ソロ歌手デビューをしたソニンは裸にエプロン姿のCDジャケットが印象的な『カレーライスの女』でスマッシュヒットを飛ばすものの、次第に鳴かず飛ばずに。そしてまたもや崖っぷち状態に陥った時、女優・大竹しのぶが出演する舞台を観劇し、その演技に強く感動する。その後、ソニンも初めてのミュージカル舞台に出演するためオーディションで役を勝ち取り、初舞台で憧れの大竹しのぶと共演することになったのだという。ここが彼女の大きな転機となったようだ。
舞台女優こそが自分の求めていた場所だと気づいた彼女は、歌と演技と踊りを本格的に学ぶためにミュージカルの本場NYへの留学を決意する。当時、事務所は1年以上にも及ぶ留学を猛烈に反対したが、彼女はこのときはじめて事務所に「NO」を宣言し留学を決行した。自分の居場所に気づいたことで、指示待ち人間ではなくなったということだろう。そして指示待ち人間でなくなったことは、彼女自身のメンタルとそして人生までをも大きく変えることとなっていく。
留学を経て帰国し、いまや舞台には欠かせない存在となったソニン。筆者も何度か舞台でその姿を拝見したことがある。童顔でキュートなルックス、よく通り聞きやすい声、ハリがあって力強い歌声などに加えて、舞台の上に立つ彼女には元アイドルならではの独特の華がある。演技も安定しており、好きな舞台女優さんのひとりだ。2016年には過去に錚々たる役者が受賞している菊田一夫演劇賞を受賞しており、今後の活躍も楽しみで仕方ない。
『しくじり先生』の最後でソニンは涙ながらにこう言った「努力は必ず報われます」「きっと見ていてくれる人がいます」「人生に無駄はない」――。ふだんなら「そんな耳当たりのいい言葉を言われてもね」と斜に構えてしまうようなワードでもあるが、番組内のソニンの言葉はひどく心に沁みた。それまで起こったことは、すべてソニンのしくじりのせいだろうか? ユニット解散は不運が重なったせいだし、若かった彼女が周囲に巻き込まれて自我を見失ってしまったことを責めることは酷だろう。ただ、それらの苦難があってこそいまのソニンがあるのだと、彼女自身が過去を肯定できていることは確かのようだった。
(エリザベス松本)
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