57歳の今が、1番ビンビン
加藤 言葉は悪いけど、実は100%ギンギンに勃起して仕事をしている男優って、ほぼいないのよ。俺はゼロか100しかないタイプだったんだけど。俺の場合、40半ばの頃かなぁ。いつも100で仕事をしていたんだけど、70%くらいの感覚が続いていた時期があったんだ。傍からみると遜色ないと言われるけど、自分では「100じゃないな」という感覚ってわかるんだよね。そういう時期が結構続いたの。
――それはスランプだった、ということですか?
加藤 そうなんだよ。でも、「まぁまぁまぁ、俺も年だしね。ロボットじゃないし、ダメだったらしょうがないか」と開き直った瞬間、戻ったんだ。男ってさ、エッチするときは、「相手のことを気持よくしなきゃいけない」とか、「そうするべきだ」とか、色んなことを勝手に考えるんだけど、そんなことは二の次だったな。スランプのとき、神の声……というか、俺は死んだばあさんの声だと思っているんだけど、「元気で仕事できてりゃいいじゃねぇか」と聞こえたんだ。でも、最初はそれが受け入れられなかったんだ。「加藤鷹たるもの、こうなるべきではない」と、自分と戦ったりもしていたんだけど、まぁでも「若返ることはないし、ダメなときはスパッと辞めればいいんだから」と受け入れた50歳頃から、逆に若い頃よりも元気になったんだよね。で、AVを辞めてから今、さらに元気になった。
――57歳の今の方が、ですか。
加藤 現役時代は、自分では気づかないストレスみたいなものがすごくたくさんあったんだと思うよ。今は風俗レポの仕事で、「おっさん、本当にスケベだな。いい歳こいて、ちんこビンビンにしちゃって恥ずかしくないの~?」というもうひとりの自分がいるんだけどね。
――でも、本当に体力仕事ですよね。
加藤 それは思ったことはないなぁ。そもそも体力を消耗する行為だと思っていない。癒やされて幸せになったり気分がよくなる行為だと思ったことはあるけどね。
――プライベートのセックスはそうかもしれませんが、仕事だと、“鷹さんらしいセックス”とはかけ離れたものを求められることもあるわけじゃないですか。
加藤 昔はあったね。「駅弁、やってもらっていいですか?」みたいな。「え〜! そんなのチョコ(※チョコボール向井)に頼んでよ〜」と言いつつ、一応できる範囲でやったけど、「あ〜無理! やっぱ俺、無理!」ってすぐに降ろしちゃう。だって、出来ないもんは出来ないじゃーん。
――90年代は、鷹さんとチョコさんが男優の二大巨頭でした。
加藤 単純に、俺とチョコが、何も気にせずメディアに出て行ったからそう認知されているだけなんだよね。俺たち以外は、メディア出演を断っていた男優が多かったと思う。ちなみに、今は男優も女優もメディアに出ることが多くなってきたけど、メディアに出る=作品が売れる、というわけでもないんだよね。
“ゴールドフィンガー”という“虚像”と闘ってた
加藤 今、この業界は上がっていくことはないかもしれないけど、下降していくのを止めるために、業界人がどうすべきか、その方法を考えていくことは大事だよね。
――AVから離れたからこそ、鷹さんは客観的にアドバイスできる立ち位置にいるかもしれないですよね。
加藤 気にはなるんですよ。一徹とか、若い男優のことも。
――エロメンの一徹さんですね。
加藤 もしかしたら、彼らからすると、そう呼ばれること自体が悩みかもしれないよね。俺、いつも思うんだけどさ、男優も女優も、“虚像”だから。俺みたいなおっさんになったら割りきって出来るかもしれないけど、今の若い男優は色々と悩んでいるかもね。これは俺の想像だけどさ。
――でも、鷹さん自身も結構キャラクターをつけられていたと思いますが、現役当時はどうでしたか?
加藤 “カリスマ”とか、“ゴールドフィンガー”とか言われるって、嬉しくないもん。やっぱり、そういう“虚像”と自分自身が闘う時期があるんですよ。だから、若い奴らもそうなのかなぁ、と。甘んじて受けている時期もあるかもしれないけど、やっぱり人間だから、詰まってくるときもあるだろうしね。
――自分自身との闘いなんですね。
加藤 俺は、みなさんが思っている「加藤鷹」を壊さないことしか考えていない。それはしんどいことですよ。だから、それが壊れる前に、AVから離れただけ。さっきも言ったように、俺だって早漏のときもあるし、SかMかでいえば、間違いなくドMだし。好きな相手とヤッたらすぐにイッちゃうかもしれないし。プライベートでは手マンなんてやったことないし。……というのが、本当の自分。でもみなさんの知っている「加藤鷹」は、それでもないわけじゃない? それにしても、「加藤鷹」も30年か……再来年、還暦だよ。