――それはもう、こういう仕事を始める前から?
紗倉 そうですね。このお仕事を始める前が一番暗かったと思います。やっぱりいろんな人と出会う機会が増えたので、悩みを共有できたりだとか、あと意外と気にすることでもないんだなとわかってきて、ちょっとずつ、多分ですけど、変わってきた部分もあるのかなって。
――子供の頃から、他人にどう思われるか常に気にしてたんですか?
紗倉 子供の時は何も考えてなかった。親から「火事があってもあんたはひとり逃げ遅れそう」と言われたことがありますね。トロいし、のんびりしすぎてて。今よりもっと喋り方もペース遅かったし、人の話を聞くときも言われたことを口ポカンとあけて「そうなんだ~そうなんだ~」って聞くだけみたいな感じで。悩むっていうよりは本当に何も考えてない感じでした。
「何言ってるかわかんないし、なんかもう人と話したくないっていうか」
――「会話が苦手だ」って、前にどこかのインタビューで言ってたじゃないですか。耳が悪いのと、相手が何を言ってるのか理解するのが不得意だとか。
紗倉 あ、そうなんですよ。未だにそうで、複数人で集まって話してると言葉の意図を汲みとれなかったり。大勢いる場所ではいつも、何の話なのかよくわからなくなってますね。で、一緒に会話に打ち解けられればきっとすごい楽しいことなのに、打ち解けられないから楽しくなくなっちゃって、話すの嫌だなと思って。あと、実際すごい耳が悪くて。
――それは病のレベルくらいの?
紗倉 うーん、診断されたことないんですよ。今、豪さんと話してるくらいの、これくらいの至近距離で会話するなら大丈夫なんですけど、ちょっと離れた距離から声をかけられるとほんとに2~3回は『えっ?』って聞き返さないと何を言われたかわからない。でも、何度も聞き直すのは相手に失礼じゃないですか。それで、つい『あ、うんうん』みたいな生返事をしちゃう。だからなんかもう、人と話すこと自体めんどくさいのでコミュ障ということでやりすごしています。
――聞き返したら多分、気を悪くする人もいるでしょうからね。
紗倉 いますよね。
――なんとなく理解したふりして、やり過ごす?
紗倉 そうなんです。あと、正確に聞き取れないから、冗談を寒くしちゃうんですよね。誰かがその場の流れで「~~なーんちゃって」って冗談で話したことを、私は聞こえなくて「えっ?」って聞き直しちゃうから、「……いや、今のはこういう意味だよ」と説明させちゃってみんな興ざめ……みたいな。
――最悪ですよね、それ(笑)。
紗倉 そうなんですよ、必殺ギャグ潰し。ちょっと“空気崩し”をしすぎちゃってて。でも最近は、みんなが楽しそうだったらよくわかんなくても一緒に笑っちゃうみたいな。それでいて「まなちゃん言ってることわかる?」とツッコまれたら「わかんないです(笑)」って言えるようになったんですけどね。
――それがわかってくれてる人たちの中なら、なんとかなります?
紗倉 なりますね。それに、なんか自分が中心になって話したりとかは、別にしなくていいや。
――それだと学生生活は、大変じゃなかったですか?
紗倉 大変でしたね。でも、高専の時はまだ一個一個の試験や課題があって勉強しなきゃいけなかったんで、ひとりで作業する時間があったから良かった。別に勉強してればいいやみたいな感じで。ただ、チームで実験とかしないといけない時間はすごく嫌いで、話せないし、みんなが冗談を言っててもよくわかんなくて、なんとなくやりすごしてきた感じでした。
――よく高専を進学先に選びましたよね。それこそチームで色々やらなきゃいけない世界じゃないですか。
紗倉 ほんとですよね。何も考えてなかったんですよ。コンクリートを作るの楽しそうだなぁとか、寮に住めるから親元から離れられるし、いいなぁ、息抜きできそう! ってだけで入っちゃって。入ったらみんな個性的でしたよ。パソコンを組み立ててる子もいるし、ゲームを作ってる子もいるし、すげーヤンキーもいるし。まあ全然打ち解けられる人はいないんですけど(笑)。
――高専出身っていうと、まずヤンキーってイメージありますよ。
紗倉 そうなんですか。ヤンキーの子って、でもやっぱり留年していきますね。1年生の時はヤンキーがクラスを荒らしてたけど、そのまま留年しちゃうから2年、3年になるとクラスが平和になっていった(笑)。