WELQ問題に始まり、トンデモ医師、自然派ママ、医療批判記事、ジョイセフ、三宅洋平etc……取りとめもなくお送りしております「2016年トンデモ総まとめ座談会」。後編を始めましょう。
▼前篇:人はなぜWELQの記事を信じ、トンデモ医師を受け入れ、自然のものがいいと思うのか?/2016年のトンデモ案件徹底討論【1】
座談会のメンバーは引き続き、
桑満おさむ:五本木クリニック院長、この年末に突如大炎上したキュレーションサイト「WELQ(ウェルク)」にツッコミを入れ、注目を集める。
O:今年7月に発行された、子育て界のトンデモを幅広く解説した『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』(メタモル出版)の担当編集者
下戸山うさこ:messy編集長
三浦ゆえ:当連載「スピリチュアル百鬼夜行」担当編集者
こちらにわたくし、ライター山田ノジルを加えた計5名でお送りします。
なぜワクチンは嫌われるのか?
ノジル:前半戦では自然派さんの話が登場しましたが、自然派のママたちといえば反ワクチン問題もありますよね。
下戸山:わざわざワクチンで異物を体内に入れなくても、自然に感染すれば免疫がしっかりつくから問題ない。昔の人たちは皆そうやってきたの!……ってやつですよね。
全員:それで死んだ人が、昔はどれほどいたのか!
O:優生学みたいな、それを乗り越えたものだけが生き残るという考えなのかもしれませんね。映画『玄牝』(げんぴん)や『うまれる』にも出演していた自然派出産の吉村医院の元院長・吉村正氏が言うところの……。
桑満:選ばれしもの、って本当は神が選ぶんだけど、選ばれしものに自分も入れてもらおうとするから、ワクチン打たなかったりおかしなことになったりするんじゃないですかね。
下戸山:逆に自分が淘汰される側になる、選ばれない可能性があるって思わないんですかね。自分だけは重病にならない、事故にあわないとは、私はとても思えないので予防をするのですが。
O:内科医のNATROM先生が『「ニセ医学」に騙されないために〜危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』(メタモル出版)に書かれていたことですが、ある助産師さんが、神道系宗教のサイトで「B型肝炎で非常に感染力の強い方のお産を手伝ったときに、私は抗体を持っていないのですが、不思議と予防注射を打つ気持ちになりませんでした」とあったそうです。
三浦:キラキラした〈素敵な話〉風に語られても(笑)。一個人としてそう思うのは勝手ですが、医療従事者の発言としてはマズすぎますね。
桑満:優生学的な思想を持っている医師を見分けるには、遺伝に対する考え方である〈メンデルの法則〉を持ち出しているかどうかをチェックしてみるのも、ひとつの手だと思いますよ。メンデルの法則は自分に都合のよいデータを発表していることで知られていますから。もしそれをいまさら書いているのであれば、遺伝に関する知識がアップデートされていないか、よっぽど優生学を信じたいかです。ただ、メンデルの法則は実験としては面白いので、科学の歴史のひとつとして、いまだに教科書にも載っているかもしれませんが。
下戸山:そうなると、中途半端な義務教育の記憶にも、問題の根がありそうですね。