アルコールのCMは、ビールやチューハイなどはスッキリ爽やかな雰囲気、焼酎や日本酒は高齢男性を意識してしっとりした雰囲気、度数弱めの商品はまったりした雰囲気……とくっきり分かれている。第三のビール「金麦」のCMも、「ふんわり鏡月」同様、男性視聴者からは好評だが女性視聴者には受け入れがたいというあからさまなジェンダーの違いが浮き彫りになるシリーズとして有名だ(こちらもサントリー)。こちらのシリーズも画面には檀れい(45)1人だけが登場し、カメラ(=夫)に向かって語りかける構成。料理をしている檀れいの横顔や鍋をほおばる姿などがあり、視聴者に檀れいとの結婚生活を想像させる。檀れいはエネルギッシュでちょっと天然、ブリっ子でいつも家で夫の帰りを待つタイプの妻を演じている。
石田ゆり子(47)の「キリンチューハイ ビターズ」のCMシリーズも男性から好評。2017年2月から放送されている「あなたの顔編」では、石田がグラスにお酒を注ぎながらカメラ目線で「うちでくつろいでいるあなたの顔が好き。ゆるんでいいよ」「もっとゆるも」と語りかける構成だ。また、松下奈緒(32)の「クリアアサヒ プライムリッチ」のCMでは、松下がカメラに向かって「リッチしよっ」と語りかけるのが、「エッチしよっ」にしか聞こえず、それを狙っていて不快だと苦情が出た。
このように女優がカメラに向かって語りかけるアルコール飲料のCMは、小料理屋の女将やホステスという設定・シチュエーションでないにもかかわらず、女性が酒を用意し、男性に優しく飲ませようとする流れが定番だ。制作側に「お酒とはそういうものなのだ」という共通認識があるのだろう。そしてそれが、多くの女性にとって居心地のよくないものだということも、理解されはしないのだろう。
(ボンゾ)
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