
結婚は墓場か楽園かを問うアンソロジー Amazon
7名の女性作家によるアンソロジー小説『黒い結婚 白い結婚』(講談社)。「結婚は墓場か楽園か?」をテーマに競作された7つの短編が収録されており、白編・黒編と分かれているものの読み手次第で「グレー」であったり、白黒を逆転させた解釈もありそうで、読後はビール片手に女友だちと語り合いたい衝動にかられました。酒の肴になりそうなのは、やはり身近な〈あるある〉とリンクする描写でしょうか。『シュークリーム』(瀧羽麻子)に登場する「おいしいところをさらりと持って行く」ちゃっかり男へのいら立ち。『家猫』(中島京子)で将来確実に勃発するであろう、嫁VS姑の化け猫級キャットファイトetc…
そんな作品群の中でも、最大級に「あるある!」と叫びたくなったのは、黒編の『かっぱーん』(深沢潮)です。それは同作品のあるあるが、ご時世を反映させたSNSネタにはじまり、当連載の大好物物件である〈開運商法〉にひっかかる女子の姿だから。さらに! 作中に登場する開運セミナーが、完全に〈子宮系女子〉のパロディではないですか。
子宮系女子とは〈子宮の声は魂の欲求であり、その欲求に忠実になるとすべての願いが叶う〉という自己啓発情報を発信する一派たちのこと(詳しくは過去記事をご覧くださいませ!)。小説では、開運自己啓発セミナーの中心人物として、読モからAV女優へ転身し韓国のアイドル男優・テファとデキ婚した天女(自称)の「まみか」が登場します。
「本能に従おう!」とあおる子宮系女子
ブログのアクセスがうなぎのぼり、そのうち悩める女性たちに対するセミナーをはじめ、カウンセリングも行うようになったという設定も含め、はいこれは完全に子宮系女子のトップである〈子宮委員長はる〉がモデルですよね。
作中に登場するまみかブログのディテールも、子宮系女子トークの特徴を絶妙にとらえてあって、爆笑もの。
「まわりが羨ましい、自分は惨めだと思ったとき、本能に従えば、本当の幸せがやってくる」
「かっぱーんを感じようよ! まずは、本能のままふるまおうよ! 自分の心の声を聞こうよ! 聞けるようになろうよ!」
子宮の声=魂の欲求が聞こえれば、すべての願いが実現できる! そのためにバンバンセックスしてイキまくり、女の魅力を高めようと謳う〈子宮教〉がこうして小説の元ネタとなるとは、ウォッチャーとして思わず感無量(ご本人たちはもっとか?)。
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