
最新著書でも肩書は“バースコーディネーター”。Amazon
ロマンチックに誕生を語ると、なぜ子どもの自己肯定感が高まるのか? 私にセンスがないせいでしょうか。〈誕生学〉の謳う狙いが、何がなんだかさっぱり理解できません。
▼前篇:「誕生学」入門講座に潜入! 出産をキラキラ語り、感動を押し売りする罪深さ
誕生学とは〈生まれてきたことが嬉しくなると、未来が楽しくなる〉をコンセプトに、〈いのちのストーリーをロマンチックに伝えるメソッド〉を提唱している、教育プログラムです。その講座へ実際に参加してみたことは上記の記事でお伝えしたとおりですが、〈公益社団法人誕生学協会認定誕生学アドバイザー〉なる肩書を持つ講師が、受精卵が胎児となりどのように生まれてくるのかという一般的な過程について、これでもかと〈エモーショナル〉に語るだけという、ズッコケ気分満載の講座でした。
誕生学を紹介する書籍『Life 誕生学の現場から』(ポプラ社)には、「子どもたちをこの荒波の社会から守る大人を増やすだけでなく、子どもたち自身が自分で自分を守れるように、『自尊感情』という羅針盤を渡してあげましょう」とありましたが、みずから涙ぐみながら「感動的でしょ!?」と畳みかけるようなトークをすれば子どもの〈自尊感情〉が高まると本気で思えるなら、かなりの〈おめでたい人〉。
しかし同書の著者であり、このメソッドを生み出した提唱者・大葉ナナコ氏は、エッセイストの横森理香氏や漫画家の桜沢エリカ氏など、有名人と親交が深いことでも有名で、カリスマ性のある人物のよう。一体彼女の何が多くの人を惹き付けるのか?
そんな疑問から著作にざっと目を通してみると……当連載の、ウオッチング対象ど真ん中である〈超自然派〉でありました。出るわ出るわ、衝撃的な発言の数々!
そもそも〈バースコーディネーター〉という肩書を掲げる大葉ナナコ氏は、妊娠出産の現場に日々携わっている医療従事者でもなく、〈5人の子どもを生んだ出産育児の先輩〉とでもいうところでしょうか。著作を読んだ後の印象は〈ボスママの育児語り〉。ですから発言に専門家としての責任はないのかもしれません。しかしだからと言って、官公庁の委員も務め、公の場で子どもたちや親へ指導をする立場の人が、こんな発言をするなんて! と恐怖を感じたポイントをご紹介していきましょう。※太字部分は大葉氏著書からの引用。
「不満が残るお産」という呪い
何からご紹介すればいいのか迷ってしまうほど盛りだくさんなのですが、まずは当連載でも定番ネタになっている〈自然なお産〉からいってみましょう。
2007年に第1版が発売されている『体と心にやさしいナチュラルなお産』(アスペクト)は、タイトルもズバリそのまんまですね。冒頭では二極分化されたキャラクター〈ケミコ〉と〈ナチュミ〉が登場し、「女性なら誰しもケミコさん的な素質と、ナチュミさん的な素質と、半々でお持ちでしょうし、どちらの選択がいい、悪いということでは決してありません」とフォローしながら、自然派とはほど遠い嗜好のケミコをこき下ろしまくります。
イメージ先行型のケミコはブランド産院で無痛分娩、妊娠中の食生活やボディケアもがんばるもののどこか空回りで結局は体を冷やしまくり、最終的には不満の残るお産になり産後も母乳の出は悪く夫の理解もないはでつらいことばかり。一方勉強熱心なナチュミは助産師を頼りにツボ押しやお灸、玄米生活などでのんびりすごし、お産もバッチリ夫と協力して楽しく完了。産後は夫の助けを借りて母乳育児をがんばり、それなりに大変だけどのんびり構えてハッピー! といったところです。