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吹かずに鑑賞できない昼ドラ。ジャニーズを両手に行き着く先は天国、それとも地獄?

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『天国の恋』公式ホームページより

『天国の恋』公式ホームページより

 社会現象となったNHKドラマ『あまちゃん』。いつしか『あまちゃん』を見ることが日課、そして生き甲斐になっていた主婦たちは、ドラマ放送終了後の喪失感から“あまロス”に陥っていたという。その“あまロス”の救世主として話題になっているのが、現在フジテレビ系で放送中の昼ドラ『天国の恋』である。『あまちゃん』とは似ても似つかないストーリーだが、昼時の“誰にも邪魔されることなく”、“ひとりで見ることができる”という主婦のほっこりタイムに潤いをもたらしている模様。

 脚本は、これまでに『真珠婦人』『牡丹と薔薇』『赤い糸の女』というメガトン級のインパクトを残した昼ドラを手がけたあの中島丈博氏。“溺れる”というキャッチフレーズが物語っているように、今回もドロドロ具合が半端ない。

 このドラマの主人公は、床嶋佳子さん演じるアラフォー主婦の斎。旦那との関係はとうに冷えきっており、惰性で毎日を送っている。ある日、ひょんなきっかけで2人の若い男性と恋に落ち、様々なトラブルを経て真実の愛に目覚めていく……という、THE 昼ドラといった内容。そのアクの強いストーリーもさることながら、2人の若い男性を演じるのは内博貴と高田翔というジャニーズのW出演やスピード感がありすぎる話の流れ、そして毎度のように炸裂する数々の名言は、主な視聴者であろう主婦たちの心をとらえて離さない。

ツッコミ不可避! 強引すぎる登場人物たち

 まず、斎と高田翔演じる志田くんの出会いのシーン。斎の旦那が営む古本屋で、官能小説を万引きしようとした志田。斎は万引きに気づき、志田をつかまえようとしたはずみで、志田のアソコをつかんでしまい、それをきっかけに忘れていた自分の中の“女”が目覚める。アソコの感触で女が目覚める可能性は否定できないが、つかまえようとしてそこに手がいくって、あるのか? という疑問がわく。しかし、このドラマにおいてこの程度のツッコミポイントは日常茶飯事なのだ。

 斎の家庭環境はかなり複雑で、育ての両親や義理の両親が出てきたりするのだが、父の邦英(石田純一)にしても、邦英の愛人で斎の実の母である徳美(毬谷友子)にしても、斎の親世代という設定には無理がある。よくて兄弟、姉妹ではないか。その邦英は、ブーツにスリッパを履いて一家団欒の場に徳美が乱入してきた(!)シーンで「あぁぁーッ! これが我が家だ! 我が家のエネルギーの、爆発だあーッ!」という名言を放ち、場を収めたりしている。この場面は完全にコント。

 このドラマのひとつの見物といえるのが、徳美の奇行っぷり。孫にあたる斎の娘を誘拐したりと、斎に対する執着心がめっぽう強い。志田と斎の不倫関係を応援し、自宅を逢瀬の場として提供したりと、斎を囲う気満々の優しさを見せたりもする。たまに出てくる、徳美が病院の婦長としてせっせと働く姿には新鮮ささえ覚えてしまう。

ジャニーズなのに毛深いのOK?

 そして、志田は「俺とラブしてくれませんか?」「毛深いの嫌いすか?」とちょっとおバカな若者ノリを武器に斎と関係を結ぶという、ジャニーズファンにとっていいのか悪いのかわからない役どころ。セミヌードを披露したが、そこには巨大なスチールウールのような付け胸毛がボン! と。ファンでなくとも「翔くんにそんなことさせるなんて……やめてーっ!」と言いたくなってしまう。

 一方、斎の職場である葬儀屋の社長の息子として最近登場した、内博貴演じる潮は、初恋の人に激似との理由で斎の心をグイグイ動かし始めている。自分の勤務先の社長の息子と、いとも簡単に2人きりでワインバーに行くアラフォー主婦。ついこの前まで葬儀の仕事の後は決まって「天国に行きたい」と謎のセリフを誘い文句に、志田の若い体に身を委ねていたのに……。女心と秋の空とはこのことか。

 人物相関図が複雑で、関係性をつかむのも一苦労の『天国の恋』。しかしそこには、非日常感と欲望のままに突き進む斎の“普通っぽいのに誰よりも普通じゃない”生き様がたっぷりとつまっている。今のところ、エンディングが全く読めない本作。昼下がりのひとときを現実逃避タイムにしたい方はぜひご覧あれ!
(シュガー乙子)