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韓流ドラマのようなドロドロ恋愛はもう古い? 若い世代はSNS恋愛に移行

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Photo by Republic of Korea from Flickr

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 韓国は“インターネット大国”だ。1990年代後半から、国の積極的な政策のもと、インターネット利用環境整備が進められてきた。カカオトークやLINEといった世界的に利用者が多いサービスの発展には、韓国企業と深い関わりがある。

 加えて、スマホの普及率も高い。ソウルの地下鉄に乗っていると、老若男女問わず、最新のスマホを使いこなしている人々の姿が目に付く。腰の曲がったおばあさんが、画面をフリップしながら大声でしゃべる姿は、日本ではあまりお目にかからない風景ではないだろうか。商談中や親しい友人との会話中にも、携帯をチラチラ気にしている韓国の人々の姿も、ソウルのいたるところで見かけるようになった。

 そして、SNS利用者も着々と数を伸ばしている。2013年の時点で、韓国全国民の5割近くがSNSを利用しているという統計があり、その数はますます増えていく傾向にある。

 こうした社会背景を受けて、ソウルに住む男女の恋愛作法も、変化を遂げているようだ。

「恋人同士で電話をすることが減ったかもしれません。文字で用件だけ伝える方が楽というか……。そのかわり携帯やパソコンの前にはりつく時間が増えたかな。恋人と話している時間より、携帯でほかのだれかとコミュニケーションしている時間の方が長いですね」(30代女性・OL)

 感情をストレートにぶつけ、傷つけ合いながらも深いところで理解し合う――韓流ドラマから連想する“肉弾戦”のような恋愛は、自分を含め、周囲からも聞かなくなったという。

「いまとなっては『なんであんなに執着してたんだろう?』思うほど、20代のころは恋愛に生活を左右されていました。勉強や仕事や友だち関係もおかしくなるくらい、周りが見えなくなっていた。でも最近はSNSなんかで気軽にやりとりできるから、精神的に楽になったのかも。興味を持った相手が自分のことを好きでなくても、それほど傷つかない。それに、いろんな人とやりとりできるから、特定の男性ひとりに執着することも減りました」(同上)

リアルに会うと、冷める

 別に話を聞いた男性は、SNSのヘビーユーザーになって、恋愛に対する姿勢が変わったと話す。

「ひと昔前までは、恋人が何をやっているか気になって、用事がなくても常に電話したり顔を合わせていました。女の子の方もそれを別に嫌がらなかったし、愛情表現だと理解してくれた。でも最近は、SNSを開けばその子の行動がほとんど分かるじゃないですか。性格や趣味もオープンですからね。秘密がなくなると好奇心も萎えますよ。結局、恋人に興味がなくなって……。反対にSNSを使えば、自分の理想と思える女性を見つけることができるかもしれないんだから、ついつい目移りしちゃう」(20代後半・会社員)

 この韓国人男性は、実際にSNSで知り合った女性と恋愛関係になったこともあるという。ただ、リアルな時間を一緒に過ごるようになると、途端に興味を失ってしまうのだとか。

「会う前までは理想が膨らんで楽しいんですが、実際はSNSで書かれていることと全然違ったり、期待を裏切られる場合が多い。自分で自分のことをよく書くわけだから、鵜呑みにしちゃいけないとは思うんですけど……」

 痛手を受けない気軽な恋愛。バーチャルで理想的な恋人と無限の出会いーーどこかの怪しいマッチングサイトのような謳い文句のようにも聞こえるが、これがインターネット大国・韓国で起きている恋愛観変化の一端なのだ。

 

■河 鐘基/エンターテイメントから政治まで、韓国の社会問題を広範囲に取材。雑誌やウェブ媒体を中心にライター活動を展開中。K-POPも好きだがAKB48の方が好きという、韓流ライターにあるまじき趣味を持つ。さらに正直に言えば、ローラの方が好き。

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河鐘基

エンターテイメントから政治まで、韓国の社会問題を広範囲に取材。雑誌やウェブ媒体を中心にライター活動を展開中。K-POPも好きだがAKB48の方が好きという、韓流ライターにあるまじき趣味を持つ。さらに正直に言えば、ローラのほうが好き。