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「母親を嫌いな子供なんていません」というセリフの無責任/『母になる』第八話レビュー

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母の愛は絶対か?

愛美のネグレクト現場の第一発見者は、以前自分に近づいてきた沢登と一緒にいる愛美を見かけ、不審に思って尾行した麻子でした。麻子が木野に連絡し、木野が連れ子のリュウくんをひとまず柏崎オートで保護。夜、柏崎オートでは、結衣、陽一、麻子同席のもと、木野が愛美に事情を聞いていきます。自分が今の夫と関係を持った時にはすでに連れ子は“ああいう状態”だったのだから「悪いのはリュウくんを産んだ本当の母親!」と、自分の非を認めなかった愛美ですが、それでも当初は「ちゃんとした母親」になろうとしていた、とも主張します。しかしリュウくんが自分ではなく本当の母親の帰りを待っていて、自分がどんなに頑張っても本当の母親にはかなわないと感じ、やる気を失ったのでした。

「(リュウくんの本当の母親は)置き去りにしたひどい母親なのに」と毒づく愛美を木野は「どんな母親でも、子供は母親を嫌いにはなりません!」と一蹴。さらに、子供の頃、親友がネグレクトされていると気づいていたのに何もできなかった自分の後悔を吐露していきます。「あの時、言えばよかった。子供だからって黙ってないで、あなたに最低だって言えばよかった。誰かに、大人に、最低の母親がいますって言えばよかった。ひどい母親がいますって言えばよかった。言えば、もしかしたらカンちゃんは助かったかもしれないって」。確かに、誰か大人が気づいていれば最悪の結末は避けられたかもしれないわけで、だからこそ、子供の訴えを真剣に聞いてくれる場所を保障しなければならないし、ちゃんと行動を起こすことが大人および社会の責任なんですよね。

リュウくんは改めて児相で保護されることになり、愛美はようやく反省を口にしたわけですが、どういうわけか、父親(内縁の夫)は一切責任を問われていない……なぜ??? ついでにいうと、木野は母親を絶対視しすぎですよね。今回(連れ子)のことも、過去(実子)のことも、愛美がネグレクトするに至った要因のひとつに“自分ひとりで完璧にやろうとして、疲れてしまった”というのがあるんですけど、「自分がダメだと認める」っていうより、そもそも母親ひとりで育児をすること自体が不可能なケースもあるんだと認めるべきじゃないでしょうか。どんな母親でも子供は母親を嫌いにならない……という言葉も、母親を神聖化し、重い責任を感じさせるものです。母親は子供をこの世に誕生させた存在ですからもちろん責任はあるのですが、母ひとりがその重圧を負わなければならないのでしょうか? 父親の責任はもちろんのこと、「育てられない親のもとに生まれた子供」を生かすのは社会の責任でもあります。子供を宝だとか、社会発展のために必要な資産だというのなら特に。

さて、結衣と陽一は悩んだ末、子供を信じようと決意し、広に2年前施設に預けられた理由を打ち明けました。麻子ママが人を傷つけ刑に服役していたと知った広の反応は「まじ? そっか、わかった!」。以上で、表面上は取り乱すことはありません。ただ、結衣と陽一は、麻子がどんな理由でどんな相手を傷つけたのか(=自分に付きまとう男から広を守るため)は、伝えないんですよね、やっぱり。気持ちはわからなくもないですけど、ネットで調べて出てこないとも限らないし、いつか広が知った時に大丈夫なんですかね?

翌日、麻子を喫茶店に呼び出した結衣は、広に打ち明けたことを報告。麻子と会うのはこれが最後……のつもりでしたが、そこに「広が学校に来ていない」という連絡が入り、しかも女子高生と一緒にいるっぽいとの情報……。次回第九話、これまでバチバチだった結衣と麻子が連携する、かもしれません。とりあえず……結衣ママも麻子ママも、どっちも姑にはしたくないタイプ!

【試写レポート】テレビドラマにおける母親という存在の描かれ方
【第一話】沢尻エリカ演じるベタベタ清純派の良妻賢母が宿した小さなリアリティ
【第二話】3歳まで育てた産みの母は「何も知らないおばさん」…育ての母の強烈な手紙
【第三話】育ての母の態度急変!親たちに振り回される不憫な息子
【第四話】一人で苦悩する母親、父である男と一緒に親になることはできないの?
【第五話】最低な母親でもかけがえのない大切な人と思うべき? 聖母か鬼女か、極端な母親描写
【第六話】「あなた母親じゃないわ」「母親って何ですか?」他人の子をこっそり育ててきた女の事情がついに明かされる
【第七話】産んだ女と産めなかった女の罵り合いに正解はない

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女囚セブン

フランケンシュタインの恋

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー