
(画像:『カルテット』公式サイトより)
1年前に姿をくらましていた真紀(松たか子)の夫さん・幹生(宮藤官九郎)がやっと姿を現したと思ったら、まさかのコンビニ強盗という罪を犯していて、ラスト数分というところでさらに罪を重ねる模様が猛スピードで展開された『カルテット』第六話。視聴者はただただ驚愕、まさにもう目が回りそうって感じの心境でした。そして迎えた第七話、夫婦の終わりがきっちり描かれました。
カルテット4人が共同生活を営む軽井沢の別荘にて、自分たち夫婦がいかに壊れざるを得なかったのかをすずめ(満島ひかり)に語った幹生。語りつくしたと思しきタイミングで、すずめはスマホを構え通報の姿勢を見せたため幹生は取り急ぎ通報を阻止すべくすずめの手足口をテープで拘束しました。時を同じくしてライブレストラン「ノクターン」のアルバイト店員・有朱(吉岡里帆)が別荘に忍び込み、真紀のヴァイオリンを盗みにかかるや幹生と鉢合わせ、もみ合った拍子に有朱は2階テラスから転落……死んじゃったかも、ヤバくね? そんなときに限って真紀、愉高(高橋一生)、司(松田龍平)は不在だし……。ここまでが六話。ある日の午前中の出来事、というところでしょうか。第七話は午後~夜まで。ま、後述しますが、この“時間軸”もどこまで本当なのかわからないのですけれど……。
▼大量の謎と伏線を散りばめた大人ドラマのはじまり/『カルテット』第一話レビュー
▼松田龍平のストーカー告白、ずるい濡れ場!「捨てられた女舐めんな」「今日だけのことだよ」/『カルテット』第二話レビュー
▼家族を捨ててもいいし、会いたくないなら逃げていい。/『カルテット』第三話レビュー
▼満を持して高橋一生回!夫婦とは、結婚とは、離婚とは…「男って他人の言うことは信じるのに、妻の言うことは信じない」/『カルテット』第四話レビュー
▼面倒な母からも妻からも逃げた「夫」がついに登場/『カルテット』第五話レビュー
▼夫婦が結婚生活を続けられなくなった理由を、これ以上ない説得力で伝えている/『カルテット』第六話レビュー
まだ夫に片思いしている真紀
七話の始まりは、事件――有朱が真紀のヴァイオリンを盗むべく別荘に侵入し幹生に突き落とされるという事件、の起こる少し前に何があったのかを見せてくれました。賞金稼ぎのため“青いふぐりの猿”を探しに雪山を訪れた愉高は有朱を伴っていました。事情は明かされないけれど、お金が欲しいらしい有朱は、愉高に「楽器はメルカリで高く売れるのか」訊き、「僕の(ヴィオラ)は売れないけど真紀さんのヴァイオリンなら高値なんじゃない?」と答えを得るや、いかにもワルそうな顔つきを見せます。愉高のダウンジャケットのポケットから滑り落ちた別荘の鍵をパクり、今この時間別荘には誰もいないことまで聞き出して、有朱は「私ちょっと向こう探してきますね~」と満面の笑顔で雪山を駆け抜けていきました。二人で乗ってきた「ノクターン」の車両を慣れた手つきで運転し、一路、別荘へ向かう有朱。別荘侵入及び楽器盗難の理由は察するにメルカリ出品が目的だったわけですね。
その頃、別荘ではすずめが“自ら”自分の足と口をテープで拘束中。幹生はすずめの大事な大事なチェロを人質にし、通報を思いとどまるよう要求、「ほんとすいません」「恐縮です」と低姿勢な口調ながら、すずめ監禁に至ったのでした。で、階下に降りた幹生と、楽器盗難メルカリ出品をぱっと思いつきぱっと別荘侵入して真紀のヴァイオリン抱えちゃっている有朱は見事に遭遇。2階テラスにて、ヴァイオリンをめぐる死闘を繰り広げた結果、有朱はテラスから雪深い地面にドボン! 映像で見る限り、いかにもはずみって感じです……。幹生は119番通報を試みますが出来ず、別荘の外で困り果てているところに真紀が帰宅しました。
ついに、ついに再会を果たした真紀と幹生夫婦。夫さんを「幹生」と呼び捨てにする真紀(幹生は「真紀ちゃん」)、相変わらず夫の世話をかいがいしく焼く真紀、鏡でさっと髪を整え口紅を塗る真紀……。幹生が浜松でコンビニ強盗したことを告白すると「警察行こう」「逃げたって絶対捕まるよ」「幹生が帰ってくるの待ってるから」「あ、待たれるの嫌だったら帰ってくる場所だけ用意しとくから」と説得をはじめる真紀……。彼女が自ら語っていたように<夫に片思いしている>ことが圧倒的な勢いで伝わります。
幹生が「人殺しちゃった」と告白すると、さすがの真紀も言葉を失いますが、彼女に迷惑をかけるまいと離婚を口にする幹生に、真紀がした提案は「逃げよう」。「逃げて誰もいないところで一緒に暮らそう」「一緒にいるの嫌なら、いい距離置くようにするから」と。「やったの俺だから」と真紀を巻き込むことを躊躇う幹生と対照的に、「まだ夫婦だよ」と真っ直ぐな視線を向ける真紀に迷いはありません。
幹生「ちゃんと離婚届出そう。真紀ちゃんはもうちゃんと自分の人生を……」
真紀「いいよ自分のなんか、面白くないもん! こんな人間の人生なんかいらないもん」
予告で流れた「こんな人間の人生なんか――」という台詞は、夫さんじゃなく、有朱のことでもなく、真紀自身のことだったのですね。真紀は監禁中のすずめを解放せず、「別府さんと家森さんが帰ってくるまでもう少しだけ我慢してね」「ちょっと出かけてくるね」と事実上の別れを告げました。やっと会えた夫、彼のことしか今、真紀は考えていません。
巻夫妻(真紀&幹生)は協力して有朱の遺体を寝袋に詰め、ワゴン車に運び込みました。ここからはじまる終わりの始まり逃避行。かと思いきや、違いました。運転席についた幹生は「この辺にさあ、でっかい湖とかあるかな。俺、この人と沈んでくる。ごめん、真紀ちゃんに甘えられる立場じゃなかったわ。警察が来たらさ、なんか、愛人が逃げたとか適当言って」と、この期に及んでまた、真紀を置いてけぼりにし発車してしまいました。弱々しい笑みを浮かべ「じゃ」と、出発した幹生に呆然の真紀、すぐさま「ノクターン」の車(有朱が乗ってきたやつ)に乗り込み、幹生を追いかけます。みんな車にキー差しっぱなし~。さらに自ら拘束を解いたすずめも、ちょうど偶然タクシーで別荘に乗り付けた幹生の母・境子に留守を頼み、そのタクシーに飛び乗って真紀たちを探しに町へ向かいました。