自爆夫婦の攻撃
横浜からわざわざ、美都が勤める都内の眼科医院まで診察を受けに来た美都の母親は、「涼太さんにバレたんだ~浮気(笑)」と楽しそうに笑い、「最低の母親」と不愉快な反応の娘に「最低の親子」と返します。ごもっとも。母は「覚えてる?」と、娘の挙式直前に「私の子育て、あんたに男を見る目を養わせることが出来て良かった」といった話をしたことを蒸し返し、「あんた、そもそも誰も選んでなかったんだよ。自分の幸せだけ見てた。でも浮気しても離れない男で良かったじゃ~ん」と。ふむ、香子といい母といい、涼太を妻の浮気に目を瞑る寛容な夫だと評価しているわけですね。ただし母は年の効か経験値の差か一枚上手で、「涼太さんは怖い男だよ」と言い残すのですが。
「怖い男」涼太は、思いつめた表情の妻・美都に「どうしたの? 元気ないね、何かあった?」と言えちゃう男。そして妻の不倫相手を、襲撃しちゃう男でした。休日の朝、ひとりで出かけた涼太は、なぜか有島夫妻と娘(inベビーカー)が家族だんらんしている公園を突き止め、美都のケータイから抜き取った有島のスマホ番号に電話をかけて本人確認をしたうえで、わざとぶつかって派手に転び、有島とふたりきりで話す機会をつくります。周到。
ふたりきりになったところで自分の正体を明かし、不敵な微笑みを浮かべながら「妻は子供嫌いで、子作りは努力のしようもありません。子はかすがいと言いますが、実際のところどうなんでしょう。それだけではないと信じたい」と告げて去って行った涼太。呆然と立ちすくむ有島は、美都に電話で「自分とこの旦那にバレたから俺んとこにもバラそうと押しかけてきたのか。美都、やばいわもうこれ。終わりにしよう。友達に戻ろう」とピリオドを打つのでした。有島の「友達に戻ろう」発言に、美都は「私たち、友達だったことなんか、あった?」と問いかけ、有島は「ないな」と答えるのですが、じゃあ友達でも恋人でもない彼らの関係って何だったんでしょうね? それともこれはこれで恋人ではあったのでしょうか。
家庭を壊すつもりなどサラサラない有島は、何事もなかったかのように娘と麗華に接しますが、この段階で不倫に終止符を打ったとしてもすでに麗華には8割方バレているわけで、こちらの夫婦も崩壊は免れそうにありません。ちなみに、「夫の友人」を名乗る美都がいきなり自宅を訪ねてきたとき、麗華は「かわいらしい感じの人、女子力高いっていうか」との感想を持っています。確かにそのときの美都は、とりわけかわいらしく演出して振る舞っていたのですが、ここに、美都とは真逆の地味で暗い人生だったという麗華のコンプレックスが垣間見えるようになっていました。いやいや美都もルックスこそかわいらしいですが、貧乏育ちだし友達は多くないし地味で暗い学生時代を過ごしたほうの女性だと思うんですけどね。
第五話にして大きく展開した『あなそれ』。原作は最終回を迎えていませんし、ドラマオリジナルのラストになるのでしょうが、となると両夫婦が相当激しくブッ壊れそうですね。ゲスドラマなんて呼ばれ方もしましたが、良心や正義感に訴えるとかでなくホラー演出によって「不倫って、誰かに刺し殺されたりする可能性がある行為だよね、まじ怖いよね」ってことを深く心に刻んでくれる“逆ゲスドラマ”だなと思います。
<今週の育三郎>
お待たせしました、育三郎! 今回は登場シーンが長かったんですよ! 単純ミスが急に増えて上司に叱責された涼太を、同僚・親友として居酒屋へ連れ出した小田原さん(山崎育三郎)。どうやら麗華以上の洞察力の持ち主らしい小田原さんは、涼太のような丁寧な暮らし系アピールをする人間を「嘘くさいな」とdisり、「独身の僻みかな。や、嘘みたいに幸せそうだからさ。お前んち行ったときもさ、幸せな夫と妻を演じてるみたいで、誰に見せたいんだって思っちゃってさ」と畳み掛けます。
涼太は、美都と初対面のときに彼女が「お天道様が見てる」と口にしたことを回想し、「ああ、一緒だな。心の中にそういうちゃんとしたものがある人なんだなって」思ったことが一目惚れの理由だと明かします。そんな美都が不倫していることを知っている(有島とのデート現場を偶然目撃)小田原は「お天道様は、夜は見てないからな」とニヒルに笑い、「まあ奥さんも意外だよな、お前と結婚するって。奥さんみたいな人って派手でわかりやすくモテる男が好きそうなのに」とまたしても美都dis。さらに「夫婦喧嘩でもした? ここんとこ、のろけたインスタ見てないな」と探りを入れるなど、グイグイ涼太の内面に踏み込んでいきます。育三郎は涼太のことがすすす好きなの???
涼太「してないよけんかなんて」
小田原「何されても許せるんだ?」
涼太「許せるんじゃなくてー」
小田原「怒れないんだろ? お前はばかみたいに優しいからさ」
涼太「優しくなんかないよ」
小田原「……なあ、お天道様は見てるって昔から言うけど、あれって結局、お天道様が怒ったらどうなるんだ?」
涼太「さあ。雷でも落とすんじゃない?(にっこり)」
妻の前だけでなく、気を許しているはずの親友の前でも、わかりやすく仮面的な表情を作っている涼太。ラストシーン、涼太が雷の写真をインスタに上げたのに即座に反応して(イイネ投下)「いよいよ反撃ですか」と楽しそうに笑った育三郎の顔が頭から離れません。東出さんだけじゃなくて育三郎も結構ヤバいキャラのはずだと思いますし、しかも原作にいないキャラなのでどんな動きをするのか予想もつかなくて大変気になります。来週も育三郎から目を離してはいけない!
(ドラマ班:下戸)
【第一話】再現VTRみたい…アレンジがダサい、役者も演出もしょぼい!
【第二話】気持ち悪いのは粘着夫(東出昌大)ではなく恋愛脳満開の新婚妻(波瑠)の方では…?
【第三話】不倫妻が罪悪感ゼロなのは夫を少しも愛してはいないから
【第四話】夫が陽気なイケメンだったら、妻がもっと成熟した女なら、夫婦は噛み合ったのか? 否、結婚していなかったでしょう
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▼母になる
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