以前、女王様のテクニックに興味を持ち、SM界隈を徘徊していた時期がありました。
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SMの女王様といえば、高らかに笑いながら鞭で奴隷を痛めつけたり、土下座する頭をピンヒールで踏み付けてみたり、身体のあらゆる箇所を刺したり斬ったりして流血させることもあります。一般的に考えれば酷いことをしているのに、どうして「女王様」と崇められているのか? なんて素朴な疑問を持ちながらSMバーなどに足繁く通っていた私ですが、ここ最近SだのMだの言わなくなったことには理由があるのです。

『S&Mスナイパー 2002 3月号 魂の暗部を狙撃する雑誌SNIPER』ワイレア出版
女王様は虐めてるようで虐めてない
前述したような酷い行為は、相手が求めていない場合はただの暴力ですが、プロの女王様たちはマゾたちの喜ぶ方法を探り、愛を持って性癖やマゾの心と向き合ってプレイをしていました。もちろん女王様の得意なプレイや、やりたいことに無理やりマゾを付き合わせることもありますが、その主体性を持った行動に引き込まれるマゾもいます。女王様のプレイには、どんなマゾでも受け入れられる大きな愛情があるのです。
神業を繰り広げるその裏側に
女王様の神業といえば、言葉責めや緊縛、鞭さばき、さらには男の潮吹きやアナル開発など実にさまざま。仕事とはいえ、定年を過ぎた小汚いおじさんに浣腸をしたり、アナルに手を突っ込んだりと、家族や恋人でもなかなかする機会のない下のお世話もしなくてはなりません。まるで介護士や看護師のような作業もあるのですが、それすらも受け入れるのです。粗相をすれば叱りつけたりもしますが、それもプレイの一種。技を磨くために、これらの行為を何度も研修するなど、日々努力と研究を重ねています。
驚くほどの体力の持ち主
元気いっぱい! というよりは、ダークで気怠さすら感じる女王様たちですが、拘束された大男を動かす際には、怪我のないように立ったままでも全体重を支えたり、踏まれフェチのマゾのために背中の上で数時間、踏んだり飛んだり走ったり……彼女たちは、驚くほどの体力の持ち主なのです。その上、ボンテージなどのセクシーな衣装が似合う体型を維持するにも努力が必要。毎日10km以上のランニングをしたり、ジムでアスリートのような筋トレをしている女王様も少なくないのです。
女王様の日々の努力は、これでもごく一部。知れば知るほど「女王様」と呼ばれる職業に就く方々にただただ脱帽させられることばかりでした。「最近マンネリぎみだから、責めでも学んでみよっかな~☆」「パートナーを責めるのが楽しいから、SMの女王様やってみたーい♪」などの生半可な気持ちでは女王様は務まりません。
女王様たちの仕事ぶりを間近で拝見したことで、私は心から興味のある人や仲の良い友人や恋人には心を開いて愛情を注げますが、すべてのマゾに愛を持つのは難しそうなので、ここ最近「女王様」というワードから遠ざかっていたわけです。大きな愛情を持って、全身全霊ですべてのマゾを受け入れる覚悟を持っている彼女たちだからこそ、マゾたちから「女王様」と心から崇められているのでしょう。