さて、口論しつつも練習を重ね、「ノクターン」での演奏本番を迎えた4人。4人のグループ名(?)は当初、「Quartet Doughnut(カルテットドーナツ)」でしたが、元地下アイドルで炎上経験豊富・笑顔だけど目は笑っていないアルバイト店員・来杉有朱(吉岡里帆)が“ベンジャミンから聞いた話”として「音楽っていうのはドーナツの穴(hole)のようなものだ。何かが欠けている奴が奏でるから音楽になるんだよねって。全然意味わかんなかったですけど。フフフフフゥ~(嫌な笑い方)」と彼らに告げたことから、「カルテット・ドーナツホール」に変更になりました。ドーナツの食べられる部分じゃなくて、穴のほう。何もないほう。
それにしても、4人はどうして“偶然”東京のカラオケボックスで出会ったのでしょうか。
あくる朝、ヴァイオリンを弾きながら涙を流す真紀。愉高と司は仕事に行った後で、寝起きのすずめだけに見られてしまいました。「風邪かな」とごまかす真紀、すずめは愉高の高級ティッシュ『紫式部』(1個1,600円)を無断で持ち出して真紀に差し出します。愉高、安月給だと思うんですけど高級ティッシュ使いたがる男なんですね。プライド高そうな愉高がなぜ田舎の美容院で“こき使われる”アシスタントの仕事を続けているのかもまた気になる。
1枚抜いたら2枚、2枚抜いたら3枚出てくるティッシュを「追い詰められた連続殺人犯みたいですね」と例えるすずめのブラックジョークに真紀は笑います。すずめはさらに「どうして曇っていると天気悪いって言うんですかね。いいも悪いも曇りは曇りですよね」「私は、青空より曇った空のほうが好きです」と言います。「ありがとうすずめちゃん、私も青空より曇った空が好きです」と真紀。世間一般から見れば屈折発言に分類されるような言葉で同調し、メンヘラと形容されるような女2人の距離が縮まったかのように見えましたが、すずめは間違いなく用意された“偶然”で真紀と出会ったのだということを忘れちゃいけません。すずめはリビングテーブルの裏側にボイスレコーダーをくっつけ、会話を録音していました。裏で糸を引く老女・巻境子は真紀の義母。「息子は失踪なんかしていません。この女に殺されたんです。必ずどこかで本性が出ます。それまで友達のふりを続けてください」と言う境子に、すずめは「ミゾミゾしてきました」と言って三角コーヒー牛乳をすすります。真紀が夫を殺した女だとしたら……すずめ、怖くないんですかね。誰も彼も得体の知れないこのドラマ、一体どこへ向かっていくのでしょうか。
夢が叶わなかった男女だけあって4人とも屈折した心理が随所に垣間見られるうえ、メッセージ性がわかりやすいドラマでもなさそうで、万人受けする作品じゃないかもしれません。しかし謎が多く、真相が気になる展開でもあります。第1話で4人の正体が気になった方は見続けるのではないでしょうか。
エンディングソングはDoughnut Hole(松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平)が歌う主題歌『おとなの掟』(作詞作曲/椎名林檎)。ドレスアップした4人が妖艶な表情で声を合わせます。松さんと満島さん、歌声に定評のある女優陣はさすがの迫力ですが、高橋一生さんのセクシーボイスも評判を呼んでいます。えろい。巧い。放送中、愉高が(見知らぬ女子大生と)キスしたりシャツのボタンを開けたりするたびに高橋さんのファンはTwitterで「キャー!」と悶絶・絶叫していましたが、確かに色気ありますね。エンディングムービーでは司が真紀に接近する場面も一瞬だけありますが、「全員、片想い 全員、嘘つき」4人の恋の行方はどうなるのでしょう。とにかくドラマ全体に靄がかかっているような印象で、4人がどこから来てどこに向かっていくのか見当もつきません。ここまで見当のつかないドラマも珍しい気がします。