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「あなた母親じゃないわ」「母親って何ですか?」他人の子をこっそり育ててきた女の事情がついに明かされる/『母になる』第六話レビュー

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母になる

もう小池栄子が主役でいいかなって(『母になる』公式webサイトより)

日テレ水10枠『母になる』、後半戦となる第六話は壮絶でした。前回、結衣(沢尻エリカ)を母とは思えない広(道枝駿佑)は施設に戻る予定でしたが、ナウ先輩こと今偉(望月歩)の「自分を産んでくれた母親は世界でたったひとりしかいない」等々の言葉で心境の変化があり、やっぱり結衣と陽一(藤木直人)がいる家・柏崎オートで暮らすことに。ようやく一家に平穏……と思いきや、広と決別したはずの麻子(小池栄子)が「雇ってもらうことになった」と言って柏崎オートにやってきました。そして麻子は「人殺し」……??

第六話は、そんな麻子が主役の回。これまで伏線はあってもずっと謎だらけだった麻子の過去を明かすための1時間でした。はっきり言って『八日目の蝉』と共通点は多いですね、うん。あ、映画版『八日目の蝉』でも小池栄子の怪演ぶりは強烈でしたね。

【試写レポート】テレビドラマにおける母親という存在の描かれ方
【第一話】沢尻エリカ演じるベタベタ清純派の良妻賢母が宿した小さなリアリティ
【第二話】3歳まで育てた産みの母は「何も知らないおばさん」…育ての母の強烈な手紙
【第三話】育ての母の態度急変!親たちに振り回される不憫な息子
【第四話】一人で苦悩する母親、父である男と一緒に親になることはできないの?
【第五話】最低な母親でもかけがえのない大切な人と思うべき? 聖母か鬼女か、極端な母親描写

「あなたの子じゃないのに何で?」

事態を聞いて柏崎オートに駆けつけた児童相談所の木野(中島裕翔)が、陽一と結衣に語ったところによると、麻子の罪状は殺人未遂。つきまとう男をナイフで刺してケガを負わせた麻子は、事前にナイフを用意していたことから計画性と殺意が認められ、殺人未遂罪で2年間刑に服していました。すべては……広をその男から守るためにしたことでしたが、当の広は何も知りません。麻子は、男のつきまとい行為がエスカレートして広に危害を加えるのを防ぐべく、自分が捕まるのを覚悟して、先に広を施設に預けた上で犯行に及んだのです。それを聞いた結衣は「自分の子どもじゃないのにどうして……」とショックを受けました。え、ここでその言葉が出る?

「自分の子じゃないのに何でそこまでして守ったのか?」という感想を持ったのは、何も知らずに麻子を採用した陽一の母・里恵(風吹ジュン)と、里恵に麻子を紹介した琴音(高橋メアリージュン)も同じだったようです。麻子の答えは「だって母親ですから、母親なら当然」「あの子のためならあたし何だってできる」。里恵が「あなた一緒に暮らしていただけで母親じゃないわ」と非難すると「じゃあ母親って何ですか?」。前々回、広も結衣に同じこと問いかけていましたよね。母親って一体何でしょうね……。だって、子どもを妊娠して産むのは母親だけれど、育てるのにとにもかくにも「母親」が不可欠、ではないじゃないですか。愛着関係などのいわゆる「母親的役割」を果たす人間は必要だけど、じゃあその人が生物学上の母親である必然性はないわけで。そういう意味で、子どもを育てる役割としての母親は呼び名に過ぎないというか。「母になる」ってどういうことなのでしょう?

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー