毎月新作を披露するイベントでは、ほんとはお客さんに入場料無料で見てもらいたいのだが、それはさすがに無理だと事務所に反対されてしまったので、最低金額の入場料である500円に料金設定したのだとか。大吉先生は「(500円だから)その代わり、スベっても知らないよ」「新ネタだから(しょうがないじゃん)」という気負いのない気持ちで新作を発表しているのだと吐露した。
華丸さんは「500円分ぐらいは見せたんじゃないかな〜って、後から言えるじゃないですか」「これが2000円取ってたらね、(面白くなかった場合は)『今の2000円ですか!?』って(クレームに)なるじゃないですか」と、新作ゆえに荒削りで面白いかどうか分からないので、500円ぐらいしか入場料が取れないのだと明かした。荒削りとはいえ、華大さんの新作漫才がたった500円で見られるなんて、激安過ぎる〜! 売れっ子コンビだからチケットの競争率高そうだなぁ……。
華大さんが語った吉本に入った当時のエピソードによると、事務所から「お前らは絶対に無理だ!」「”なんばグランド花月”という大阪の劇場にお前らはどんだけ頑張っても立てない、なぜならお前らが博多弁だからだ!」という厳しい言葉を掛けられたのだとか。しかも、事務所に入って三日目にそれを言われたらしく、大吉先生は「鼻を折るならわかるよ、夢を折るってなんちゅう会社だ!」と落胆したそうだ。そこから芸人人生が始まっているので、いまや聖域であるその大阪の劇場でも博多弁の漫才師として舞台に立てることがありがたいし、大事にしていきたい場所であることを吐露した。
ガツガツしない育ちとは
そんな華大さんのスローガンは「目標は平均点」なのだとか。自分たちが出演する番組の先週・先々週あたりのゲストのVTRを見て、どれくらいの笑いを取れればいいかの平均値を確認してから番組に挑むらしい。MCの大沢あかねが「芸人さんだったら前に出てガツガツ笑いを取るのでは?」と質問すると、大吉先生は「そういうのが僕らないんですよ」「育ちなんですよ、これ」と語り出した。
なんでも、福岡時代の番組作りが変わっていたようで、『土スタ』のようなフリーのトーク番組などでも、二日前から出演者を含めて本番さながらのリハーサルをやるらしい。定年間近となった年配のカメラスイッチャー担当のスタッフが最高権力を持っていたそうで、その人がカメラスイッチを番号通りに押せば画面が変わって順に出演者が映るように全部段取りをするのだとか。そこでは一切アドリブを禁止されていたので、そのせいで番組では余計なことをやっちゃいけないという精神が深く植え付けられてしまったようだ。だから今でも他の芸人さんのようにガツガツ前に出られないらしい。
今回、同局で歌番組のMCに挑戦することになった華大さん。その番宣VTRが流れると、人気演歌歌手の方々と華大さんが大合唱しているシーンが映ったのだが、大吉先生はどう見ても口パクであった。それを番組の途中から登場したNHK-BSのイメージキャラクターである“ななみちゃん”(犬っぽいまるまるとした白い二頭身の体に、大きな黒い瞳が愛らしい不思議な生物のキャラクター)に指摘され、さらに「ここで(歌の)練習しちゃおうよ!」と悪魔のような無茶ブリを振られた。
マイクを渡された大吉先生はその場でひとり立たされて「上を向いて歩こう」を歌わされてしまった。大吉先生が音痴であることはテレビ的にかなり有名な話であるのだが、なんという公開処刑……。大吉先生は、ななみちゃんに「大人だから泣かないんだよ〜」と辱めを訴えるのだった。
番組ではこの他にもたくさんのエピソードを聞くことができて、そのどれもが華大さんの謙虚さが伝わるものばかりであった。謙虚過ぎて、時に大吉先生は自虐ネタを乱発することもあるが、それも大吉先生の味となっていてとても面白い。そして、番組を見ていて何より嬉しかったのは、博多華丸・大吉のお二人がとても仲が良いということである。キャリアが長いと仲違いすることもあるかとは思うが、このコンビはお互いのことがとても大好きであることがテレビ画面を通じてよく伝わってくる。面白いだけじゃなくって、ちょっと幸せになるような、仲良しほっこり感まで貰えるのがとてもありがたい。これからも博多華丸・大吉コンビの色んな“平均点”をたくさん見ていきたいと思うのだった。
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さて、読者の皆様、テレ川ビノ子のテレビレビューをご覧いただきまして、毎度ありがとうございます。私が「messy」サイトでレビューを開始させていただいてから、今回でなんと第50回目を迎えることができました! や~、50回もテレビについていろいろ書かせていただいたんですねぇ。私のレビューを読まれた方々と一緒にテレビのオモシロ感を共有することができていたのならば幸いです。これからも大好きなテレビを勝手に応援していきたいと思いますので、よろしければ今後ともビノ子レビューをご覧になって下さいませ。
■テレ川ビノ子 / テレビが大好き過ぎて、頼まれてもいないのに勝手にテレビを全般的に応援しています。おもしろテレビ万歳!
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