調査を続ける羽村だったが、ここで問題が発生する。実は該当患者が、名医として雑誌に紹介されていた羽村に診てもらおうと壇上記念病院を訪れていたのだが、最初に診断した井川が「縦社会の医者の世界で、恩師のミスを指摘することになるかもしれない患者を診ることはできないだろう」と羽村を気遣い、患者を沖田にまわしてしまっていたのだ。当然、沖田も山本の手術に見落としがある可能性に気づいている。このことを井川から報告された羽村が、再度手術ミスがなかったかを山本に確認すると「壇上壮大から何もミスはなかったと書くと聞いている。あいつは変わった。本当は何も変わっていなくて、俺が気づかなかっただけかもしれない」と聞かされ、壮大の狙いに気が付く。
「提携ってなんだ。山本先生を守るって言ったじゃないか」。詰め寄る羽村に、壮大は「(山本先生が)提携に同意したのは、ミスを自覚しているからなんじゃないか? 手段を選ばないのは羽村先生だろう。(井川の手術ミスを)ネットニュースに売ったのはお前だ。俺が院長になったら副院長になれる、そう思ってやったんだろう(詳しくは第2話レビュー)」と平然と答える。これまでに描かれた羽村の行動から考えれば、自身の利益のために山本のミスを隠蔽し、提携を進めるのがベストな選択だろう。だが肝心の患者を、あの沖田が診断している。ミスを隠し通せるはずがない。なにより恩師を揺する壮大が許せない。帰り際に羽村はこうもらす。「僕が本当のことを報告するって言ったら? 沖田先生が山本先生のミスを暴いたら提携の話はどうなるんだろうね」。「俺とやりあうつもりか?」
患者のオペを終え、山本の手術ミスに気づいた沖田に羽村は懇願する。「手術ミスを黙っていてほしい。山本先生は本当に素晴らしい外科医なんだ、先生を守りたい」。しかし沖田は応じない。「本当に素晴らしい外科医だったらそのまま閉じたりしない。山本はミスに気づいていたのに、(違う手術を行えば、自身が報告したい手術の)症例として報告できないからそれを無視した。まわりも権威ある大先生だから止めなかった。患者は自分の身体になにが起きているのか知りたがっている。明日話します。本当は分かっているんじゃないですか? これ以上誤魔化しきれないし、ちゃんと向き合わないといけないってこと」。
羽村は報告書を前に、沖田の言葉を反芻していた。
後日、羽村は医学会から「恩師なのに公正な判断をしてくれた」とお礼があったこと、そして山本がミスを認め、病院を辞めたことを壮大によって報告される。羽村は事実を隠さずに報告したのだ。
壮大「残念だよ、俺はこれからも守るものを守っていくから」
羽村「綺麗事をいうなよ」
壮大「お前だろう、結局何を守れた?」
羽村「ぼくは最後まで山本先生を守ろうとした」
壮大「お前は自分を守ったんだよ」
羽村はいったい何を守ったのか。
控え室に戻るやいなや羽村は、沖田の頬を張り、胸倉を掴む。「君が殺したんだ! 沖田先生がひとりの優秀な外科医を殺したんだ! 何も守るものがない君にはわからない。気楽でいいよな!」。何も守るものがない――その言葉に沖田も激高する。沖田がひとりで深冬の脳腫瘍の手術を考えていることを知っている井川は、ふたりを仲裁しようとする。常に冷静沈着で、井川には「熱くなってはいけない。医者にとって大事なのは冷静な判断だ」と語っていたあの羽村が、珍しく感情的になった。だが、正しい判断をした。まるで沖田のように。