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人生をやり直したのは「普通」に生きたかったから、もうやり直したくないのは今が幸せだから/『カルテット』第九話レビュー

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 翌日の夜。ライブレストラン「ノクターン」にて、カルテットドーナツホールの週末だけの定期演奏会が開かれました。客席には刑事たちの姿があります。最後の曲は「モルダウ」。「モルダウ」は、第一話、結成したばかりのカルテットドーナツホールが「ノクターン」にて初演奏した時にも演奏されていた曲で、弦楽器初心者である役者たちにとって難易度の高い楽曲だそうです。初回では、謎だらけで腹に一物ありそうな4人の演奏する姿がひとりずつ映し出され、彼ら彼女らの心にはどんな思いが交錯しているのだろう、と考え込んでしまったものです。

 終演し、真紀はいよいよ行かなくてはなりません。あくまでいつも通り、明日の朝のパンがないから買って帰らなきゃとか、シャンプーの買い置きとか、普通の生活の話をしたい彼ら。でも、真紀はこのあと一緒に別荘に帰ることは出来ないのです。

 真紀は一人ずつ、言葉をかけます。愉高には「私も、人生やり直しスイッチはもう押さないと思います」。司には「あの日カラオケボックスで会えたのはやっぱり運命だったんじゃないかな」。そして、真紀をもっとも慕っていたすずめには(司がいるので、そう言っていいのかわかりませんが)、ヴァイオリンケースを託します。真紀の誕生日は、8月10日ではなく、本当は6月1日。「(ヴァイオリンと)一緒に待ってるね」と応じるところがすずめらしい。けれど真紀が行ってしまうと、すずめは泣き崩れるしかありませんでした。

 真紀は富山県警の車に乗り込み、大菅刑事らとともに軽井沢を去っていきました。真紀ともっと早くに出会っていれば……とすずめは言っていましたが、真紀もまた、もっと早くにすずめと出会っていればと思いを馳せているようで、前回の“全員、片想い”をも超える切なさ、やりきれなさが、第九話にはありました。というか、前回すずめが「好きな人(司)の好きな人(真紀)のことも私は好き」って言っていたのが、今回より一層説得性を帯びたような。困難の多い子ども時代を過ごし、大人になってからも過去から逃れられなかった孤独な女である真紀とすずめは、嘘を介しながらも、“嘘のない信頼関係”を芽生えさせていました。正直、最初はここまで女性2人の絆がクローズアップされるとは思っていなかったです。真紀不在の食卓で、残されたカルテットメンバー3人が、すずめの作った夕食を食べるシーンをもって、第九話は終了しました。

 来週はいよいよ最終回。真紀、すずめ、愉高、司。4人のこの先の人生はどこへ向かっていくのでしょう。これまで散々視聴者をびっくりさせてきた『カルテット』ですので、やっぱり最後の最後の最後まで見当がつかないし、目が離せません。

 ちなみに「ノクターン」の目が笑っていないアルバイト店員・有朱(吉岡里帆)は、お店をクビになりました。シェフの大二郎(富澤たけし)に色時掛けするも全く効果ナシで(愛人になってカネをせびろうとしたのでしょう)、現場を大二郎の妻・多可美(八木亜希子)に見られたのに悪びれない有朱、でも当たり前に即日解雇です。別れ際、「不思議の国に連れてっちゃうぞぉ~(2回繰り返し)、有朱でした、バイバイ♡」と元地下アイドルらしい決めポーズで去っていった有朱ちゃん、もちろん目は笑っていませんでした。この子は最終回にも出てくるんでしょうか。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

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