その頃はよく恵比寿にある「友達がやってる洋服屋さん」でTシャツを買ってきては仲良しの共演者たちにプレゼントしていたわ。面倒見のいい兄貴分気質の男って感じだったの。同じ生徒役の松本潤くんや成宮寛貴くんと収録合間は仲良く話してたけど、あとで聞いたら「当時は実はそんなに仲がいいわけじゃなかった。潤くんに関してはむしろ嫌いだったぐらいで(笑)。本当に仲良くなったのは『ごくせん』が終わった後」って言ってたわ。まだ若かったから、潤くんのこともナリィのこともどこかライバル視してたしね。でも蜷川幸雄さん演出の舞台『ハムレット』に出たり、映画やドラマに引っ切りなしに出演したことで演技の実力をつけて、いろんな人との出会いもあって世界が広がって、気がついたらあっという間に“大人気のイケメン俳優”になっていたのよね。街中でロケをすれば“黄色い声”があっちこっちから聞こえてきて、旬くんの後をゾロゾロ女の子たちがついて行って……。『花より男子』の花沢類さまを演じた直後なんて、そりゃあもうワ~ワ~キャ~キャ~の大合唱で、ある時、ついうっかり「旬くん、アイドルみたい」と言ってしまった時があったんだけど「俺はアイドルじゃないから。別にアイドルが悪いわけじゃないし、潤くんやニノ(二宮和也)のすごさも知ってるけど、俺は違うから。この変な“小栗旬ブーム”が一刻も早く終わることを祈ってる。時がすぎ去るのをただひたすら待つのみ」って話してたの。人気絶頂のさなかに「小栗旬ブームなんていらね~!」と自ら言えちゃう人って珍しいのよ。時に若気の至りで強がってるだけの残念な子もいるんだけど(笑)、旬くんの場合は別格だったのね。さすが舞台監督の次男坊よね。
本人は「早く終われ~」と祈ってたけど、世の中はそう簡単に“小栗旬ブーム”を手放すことはなく、案外童顔だったことも手伝って『名探偵コナン10周年ドラマスペシャル』(日本テレビ系)の工藤新一役、『花男』リターンズ、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系)と立て続けに制服姿で高校生を演じていて、旬くんったら「俺、いつまで高校生役なんだろ? もう制服を着れる年齢じゃないよ。25歳なんだからな!」なんてボヤいたりして。25歳で違和感なく高校生の制服がすごーく似合うなんて褒めたいところだけど、本人の中では“自分のやりたい道”と“世間が期待する小栗旬像”がかけ離れていることにジレンマを感じていて、20代の旬くんは何だかちょっと生きにくそうな感じだったのよね。なかなか世に出られない売れない役者友達のみんなは旬くんを羨ましがってたし、世間もまだまだ“イケメンの高校生役もできる可愛い小栗旬”を必要としていたけど、本人は「ビジュアル重視じゃない俺」を演出したかったみたいなの。