桑満:へんな医師が出てくるのは、一部、経営コンサルティングのF総研が仕組んだことでもありますよね。〈波動〉という言葉を作ったのも同社ですし。医療のコンサル部門を持っていて、流行らない医院も買収しますから。あとは開業医って開業しても数年間は食えないから、おもしろいくらいにおかしなところから「こんな商品の監修をお願いできませんか」と声がかかるんですよ。すると医師もお小遣い稼ぎ的に、トンデモ系ビジネスを思いつき、のめりこむのかも。
O:専門分野に関してはきちんとしているのに、なぜか酵素ドリンク作っちゃったりなんてお医者さんもいますよね。
三浦:歯科医師が書いたセックス本なんてものもありました。
ノジル:あ、前から「歯科医師は意外とトンデモ率高い」って思ってました! 金色のペンで手相を書きこんで大金ゲット★とか謳ってみたり。
桑満:歯科医師のトンデモは、〈かみ合わせで何でも治る〉という発想から始まっているのでは。ちなみに、彼らの商法はセミナー。セミナーの告知を、新聞広告に出すんですよ。読売朝日に載ってれば、おじいちゃんおばあちゃんは信じますもん。
三浦:結局、私たちはどこでまともな医師かトンデモ医師かを見分ければいいんでしょう?
トンデモ医師の見分け方はあるのか?
O:私の場合、原稿をお願いするときはご著書やご執筆された記事、インタビュー記事、ブログ、ツイッターなどを拝見したうえで、さらに〈同じ専門科の方からの評判〉を見ていますが……、これも万能じゃないですよね。
ノジル:でも、うつみん(内海聡医師)なんて、あれだけ批判されているのに信者が減りませんよね?
桑満:あれはもう宗教だから、迫害されたほうが結びつきが強くなるんですよ。
O:「自分たちだけが真実を知っている!」という選民意識が持てるんでしょうね。そう言えば、今年は豊受クリニックの小児科医・高野氏も本を出されましたよね?
ノジル:買いました、買いました(笑)、『母子手帳のワナ―知られざる母子保健の真実』(高野弘之著、四海書房)。この本、WELQみたいに、本書の内容に出版社は責任を持ちませんという〈免責事項〉が掲載されています。新生児へのビタミンK2シロップの投与否定や予防接種否定につながるようなこの本を、育児サイトの〈ハピママ〉が掲載しちゃって、読者からツッコまれて今は記事が削除されているんですよね。
O:豊受クリニックって、ホメオパシージャパンの提携クリニックで、同書にはホメオパシー協会の由井寅子氏が恩師だと書いてあります。ホメオパシーといえば、山口県の新生児ビタミンK欠乏性出血症による死亡事件※がありましたが、それを読者の方がAmazonのレビューに書き込み、その後、担当編集者がやりとりされていてびっくりでした。
※2009年8月山口県で出生した乳児が、生後2カ月でビタミンK欠乏症による硬膜下血腫で死亡。通常であれば、新生児には出生後すぐにビタミンKが投与されるが、母子を担当した助産師は代わりにホメオパシーのレメディを与えた。
ノジル:編集者がAmazonレビューに返信することってあるんですね(大笑)! いや、笑いごとではありませんが。
「自然」に惹かれるのはなぜか?
下戸山:実生活で周りの女友だちとかを見ても、〈科学的根拠があるかどうか〉でものごとを選んでいる人はまずいないんですよね。
ノジル:〈感性で選ぶ〉ってやつですね。
三浦:だからといって、GENKINGさんもやってる水素美容!と言われても私は響かないなぁ。なんでしたっけあれ、韓国まで論文発表しに行ったんでしたっけ(笑)。
桑満:一部の話では、水素水ビジネス関係は、子育て中のお母さんたちがターゲットにされているらしいですよ。本来、妊娠出産の問題はすごくデリケートですし、100分の1くらいの割合で確実にトラブルが起こるから、医師であってもあまり触れたくないんですよ。さらに、妊娠出産はいまだに分からないことがたくさんあるから、そういった隙もついて、自然派やトンデモ系がつけこみやすい。
O:子育て界に入り込むビジネスは、親の〈子どもに最上のものを与えたい〉という気持ちにつけこんでいますよね。例えば骨盤の歪みを直さないと、生まれてくる子どもが大変なことになるなんて脅されたら、やっぱり子供のためになんとかしなくちゃと煽られてしまっても仕方ないと思う。
下戸山:でも、今年火傷を温めろネタで炎上したホメオパシー系〈自然派ママ〉なんかは、ある意味勇気あるなぁと思うんですよ。ワクチン打たないとか。海中で出産した人もいますよね。私自身は、出産時「自分でどうにもできない」って思ったけど、自力でやってやる!という気合は、正直すごいです。
O:その手の人たちって、結婚式みたいに〈思いどおりの理想の出産をしたい〉という意識がすごく強いですよね。
ノジル:何でもかんでも手間暇かけて、それこそが豊かな証拠……って、失礼ですけどヒマだな!
三浦:だからと言って、子どもを使って自己実現しなくてもいいと思うんですけどね。
桑満:ところでみなさん、なんでそんなに〈自然〉がいいんだろうね?