三浦:版元が医師を精査しないというのもありますけど、単に国家資格を持っているだけの人をメディアが医師扱いするという問題もありませんか? 『女医が教える本当に気持ちいいセックス』(ブックマン社)のヒットを受けて類似本がたくさん作られましたが、なかには、医師免許を取得はしているけど研修医の経験もなく医師とは呼べない女性を引っ張り出して「女医」と呼んでいるものもありましたよ。
桑満:同じような感じで、医学部出身のライター・朽木誠一郎さんも、医師から見ると書いているものに違和感があるんですよ。卒業はしているけど臨床の経験がないと思う。
三宅洋平、高樹沙耶…トンデモ有名人
三浦:トンデモはフェイスブックなどのSNSでシェアされるのが定番ですが、今年は私の周囲でも三宅洋平ネタをシェアしていた人が意外なほど多くて。トンデモ傾向のリトマス紙かというくらい(笑)。
O:三宅氏、ツイッターでの発言もインパクトありました。「個人ができるTPPへの最善の処置は、マクロビやローフード、ナチュラルハイジーン、自然食、オーガニックフード、湧き水、EMや乳酸菌による土壌改良、発酵食品、備長炭による浄水・空気清浄、自然療法、ホメオパシー、漢方などの正しい知識と実践を身につけ、医療に依存せずに済む身体を作る事」だそうです。
ノジル:トンデモ・ロイヤルストレートフラッシュをキメていらっしゃる方ですからね。
O:選挙前にもトンデモ発言しているのに、そこそこ票がとれているのが怖いです。
ノジル:そこに対して違和感を覚えない人がいかに多いかという。
下戸山:〈個人でできるTPP対策〉とか、頭おかしいでしょう(笑)。
O:内容はともかく、雰囲気がキラキラしてればいいのかという。「純粋でいい人!」「がんばってる!」ってなれば、言ってることはおかしくてもいいのかなって(笑)。
三浦:選挙まで「フェス」感覚というか、彼が語ればトンデモもオシャレに見えるんじゃないですか。
桑満:1990年代頃に代官山のアパレルショップ「ハリウッドランチマーケット」って流行ったじゃないですか。当時は奥に入ると、大麻の吸引グッズとかそんなんばっかりありましたよね。三宅洋平って、ああいうニオイがするんですよね。
O:自然派の方たち、もちろん一部だとは思いますけど、めっちゃ大麻好きですよね。
ノジル:今年の10月には、大麻推進の元女優・高木沙耶も逮捕されてしまいましたね。
三浦:彼女のふんどし生活も報道されていましたよ(笑) 。〈大麻は安全〉と自然派はよく言いますが、実際はどうなんですか?
桑満:そこに皆が騙されるんですけど、覚せい剤と同じく妄想も出ますよ。彼女は医療用大麻を推進していましたが、それで病気が治るわけじゃない。あくまで、痛みや絶望感を緩和するために使用するものです。でも痛み止めなら、もっとよく効く真っ当な薬があるわけだから、あえて大麻を使う必要はどこにもないんですよね。しかし推す人たちは〈大麻で快楽ホルモンが出るから、ガンまで縮んじゃった〉と語る。もちろん、それを裏付ける論文はありません
ジョイセフとは一体、何だったのか
下戸山:〈新・女子力テスト動画〉を出したジョイセフも、びっくりしませんでした? 海外ではちゃんとした国際協力NGOで妊産婦支援団体なのに、日本では電通ギャルラボと手を組み「I LADY」という啓発サイトを立ち上げたら、妙なことになってしまっている。一般女性に女性の身体や生殖についてのクイズを出し、間違ったら粉をぶっかけるという。
三浦:女子力というのは料理ができるとかではなく、正しい性の知識があるかどうかと言いながら……。
O:おっぱいは女性ホルモンそのものだからマッサージしてふわふわにしようとか、子宮を冷やすなとか、めちゃくちゃ。
桑満:女子力テストのお題は、多分ネットとかで拾ってきた適当なものなんだと思いますよ。キュレーションサイトと同じく既存のものをコピペしているだけで、内容が医学的に妥当なものかどうかまで深く考えていないんでしょう。個人的には、それよりは独自の理論があるトンデモさんのほうがまだマシだなと思いますね。
O:まず「自分の体は自分のものである」「自分を守るために知識を身につけよう」という啓発をするときに、無知に対して罰を与えるというのもどうなのかと。そして、啓発する側であるはずの「I LADY」には間違ったものが載っているという。
三浦:そもそも学校教育に組み込まれていないから知らなくても無理はないという項目もありましたよね。罰を与えるのではなく、これから知るよう導くだけでいいのに。
下戸山:なんで女だけ、知らないと罰を与えられるのか。
O:若い女性をバカにしている感じがして、とても失礼ですよね。
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さてここらへんでいったん、前篇は終了です。後篇では、ワクチン問題や誕生学、教育系のアレコレへと話を進めていきましょう。
▼後篇:優生学的思想に誕生学、教育現場まで入り込む一見キラキラした思想がいかに危ないか
(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)