・18日夏の特大号では、第2子を妊娠中である小倉優子の夫で、カリスマ美容師の菊池勲と、小倉が所属する事務所の後輩・馬越幸子との不倫疑惑をスクープ。馬越は癒し系グループ「ユルリラポ」のメンバーとして活動していたが、報道を受けて事務所から契約解除された。文春によると、馬越は六本木を根城にするパリピ(パーティー・ピープル)の一面があり、菊池以外にも複数の金持ち男性に囲まれていた疑惑のある問題児だったそうだ。

10月20日号では、テレビ朝日の矢島悠子アナと、彼女が出演する「報道ステーションSUNDAY」などを請け負う番組制作会社社長との不倫疑惑が報じられた。矢島アナは16歳年上の番組プロデューサーと結婚している既婚者だ。一方、お相手とされた制作会社社長は50代のバツイチである。同誌は「報ステSUNDAY」スタッフとの飲み会を終えた後、不自然に電車を乗り継ぐ矢島アナを追い、杉並区内の某駅で制作会社社長と落ち合う姿を目撃したという。二人は不倫関係を否定したが、同誌には腕を組んで歩く姿がバッチリとスッパ抜かれている。

女子アナ「次の文春砲は?」 記者「……(あなたです)」

極めつけが12月15日号で報じられたテレビ朝日の田中萌アナと、加藤泰平アナの不倫。二人は朝の情報番組「グッド!モーニング」で共演していて、加藤アナは3年前に一般女性と結婚した既婚者だ。文春によると田中アナは、加藤アナに「嫉妬するほど好きなの」とメッセージを送るほどベタ惚れで、オンエア中もカメラに映らないところでアイコンタクトを交わすなど、二人の不倫は「いつバレてもおかしくないよね」と周囲から噂されていたという。

さらに、田中アナは自身のスクープが報じられる前、新語・流行語大賞を報じる番組で、「次の文春砲はいつですか?」と文春記者を取材する番組ディレクターの台詞を笑顔で読み上げていた。その時は、まさか自分に標準が合わされていたとは思ってもみなかっただろう。取材を受けていた文春記者の高笑いが、今にも聞こえてきそうだ。文春砲、恐るべしである。

2016年、世間を最も賑わせたメディアである『週刊文春』。第一報をネットで報じ注目を集めるという手法もすっかりお馴染みになり、スクープの形に進化が見えた1年でもあった。

すでに指摘したとおり、スキャンダルに対する反応はSNSによって可視化され、それによって世論が形成されていく。大衆は、「不倫」といった叩きやすいネタが投下されると、鬼の首をとったかのように倫理観を発動させる。つまり、現代的な「悪女」は衆目に可視化された「感情」によって形作られ、感情をぶつけて溜飲を下げる生贄的な意味合いを持つのだ。

彼女たちは、ボロ雑巾のようになるか、大衆の気がすんで忘れ去られるかまで叩き続けられる。そして恐ろしい速さで消費され、また新しい生贄的な「悪女」が要求されるのである。

ベッキー騒動から、そろそろ1年。2017年最初の文春砲は、誰を狙っているのだろうか。
(宮崎智之)

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宮崎智之

東京都出身、1982年3月生まれ。フリーライター。連載「『ロス婚』漂流記~なぜ結婚に夢も希望も持てないのか?」、連載「あなたを悩ます『めんどい人々』解析ファイル」(以上、ダイヤモンド・オンライン)、「東大卒の女子(28歳)が承認欲求を満たすために、ライブチャットで服を脱ぐまで」(Yahoo個人)など、男女の生態を暴く記事を得意としている。書籍の編集、構成も多数あり。

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