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「呪い」を強化し、女性をバカにしているようにしか見えなかった『人は見た目が100パーセント』/第一話レビュー

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『人は見た目が100パーセント』公式サイトより

『人は見た目が100パーセント』公式サイトより

桐谷美玲主演のドラマ『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ)の初回が4月13日に放送されました。大久保ヒロミの漫画『人は見た目が100パーセント』(講談社)が原作で、これまで美容などに背を向けてきた、自称・女子になりそこねたヒト科の「女子もどき」の理系女子3名が、お洒落を研究し、「女子力」を身に着けようとするラブコメディドラマです。

初回の視聴率は9.5%と、順調と言って良さそうな滑り出し。とはいえ正直なところ「そんなにも高かったのか」と多少驚きを覚えました。はっきりいって、このドラマ、全然面白くないし、面白くなる予感がしないのです……。

昔から化粧や洋服が苦手で、クラスの女子が盛り上がっていても話に入れなかったという城之内純(桐谷美玲)は、通勤・帰宅ラッシュと逆行するよう、東京の西側にある八王子の製糸研究所を勤め先とするくらい、人の目を避けるように生きていました。しかし、保湿効果の高い繊維の開発が認められ、丸の内にある化粧品会社に研究室ごと移動することに。会社のパーティーに出席するよう命じられ、いやいやながら参加した城之内は、丸の内OLのキラキラにあてられて、舞台の上で卒倒してしまいました。

スーツ姿の城之内、昭和を思わせる古臭いワンピースを着た前田満子(水川あさみ)、着物姿の佐藤聖良(ブルゾンちえみ)という、ズレたファッションセンスの3名を見た丸の内研究センター長の国木田修(鈴木浩介)は、「われわれが提供するのはビューティーという女性にとって最上級の夢であり、それは常にキラキラと輝いて心をときめかせるものでなければならない。人は見た目が100パーセントですから」と叱責します。

丸の内にオフィスを移すという会社の決定は覆せません。城之内は「キラキラ女子の光で、私は逆光となって消えるんです」と言い転職活動を始めますが、結局うまくいかず会社にとどまることを決意します。かくして理系女子3名は、必要にかられて、ビューティー研究に勤しむことになるのでした。

誰かの、何かのためのお洒落という「呪い」の強化

男性であり、お化粧をしたことのない筆者は、お化粧をすることの難しさを体感したことがありません。過去に興味本位で「みんな化粧をどこで学ぶのか」を身近な女性たちに聞いたことがありましたが、ほとんどが独学でやっていると知って、「それはなかなか大変なことだな」と思いました。『美貌格差』(東洋経済新報社)という本では、見た目によって年収が2700万円も異なるという研究結果が紹介されていますが、こうした数字を紹介しなくとも、一般的に女性の多くが男性に比べて、見た目を判断材料にされる場面が社会的に多いことは想像できます。

だからこそ……このドラマをみていて複雑な気持ちになりました。お化粧をしたこともなければ、女性でもない筆者は、「どこまでこのドラマが現実的なのか」が想像できないのです。そして「第一目標は、理系男子に褒めてもらうこと」を目標にお化粧やファッションを学ぼうと扮装する城之内らの姿を見ていると、「このドラマは女性をバカにしているんじゃないか」と思えてなりません(同時に、理系男子をバカにしているようにも思えました)。見た目のことばかり気にする城之内たちを、いちいちコミカルに描写しているのも、その疑念に拍車をかけます。これ、いわゆる「呪い」を強化するドラマでしかないんじゃないの……と。

綺麗事かもしれませんが、女性の置かれている立場を一旦横におくと、お洒落は自分が楽しむためにする趣味でしかありません。小汚い格好をしないといった最低限の社会的なマナーは必要だと思いますが(「当たり前」とされる社会的マナーとは何かも考える余地があると思います)、かといって別に無理してお洒落をしなくてもいいでしょう。もし、このドラマが「女性は、きれいでなければならない。モテるためにお洒落をしなくてはならない」という「呪い」を解除するために、「お洒落は楽しむもの」「なぜ城之内らがここまでお洒落に奔走させられるのか」を問いかけるようなものであれば、「呪い」の解除に効果があるのかもしれません。しかし、「理系男子に褒めてもらう」「丸の内のお洒落集団には太刀打ちできない」といったセリフから推測するに、その方向に行く想像があまりできないのです。

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