どうやら好きモノと思われたようだけど、全部気に入った相手に限る話よ。当然だけど私は気に入った相手かイケメンにしか抱かれないわよ。でもどんな彫刻品のようなイケメンよりも気持ちが入るのは少し癖のある顔の男にばかりなのよね、私。「ブッッサイクだなー」っていう寝顔に母性本能をくすぐられるの。無防備なイケメンの間抜けな寝顔も「普段かっこつけてるくせに……」と優越感に浸れるから嫌いじゃないけど。
話を戻すわね。その後、全身の写真とバストアップの写真を撮影。顔を隠す条件で下着になるよう言われ、その姿も撮影。ブラジャーだけ外すように言われ、撮影。
堂々とした立ち振る舞いをしていたけど、恥ずかしくて背中から汗が噴きだしてたわ。メーカー周りは全裸になると聞くし、これだけでこんなに恥ずかしいんだからセックスなんてさらに無理だわ。やっぱり女優さんたちは強いハートを持っているわ……。
写真を見た社長は早速メーカーに売り込もうと盛り上がり、痴女モノはピッタリだとか某アダルト雑誌のグラビアから売り出す商法にする、とかマネージャーと勝手に話が進んでいる。やりますとは一言も言ってないんだけどな、えへへ。
「後日ヘアメイクとカメラマンを付けて宣材写真を撮影し、メーカーを回りましょう、今週はどうですか?」
と、話がさらに本格的になってきたところで、「忙しくて日程が分からないので後日連絡します」と笑顔で言って送迎までしていただいた。ご協力ありがとうございましたー(真顔)
「ご機嫌いかがですか?」「日程どうですか?」「お変わりないですか?」などの連絡は未だにくる。放置していてすみません。
決心と覚悟があれば私みたいなペチャパイも売り出してくれるということかしら。でも想像を遥かに超える覚悟が必要だ。セックスするわけでもないのに初対面の相手に半裸を見せるなんて、生まれて初めての体験だったわ。何か目的がないと踏み入れない世界だと感じた。
そもそも「人前で脱いでセックスする覚悟さえあれば、高収入が得られる」という時代ではない。少し繁華街を歩けば一般人なことが不思議なくらい可愛い女性はたくさんいるもの。AVに出たい女性もたくさんいる。一昔前のように、事務所に騙され、半ば強引に……なんて例はほとんどゼロに近い。
しかし、ずっと同じでは飽きられるし、過激になれば身体的にも精神的にもリスクは上がる。
スカウトマンに話を聞くと、AV女優としてデビューさせて3年経っても花が咲かない場合、提携しているソープランドやデリヘルなどを勧めて働かせることがあるらしい。AV女優という肩書きだけでお客は食いつく。売れっ子風俗嬢になりそのまま転身しても、大元の会社は同じなので給料の一部は事務所に永久に入るのでかなりおいしいという。もしくは集団レイプ、吐瀉物や排泄物を食べる、動物とのSEX、虫との絡み……など、普通なら目を背けたくなるようなかなりマニアックな分野の内容でもOKを出させることもある。高くソフトを買うその道の「通」である固定客がいるが撮影できる女優は限られているため、いつまでも需要があるのだ。
どんな仕事でもそうだが、AV女優になろうと思っても、見た目より何よりまずはやってみないと評価されない。どこで売れるか分からないし、どこで落ちるか分からない。しかも外見や声などを知らない人から好き放題言われ、ネットで何を書かれるか分からない。いちいち真に受けていたら精神がいつ崩壊してもおかしくないわよね。
女の身体ひとつでお金が稼げる。「商品」である女に群がり得をする人間がいる。それはいつの時代も変わらない。だから「AVに出るくらいなんだからSEXが好きな尻軽女」、「頼めばやらせてくれるんじゃないか」と誤解を受けることもある。彼女たちの苦悩や覚悟、価値観をなにひとつ知らないでそんなことを言う奴らは撲殺したあとに刺殺して絞め殺してやりたいわ。
人生の選択肢が狭められたり、普通の生活に戻りづらくなったりすることを彼女たちは理解しているのだ。A子~D子、宮村さんへのインタビューを終えて改めて感謝の気持ちと、同じ仕事でも様々な感情を抱きがむしゃらに生きる彼女たちに敬意を示す。
どんどん入って来る新人AV女優に負けないよう、作品を見ている側の欲求をいかにして満たすか考える。良い作品を作ろうと、綺麗に見せるためのヘアメイク、カメラワークも女優の個性や特徴によって考える。そんな数多くのスタッフがいる。
女優は男性の欲求を満たすための演技はもちろん、体型維持なども日常から想像を絶するよう努力をしている。今の時代、AV出演は人によってはプラスにもなりうるキャリアでさえある。
AV業界に足を踏み入れるまでの道はそれぞれ違うし仕事の取り組み方も違う。だが、AVというものはもはやひとつの芸術といってもいいのではないかしら。
【彼女がAV女優になったワケ バックナンバー】
序章 【AV女優というお仕事の謎に迫る】
第一章【A子の場合…元カレから逃げたくて始めたAV女優という仕事、私には向いてた】
第二章【B子の場合…AV撮影で処女喪失した童顔×Jカップの元単体女優】
第三章【C子の場合…恋よりも愛よりも金を求めたAV女優の独白】
第四章【D子の場合…両親の蒸発に病歴、妹の扶養…複雑な環境ながらも「今が楽しい」】
第五章【顔出し告白「私がAV女優になってみて…」宮村恋】
1 2