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不思議と応援してしまう?「35歳ひきこもりニート」の魅力

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驚きの収入源

 さて、私が不思議に思った収入の面ですが、なんと二郎さんは大地主の長男だったのでした。『幼獣マメシバ』シリーズでは父親が亡くなった直後で、二郎さんは辺りの土地一帯の筆頭相続人、というお立場。父親の残した和風の豪邸にひきこもっていました。加えて芝家は、周辺一帯の大家さん、ということでした。『マメシバ一郎 フーテンの芝二郎』では古いアパート暮らしだったためわからなかったけれど、土地と豪邸、プラス、家賃収入まであるとんでもないぼんぼんだったのです、二郎さんは。別に長時間働いて給料を得なくても、自分と犬一匹くらい軽々と養えるお方だったのです……。残念ながら私が未来のペット・ライフに向けて、参考にできるような部分は、ありませんでした……。

 働かなくてもいい立場なのをいいことに、苦手なことから逃げ続け、別に病気でもないのにひきこもりニートになった男性、という設定であるにもかかわらず、二郎さんに対して、やっかみや嫌悪感は、湧きません。二郎さんには、イヤミな感じが一切なく、むしろ応援したくなる不思議な魅力があります。中学校時代のいじめっ子に再会、カツアゲされて逃げても、二郎さんは県道のあるところに来てしまうとそれ以上逃げることができずに、お金をとられてしまいます。35歳なのに。その様子が、本当に困っているようで、つい「がんばれ!」と思ってしまうのは、やはり佐藤二朗さんが演じているからこそ、なのだと思います。

 私は、ひきこもる必要のある人は、ひきこもればいいと思うし、苦手なことは苦手なままでもいいんじゃないかと、どちらかというと思っています。なので“主人公が苦手分野を次々と克服して「強く」なっていく”という物語は、漫画でもドラマでもあまり得意ではありません。けれど、『マメシバ一郎 フーテンの芝二郎』の二郎さんに限り、苦手を克服するところを応援したいと思うのは、彼が愛犬・一郎ちゃんと常に一緒にいるからだと思います。ちっちゃいマメシバが元気よく県道や国道や橋を渡ろうとしている後ろから、犬のリードを握り締め、歯をくいしばって追いかける二郎さんの姿には、私のようなシニカルな人間でも応援したくなってしまう力があります。

 二郎さんは、いつも淡々としているので、一郎と一緒のときも決してべたべたせず、一定の距離をもって接しています。一郎ちゃんを対等な存在として扱い、「(一郎は)僕の親友です」と言い切ります。その距離感も、私は見ていて清々しいと感じます。自分より小さい存在に対して、優位に立ちたいというエゴを感じないからです。そんな二郎さんだから、応援したくなるのだと思います。

 ちなみに映画版『幼獣マメシバ』も拝見しました。テレビ版のパラレル・ワールドという設定でテレビ版とは少し違う物語が展開されます。けれど、映画版では、テレビ版の何倍ものスケールで二郎さんが成長してしまうので、私の心はついていけませんでした。やはりテレビ版『幼獣マメシバ』のように、半径3km範囲で淡々と成長していく二郎さんを、私は応援していきたいと思ってしまうのでした。

■歯グキ露出狂/ テレビを持っていた頃も、観るのは朝の天気予報くらい、ということから推察されるように、あまりテレビとは良好な関係を築けていなかったが、地デジ化以降、それすらも放棄。テレビを所有しないまま、2年が過ぎた。2013年8月、仕事の為ようやくテレビを導入した。

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大和彩

米国の大学と美大を卒業後、日本で会社員に。しかし会社の倒産やリストラなどで次々職を失い貧困に陥いる。その状況をリアルタイムで発信したブログがきっかけとなり2013年6月より「messy」にて執筆活動を始める。著書『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』。現在はうつ、子宮内膜症、腫瘍、腰痛など闘病中。好きな食べ物は、熱いお茶。

『失職女子。 ~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで(WAVE出版)』