
『あなたのことはそれほど』公式サイトより
視聴率なんてもう何の意味もない、若者はテレビを見ない、いやいやみんな録画で見てるんだ。テレビの“視聴率”をめぐるポジションは様々で、たとえばカンニング竹山さんは最近『たまむすび』(TBSラジオ)にて「最近感じているのはテレビって(視聴者は)オンタイムで見てないよ」「テレビを見るライフスタイルが変わって、好きなテレビ番組を自分の時間で見ている」ゆえに「テレビ局が一企業、企業には数字が必要だから視聴率が全てというのも正解。でもその数字の出し方うんぬんが時代とマッチしていないんじゃないか」と提言しました。それも一理あるでしょう。
ただ、10%を超える視聴率を獲得するテレビ番組って、それだけ大勢の視聴者が見たという証拠になるわけで、そういう番組を安定して作れる人たちは業界内で信頼を集めるわけで、なぜならスポンサーはそういう枠にCMを流したいからで……。何が言いたいのかといいますと、TBSドラマ班は今“そういう番組を安定して作れる人たち”として信頼を集めているだろうなあ、ということです。火曜10時~の連続ドラマ『あなたのことはそれほど』が、第七話にしてこれまでの最高平均視聴率12.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録しました。『逃げるは恥だが役に立つ』『カルテット』そして『あなそれ』と、同枠のドラマは立て続けに<視聴率尻上がり上昇>の動きを見せてるわけで、次クールへの期待値も否応なく高まるでしょうね。視聴率って作品価値の全てでは決してないけど、やっぱりまだ侮れないものなんだと思います。
<登場人物>
■渡辺美都(わたなべ・みつ)/波瑠
旧姓・三好。スナックママの一人娘、母子家庭育ち。地元は横浜。眼科の医療事務として働く女性。小学校時代に転入してきて中学で転校してしまった有島くんに初恋をし、大人になった今もその恋心を保管し続けて再会即不倫。優しく料理上手な涼太にアプローチされて結婚したが夫のことは「二番目に好きな人」だと思っていた。
■渡辺涼太(わたなべ・りょうた)/東出昌大
インテリア関係の会社の総務部で働く。眼科で美都に一目惚れして求婚。愛妻家で料理上手で洗濯や掃除も得意。朗らかで愛情深く、見知らぬ他人にも親切で、妻の母親ともうまくやっている。妻がもはや自分を愛していないと知りながら超執着。
■有島光軌(ありしま・こうき)/鈴木伸之(劇団EXILE)
サラリーマン。親が転勤族で横浜→所沢に引越し。美都とは横浜時代のクラスメイトだった。所沢の高校の同級生だった麗華と結婚し、一児の父に。学生時代からイケメンで女に不自由しないタイプ。公式紹介によると「基本的には家庭第一なのだが、根が優しく流されやすい性格のため、泣きつかれると弱い」。
■有島麗華(ありしま・れいか)/仲里依紗
旧姓・戸川。高校の同級生だった有島と結婚し妊娠、所沢の実家で里帰り出産。今は自宅でほぼワンオペ子育て中、それを苦に思ってはいない。
【第一話】再現VTRみたい…アレンジがダサい、役者も演出もしょぼい!
【第二話】気持ち悪いのは粘着夫(東出昌大)ではなく恋愛脳満開の新婚妻(波瑠)の方では…?
【第三話】不倫妻が罪悪感ゼロなのは夫を少しも愛してはいないから
【第四話】夫が陽気なイケメンだったら、妻がもっと成熟した女なら、夫婦は噛み合ったのか? 否、結婚していなかったでしょう
【第五話】不倫相手の自宅訪問を時間差攻撃で! 恐怖演出で不倫解消を促進する逆ゲス効果アリ
【第六話】奇声上げ赤ワインぶちまけ!東出昌大の発狂が注目集めて視聴率急上昇、山崎育三郎の思惑は?
君ら純愛だったっけ?
このドラマはいろんな角度・立場で視聴できますが、後半は「ダブル不倫した男女が地獄に落ちる展開」を期待している人が多いのではないでしょうか。勧善懲悪モノはいつの世もウケます。でも人間、はっきり白か黒か、善人か悪人かを分けることなんて出来ません。このドラマが、そんな期待に応えてスカッとジャパン的な結末を用意しているとは思えないんですよね。きっと裏をかいてくることでしょう。
第七話は、美都と有島くんが最後の逢瀬をかわすシーンから。第三者目線で見ると完全に、美都と有島くんが悪人でしょうし、筆者も往来で堂々と腕を絡めたり手をつなごうとする美都を「キモッ」と思っちゃったのですが、まぁ恋愛中の人がキモいのは当たり前だからね……みんな自分の胸に手を当ててみよう。
さて、美都が「ふたりきりになりたい」と連れ込んだラブホテルで、有島くんは「ヤらない」宣言したうえで「逃げられるものなら逃げたい、美都が路頭に迷ってても心配するふりして家に帰る」と冷たくしつつも、「もう一度再会したところからやり直せるとしたら?」と訊かれると優しさ(?)なのか、こう答えます。
「コーヒー飲んでポテト食って少し話しして、そのまま帰る。で、忘れる。で、半年後くらいにふと思い出して、なんか惜しいことしたなあって、思う。バカだからなあ、俺。美都、お前ふつうに付き合ったらすごく可愛い女だと思う。ごめん、ごめんな、俺が悪い。家に帰れ、な? まだ間に合うから」
そうだね美都ちゃんをソノ気にさせた(=ヤッた)あんたは悪いよ、うん。涙をこぼしながら「最後に……」とキスをする美都とそのままヤッちゃうあんた、悪いよ……ヤらずに帰れば良かったものを、据え膳はいただくんですね。セックスチャンスはなるべく逃さない男ってことなんでしょうか(麗華との馴れ初め回想シーンなんかを見ていると、そんなにチャラいヤリチンにも見えないのですが……)。
わざとなのか違和感バリバリなのが、まるで愛し合う二人が運命に引き裂かれて別れざるを得ないかのような悲しいBGMが流れたこと。美都の心理としては紛うことなき純愛だから正解なのかな。別に不倫だから非純愛と断定するつもりはなくて、美都はひとりのときや夫といるときに有島くんのことをしょっちゅう考えているんだけども、有島くんはひとりでいるときや妻といるときに美都のことを考えてる描写がなかったことから「一方通行の片想いと遊びセックス」に見えていたという意味です。
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