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面倒な母からも妻からも逃げた「夫」がついに登場/『カルテット』第五話レビュー

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 ピアニスト若田さんの会場入りが遅れ、五重奏のリハーサルができないというアクシデントが発生。リハなしで演奏するのは無理、だから音源を流しそれに合わせて演奏しているフリをしろと要求されました。この屈辱に、すずめは泣きそうな表情で「私そんなの絶対いやです」。愉高「やる必要ない。僕らは奏者なんだよ。フリだけしろなんて馬鹿にしている」。司「(自分の弟を介しての仕事だったため)すいません」。やりきれないですよね。こんな仕事断りたくなりますよね。しかし傷心の3人の気持ちを切り替えたのは、真紀でした。

真紀「やりましょう。ステージ立ちましょう。だって、元々信じられないことだったじゃないですか。私たち奏者として全然なのにプロを名乗る資格ないのに、普通の人ができるようなこともできないのに、あんなに褒められて大きいホールで演奏できるって聞いて、嘘でしょって思ってたじゃないですか。それやっぱりその通りだったんですよ。これが私たちの実力なんだと思います。現実なんだと思います」「そしたらやってやりましょうよ。しっかり三流の自覚持って社会人失格の自覚持って、精一杯全力出して演奏してるフリしましょう。プロの仕事を、カルテットドーナツホールとしての夢を見せつけてやりましょう」

 捨てられた女・真紀の、図太く強かな提案に他の3人も気持ちを切り替え、カルテットドーナツホールは演奏しているフリを決行。公演を終えて会場を去る4人を見送りながら、朝木は「志ある三流は、四流だからね」とつぶやきました。四流って……三流なのに志があるとかえって足かせになる、ということかもしれません。本番で演奏し損ねた4人は帰り道、司の誘導でストリート演奏を行って憂さ晴らし。通行人がやけにノリがよく、喝采を浴びた4人は気持ちよさそうでした。

第二の山場・真紀は夫を殺したのか

 さあ、これでも今回の山場はまだ“ひとつ”しか越えていません。彼らの居場所である軽井沢の別荘は司祖父の持ち物ですが、別府家ではこれを売るという話が持ち上がっています。すずめは境子から「もういらない」と言われ、新たなスパイ・有朱が早くも暗躍をはじめました。有朱はアキバ(地下アイドル)時代に使っていた衣装を譲ると別荘を訪れ、不要なものでも人にあげるなんてキャラに似合わないことしてまで真紀に接近(単純に野次馬根性もあるんだろうが)。ポケットからボイスレコーダーが丸見えで、すずめは有朱が自分に取って代わるスパイになったのだと気づきました。そして、お待ちかね、坂元脚本名物の会話劇のはじまりです。

 ボイスレコーダーの録音スイッチを入れ、ケータイの盗み見、浮気の是非を真紀に問いかけていく有朱、いつにも増してうざい女です。吉岡里帆の怪演ぶり!

有朱「夫婦って嘘で成り立ってるものでしょ」
真紀「夫婦だって嘘がないほうがいいよ」
有朱「真紀さんは既婚ですよね ご主人嘘をつかない人ですか ご主人と本音で話してるんですか」「今主婦業どうしてるんですか。おうち空けててご主人に怒られないですか?」

 有朱の目的に気づいているすずめは、有朱が際どい質問をする毎に遮ろうとしますが、有朱は怯みません。

有朱「ご自宅東京ですよね」
真紀「夫は今いないんです 一年前にいなくなっちゃって」
有朱「え、家出系ですか なんでですか」
すずめ「理由とか聞かなくていいじゃないですか」
有朱「え、ダメなんですか? だって真紀さんが」
すずめ「それを 聞き出すみたいなことするから」
有朱「ダメなんですか? 知りたくないですか?」
真紀「私もわかんないけど、夫とは多分、私の片思いだったのかなって」
有朱「夫に片思い」
真紀「夫もきっとズボン履いて隠していたの、もう恋愛感情がないってこと」
有朱「夫婦で普通、恋愛感情ってないものでしょ」
真紀「そうかな でもドキドキする気持ちって夫婦にもあったほうがいいじゃない。その気持ちがないのに続けるのってやっぱり偽りって思う」

 ここから有朱の勢いが止まりません。すずめも真紀も引いているし、土足でズカズカ他人の心に入り込もうとする有朱の無礼に怒っているし、この先この子と笑顔で会話する自信ないわ~ってなっているはずです。そうなったらスパイ活動に支障が出るのに、有朱はもうそんなことどうでもよくて、もはやムキになって持論を展開しているだけのように見えます。真紀が夫を殺したはずだ、という結論を急ぎすぎているきらいもあります。

真紀「私に何か思っていることがあるの?」
有朱「結局、ご主人どうしていなくなったんですか?」
真紀「それはわからない、わからないっていうか」
すずめ「真紀さん、いいですよ答えなくて」
真紀「わからないけど、ただ……」
有朱「ご主人もう生きていないかもしれませんね」

 真紀が「ロールケーキ食べようか~」と席を立つも追いかけ、真紀の夫殺人疑惑を追及しようとする有朱のポケットから、ボイスレコーダーが落ちました。真紀が素早く拾って再生すると、その小さなボイスレコーダーからは、真紀が別荘にやって来た当日からの会話が録音されているのでした。すずめと真紀が二人きりでいたときの、会話も(とってもデータ容量の大きいレコーダーですね)。

有朱「ごめんなさい、真紀さんのご主人のお母さんに頼まれたんです。あの人おかしいんですよ。真紀さんがご主人を殺したって言うんですよ。私たちは絶対妄想だって思ってたから。真紀さんのこと信じてたし。ね? 調べてあげようと思って。ね?」

 スパイ行為をしていたなんて、真紀に知られたくなかった……すずめはもう何も言えず別荘を飛び出しました。夜になって愉高、司が別荘に戻ってきても、すずめはまだ帰りません。夜道をあてもなく歩くすずめは、中年男性(宮藤官九郎)とぶつかります。マスクして、雨でも雪でもないのにダウンのフードを被り、ペットボトルやらビニール袋やら細々したものをユニクロのショップ袋に入れ、包帯の巻かれた右手からは血が滲み、挙動不審でちょっとヤバいその男は、カルテットドーナツホールのチラシを持っていました。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー