
赤ちゃんのようにくるまれたい?Photo by Toshimasa Ishibashi from Flickr
「ビジュアルがとんでもないことになっている」「ぶっ飛び健康法」「異様な光景」ーーネットを検索すると、そんな感想が続々と見つかる健康法〈おとなまき〉。これは、骨盤をケアする〈トコちゃんベルト〉の開発者として有名な助産師・渡辺信子氏(以下、トコちゃん先生)が新たに発信している、大人のおくるみセラピーなんだとか。
トコちゃん先生は〈S字状にカーブした丈夫な背骨に育てるには、新生児期に丸い背中を保つことが大切〉という持論のもとに、赤ちゃんの丸い姿勢を保つ〈おひな巻き〉や〈スリング〉〈ハンモック状のベッド〉を推奨。その育児法を啓蒙するセミナーで、作業療法士なるスタッフが「赤ちゃんの気持ちを理解するために、大人も丸く包まれる心地よさを体感してみるとよい」と丸い姿勢になる体操を取り入れていたところ、続々と健康効果が確認できたそう。
すると「これが広がったら、マッサージや、癒し系の整体院などはお客さんが減って経営危機になるのでは?」と妄想が大暴走したトコちゃん先生。すかさず〈おとなまき〉と命名して商標申請し、改めて新たな健康法として世に放った……という流れのようです。
その経緯が詳しく書かれていたコラムには、おとなまきのこんな効果がまとめられています。
・前屈が一気に10cmほど改善し、“だるまさんごろごろ”※がしやすくなる。※太ももの裏を持って前後にゴロゴロし、〈背骨や骨盤の形を整える〉という、トコちゃん先生の提唱する体操
・背中の痛みが取れ、楽に立てるようになる
・冷えが改善・腹直筋離開がかなり改善
・股関節の開きの悪さが改善し、アグラが組みやすくなる
・骨のズレや、筋肉・靭帯の硬さが改善し、その後の整体技術が簡単に決まる
などなど。しかも何日たっても効果が続くという、ありがたい特典付きです。
うつにならないように骨盤ケアを?
丸い姿勢で布にすっぽりくるまれるだけで、こんな効果が得られるなんて、実に不思議。先生個人のブログでは「これを家族みんなで、やり合いっこする家庭が増えると、日本人の健康・体力は、グーンと良くなると思う」と語られております。
しかし。トコちゃん先生って当連載の過去記事でもご紹介したとおり、かなりのトンデモさんなので、にわかには信じがたいものがあります。著書『トコちゃん先生の骨盤妊活ブック―幸せな妊娠・出産・育児のために』(筑摩書房)でも、骨盤が歪んでいると子宮も歪むというお説のもとに、インパクト特大なこんな記述が登場しています。
●「お母さんの骨盤が整っていなければ、赤ちゃんの首の骨に異常をきたし、後年、『新型うつ病』になる可能性があることを示唆しています」
⇒そしてうつの若者が増えたら日本が大変~! だから首の悪い子どもを産まないよう、骨盤ケアが必要なんだそうです。
●「さまざまな不調(頭痛耳鳴り吐き気めまい)を招く背骨の亜脱臼は、胎児の時の姿勢や生まれ方、新生児のときの寝かせられ方が大きく影響していると思っています」
⇒著者が多くの女性の体に触れてきた経験から、「ゆがんだ子宮の中で首やからだをそらせたりぐにゃっとねじったりしたまま何週間も固まっている赤ちゃんがたくさんいる」と実感し、そう確信したとのことです。ところで胎児が同じ姿勢でずっと固まっているかどうかって、調べられるんですかね??(素人考えですがトコちゃん先生が触ったときに、たまたま同じ位置にいただけでは?)
さらにトコちゃんベルトのHPでは、お母さんの骨盤が歪んでいると、分娩のときに赤ちゃんの肩が骨盤にひっかかり、赤ちゃんの首の骨(頸椎)がずれて歪みの原因になる。それが左右どちらかにしか向かなくなる「むきぐせ」の原因となり、おっぱいも上手に飲めなくなる。また、お母さん側も背骨が曲がっていると自律神経の働きも血流も悪くなるので、飲み残した母乳が固まり乳腺炎になりやすくなるという、授乳問題にも言及されています。